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74話 雨中のドライブは危険がいっぱいのこと。

「ふぅう……」


 湯船の中で足を伸ばす。

ああ……高柳運送の文句を言うつもりはないが、やはり実家の風呂は格別だ。

モンドのおっちゃんとこもいいけど、広さとかは関係なく……うん、安らぎが違う。

そういえば、ずうっとサクラと風呂に入ってたからな……1人なのもあっての安らぎマシマシなのかもしれんな。


 あ、ちなみに1番風呂です。

強硬に反対したんだが、自衛官2人は俺の話を全く聞いてくれずに脱衣所に押し込まれた。

そんなに臭かったんかな……?

まあ、湯船に入る前に体が擦り切れるくらい洗ったが。


 ついでに長すぎる髪にリンスもしておこう……完全に切るタイミングを逃したなあ。

高柳運送で切ろうかなって言ったら、後藤倫パイセンが馬の毛刈り用? バリカンを持って無茶苦茶笑顔だったのでキャンセルした。

竜庭牧場で回収した物資に混じってたんだな……恐ろしい。

あんなもん使ったら毛根ごといかれそうだ。


「ふぃい……」


 それにつけても風呂は良い、風呂は。

こんな状況で、風呂に定期的に入れているだけでも天国ってなもんだぜ。

返す返すも、騒動が始まってから運がよかったよな……必死で物資回収もしたけど。

初手で避難所に行ってたら、今頃どうなってたんだろうか……

そんなことは考えても仕方のないことだがな。


「よく冷えた牛乳が飲みてぇ……」


 が、人間とは贅沢を覚えるもの。

満たされることは決してないのだろうか……この程度ならまだ実現しそうだけど。

高柳運送の周囲は無人地帯、どっかで野良乳牛(厳密には野良ではない)をとっ捕まえるか……自衛隊の所の牛が増えたら分けてもらおうかな?

いや、さすがにこれは都合が良すぎるか……

馬もいるし、牧草が安定して手に入るまではな……我慢だ、我慢。


「いかんいかん、のぼせちまう……」


 いかに実家とはいえ、神崎さんも式部さんもいる。

彼女たちだって風呂に入りたいだろうし、俺が独占するのはノーだ。

ツヤツヤになった肌を認識しつつ、湯船から出た。



「ドライヤーがいるくらい伸びたなあ……ここにはないが」


 用意していたフワフワのタオルで体を拭き、パンツだけ履いて髪を拭く。

妹が使っていた高そうなドライヤーはあるが、残念ながら電気がない。

発電機は小さいのが一つだけで、それは風呂の沸かし棒と井戸のポンプに使っているからだ。

贅沢は言えまい……しかし伸びたね、髪。


「一朗太さん、もう上がられましたか?」


 ドアの向こうから、式部さんの声。


「あーはい、上がりましたよ……っと」


 流石にパン一は不味いので、急いでジャージを履く。

ふう、これで大丈夫。


「用があるなら入っちゃってください。もう大丈夫ですから」


「はーい、ではでは……おうふ」


 がら、とドアが開いて……式部さんが入って来た。

なんだ今の声、小指でもぶつけたのか?


「つ、次は自分がお風呂を頂戴するであります!」


「ああ、どうぞどうぞ。ボディソープやシャンプーなんかは好きに使ってください、妹とお袋のがありますんで」


 そう言うと、着替えを抱えた式部さんは嬉しそうに頷いた。


「ありがとうございますっ! 堪能いたします!」


 そんなにウチの風呂っていいものかね……普通だが。

まあ、女性にとってお風呂は最高の娯楽の一つだってアニーさんが言ってたし……そういうもんなのかね。


 ともかく、邪魔をしても悪いので……シャツを掴んで脱衣所から出ることにした。

これは部屋着にしているブッカブカのやつだ。

ちょっとくたびれつつあるが、部屋着だからそれでいいのだ。


「……ふふぅふ……(一朗太さんの、残り香!!)」


 ドアを閉める一瞬、式部さんのいつもの笑い声が聞こえた。

テンション高いな~……



・・☆・・



「田中野さん、田中野さん」


「ふにゃむ」


 肩を揺すられて目を開けると、ライトに照らされた神崎さんの顔があった。


「まだ暑いとはいえ、ここで寝ては風邪を引きますよ。ご自分のお部屋でお休みになってください」


 ……あ、そっか。

風呂上がりに1階のソファに転がって水飲んで……そのままウトウトしちゃったのね……

久しぶりのソファの感触が心地よくて……これ高柳運送に持っていけないかな?


「すいません……あ、神崎さんたちは2階でも1階でも、好きな所で寝てください。ベッドも使ってくださいね」


 妹と、両親の部屋があるからな。


「いえ、悪いですよ……」


「何を仰います、相棒が寝不足なんて俺は許しませんからね! 遠慮なんかしないで、相棒なんですから!」


「っしょ、しょうでしゅか……! そ、それでは、お言葉に甘えます」


 よーしよし、これで神崎さんの安眠は約束されたも同じだな!

じゃあ俺も……柱の陰に式部さんが!


「……式部さんも、しっかりゆっくり休んでくださいね! 風邪ひいたら大変ですから!」


「はいっ! しっかり休むであります!」


 素晴らしい敬礼だ……流石敏腕自衛官!


「そいじゃ、お休みなさい。明日は……まあ、起きてから考えましょ」


「はい、おやすみなさい」「お休みなさいであります~!」


 2人の声に見送られ、階段を登る。

時間は……九時半か。

まだちょっと眠れないな、ベッドスタンドつけて漫画でも読むかな~。

アレはバッテリー式だし、まだ動くだろ。



・・☆・・



「……陸士長、防衛の観点から2階での就寝が必要だと思うわ」


「で、あります。なんなら同じお部屋で眠りたい所でありますが……睨まないでください、この式部茜、まだ慎みは持っているであります!」


「……前に部屋に侵入していたことがあったわよね?」


「自分は一朗太さん限定で夢遊病のケがありまして」


「な、なんて綺麗な目で言うの……今日は駄目よ。田中野さんは運転と戦闘でお疲れなんだから……」


「はうぅ、了解であります……」



・・☆・・



 懐かしの部屋に戻り、ベッドに寝転がる。

あ~……サクラを拾った寝具店から回収したマットレスは最高だな~!

高柳運送にも持っていきたいぐらいだが……よくよく考えれば近所の店から回収した方がいいな!

向こうに戻ったら考えておこうっと。


 本棚に収納されている漫画類から、短く、かつ最近読んでいない作品を取り出す。

拳に嵌めたナックルダスターから弾丸を放つ、いかした賞金稼ぎが異形の化け物と戦う西部劇漫画だ。

この作者、後に古代ローマ時代の剣闘士モノで大成功するけど俺はこれも好きだ。

なんといっても全3巻でそれなりにスッキリ終わるのが素敵だ。

この武器いいよなあ……実際にやったら、たぶん拳が反動でいかれると思うけど。

大木くんが元気になったら作れるかどうか聞いてもいいかもしれない。

……完全に元気になったら言おう。

病み上がりで彼がやる気になったら過労死するかもしれんし。


「……ふわぁ」


 ふう、読み終わってしまった。

もう何冊か……と、一瞬考えたがやめておく。

今日は何やかやあって疲れてもいるし……雨だから何が起こるかわからん。

体力は残しておかねば。

なので、フル充電状態で部屋に置いていた携帯ゲーム機も封印しておく。

これは高柳運送に持って帰るかな……子供たち用に据え置きゲーム機とかも回収した方がいいのかもしれん。

現状、あの子たちは外で遊んでるけど……たまにはインドアの遊びもしたいだろう。

なあに、今は全品100%オフの店ばかりだ。

この状況下でゲーム屋を物色するヤツなんて俺か大木くんくらいしかおらんだろ。

いつでも回収できるさ……


「眠くなってきた……」


 時刻は10時55分。

最近健康的になった生活では、むしろ夜更かしの部類だ。

体がすっかり慣れてきたんだなあ……


 枕に頭を預けてスタンドを消し、目を閉じてサクラを数えることにする……

外からは、ざあざあと雨が降る音しか聞こえない。

ゾンビも動き回っているハズだが、雨音が大きくて聞こえない。


 サクラが1匹、サクラが2匹……



・・☆・・



「……この壁の向こうで一朗太さんが眠って……!」


「あの、陸士長。それは高柳運送でも一緒でしょう? 早く寝ないと明日に響くわ」


「むむむ、冷静でありますな二等陸曹……!」


「……私は何度か泊めてもらったから」


「……これで勝ったと思わないでほしいであります……!」


「勝ち負けの問題ではないのでは……?」



・・☆・・



「むううん……!」


 1000匹くらいのサクラに追いかけられる夢を見て、目を覚ます。

人によっては悪夢だろうが、俺にとっては超いい夢だった。

モフモフの洪水だったな……いやあ、いい目覚めだ。


 時刻は6時、か。

いつもなら外の明るさで気付くんだが……


「雨、止まないな」


 外は相変わらずの雨模様だ。

昨日の夕方よりはマシだが、それでも小雨って感じじゃない。


「おはようございます、式部さん……大丈夫ですか?」


 布団を畳んで部屋から出ると、式部さんがいた。

なんか、目が赤いんだが。

慣れない枕で疲れたんだろうか?


「大丈夫であります! 式部陸士長は元気いっぱいであります! そしておはようであります!」


「お、おう……」


 でも敬礼のキレはすごくよかった。

着ている服は妹のものなので、違和感が凄い。


「ささ、朝ご飯でありますよ~! ささ~!」


「おわわわ」


 どうやら元気いっぱいなのは本当のようで、彼女は俺の背中をぐいぐいと押して歩き出す。

階段の下からは、もう煮炊きをする音と気配。

神崎さんがやってくれてるのか……悪いなあ。



 本日の朝ご飯。

アルファ米、インスタントの味噌汁、茹でたトウモロコシ、それに漬物。

なんて……素晴らしい朝食なんだ。

漬物はねえちゃんの手作りの奴だな、軽トラのポータブル冷蔵庫に入れてたのか。

いやー、大木くん様様ですなあ。


「うっま、トウモロコシうっま……でも、俺たちだけで食うのはなんか悪いですね」


 子供たちにも食わしてやりたいなあ。


「あれ、一朗太さんはご存じないのでありますか? 昨日、高柳運送の分もいただいておりますよ?」


「マジすか」


「マジであります。軽トラのボックスに収納しているであります」


 ……宮田さんには足を向けて眠れん。

そんなに重要な情報をもたらしたわけでもないのになあ。


「友愛高校でも、周辺の空き地で大規模な農作業を始めているようです。備蓄のために、かなり余裕をもって栽培しているようですので……」


 上品に漬物を齧る神崎さん。

はえ~……友愛でも畑を拡張してるんか。

いやあ、みんな凄いなあ。


「俺は高柳運送の分だけで手いっぱいですよ」


 大根の漬物が美味すぎる。

白米がいくらでも食えるぞ。


「適材適所であります、はもも」


 式部さんが豪快に飯をかきこんでいる。

でも全然下品に見えない……育ちの良さかね、これは。


「今日なんですけど、高柳運送の天気はどうなんですか?」


「先程連絡をしましたら、ここと同じような状況だそうです」


 うむむ……どうすっかな。


「明るくなったら出発した方がいいであります。自分の勘ですが……この空模様だと午後から雨脚が強まるような気がします」


 ……現代ニンジャの勘は信じたほうがよさそうだ。

特に予定はないとはいえ、このまま何日も詩谷に閉じ込められるのはヤバい。

例の『慈愛会』のこともあるし……いつでも動けるようにしておかなければ。


「了解っす。じゃあ食ったら移動しますか、安全運転で」


 事故ったらえらいことになるからなあ。

お元気ゾンビの朝飯にはなりたくない。


 最後に残った漬物で、白飯をかきこむ。


「……ふう、ご馳走様でした。さすがねえちゃんの漬物だ。最高だな」


「あ、それは自分が漬けました! お味の方はどうですか?」


 え!? これ式部さんの手作りなの!?


「とっても美味しかったです。漬かり具合が最高ですね」


「毎日食べたいなんてそんな! そんなぁ……えへへ」


「言っていませんよ、陸士長」


 頬に手を当ててクネクネしている式部さんを、神崎さんはジト目で見ていた。

おお、貴重な俺以外へのジト目神崎さんだ!

俺相手にはしょっちゅうされているからな。

……悲しくなんてないぞ。



・・☆・・



「視界はまだ大丈夫だな……」


 朝ご飯を終え、手早く身支度を済ませて実家を出た。

放電装置が動いた様子はなかったので、夜の間にゾンビやチンピラが出ることはなかったようだな。

やっぱりここ、ゾンビ無風地帯だな……外から見れば密集した住宅街だから、リスクを恐れて探索に来る連中もいないのだろうか。


「この車の装甲はかなり頑丈であります。一般ゾンビくらいなら鎧袖一触でありますよ」


「ええ、タイヤに巻き込みにくい構造に改造されていますから。撥ねる時は正面から当たればより安全です」


 なんでこの2人は俺よりも俺の車に詳しいのか。

ともかく、家の裏手から土手に出る。

他の車は見えないな……ま、当然か。

こんな天候で外出する人は少ないだろう、事故も怖いし。


 ちなみに、助手席に座っているのは式部さんだ。

なんか……物凄い勢いでジャンケンしてた。

まあ、後ろの空間は狭いから嫌だろうな。


「んじゃ、平均40キロでゆっくり帰りますか」


 左右確認の後、国道へ。

そしてアクセルを踏み込み――キャンセル!

クラッチを踏んでギアをバックに!!


「――流石に多すぎる!」


 雨の中から、ノーマルゾンビが10体以上出てきた!

とにかく後ろに逃げて――


「――後方! ゾンビの集団! 数、前方よりも多数!」


 神崎さんが叫ぶ。

ええい、なんだってウチの近所でこんなことに!


「一朗太さん! そのままで!」


 式部さんが、懐からガチャガチャのカプセルを取り出した。

なんか見たことあるそれを、もう1つ取り出して――お互いにぶつける。

そして、2つのカプセルを開けた窓から前方に向けて投げた。


「3、2、1……今ッ!!」


 前方からこっちへダッシュしてくるゾンビ集団が、一斉に仰け反った。

やっぱりあれって電気ショックカプセルか!

もう流通してるなんて、大木くんには足を向けて眠れんな!


「突破してください! 陸士長、窓を閉めてスイッチを!」


「了解であります!」


 式部さんは、助手席の前にある見慣れないボタンに指を置いた。

ともかく、前方のゾンビは半数がぶっ倒れて痙攣してる! アクセル全開だ!

倒れたゾンビを躱し、どうしても避けられないゾンビを跳ねる――なんか光った!?


「――ァオッ!?!?」


 撥ねたというか、車体に接触した瞬間に仰け反るゾンビ。


「――大木さんが取り付けてくれた、盗難防止用の電気ショックです! この状況なら一瞬の通電でゾンビを殺せます!」


「――大木くんありがとおおおおおお!!」


 俺は、ガッツポーズをしながらさらにアクセルを踏み込むのだった。

なんだよもう! 最高のエンジニアだお前は!!

元気になったら恩返しすっからな!!



・・☆・・



「――ぶぇっくしょい!? あだだ! あだだだだ!?」


「おや大木くん、風邪かい? お腹の傷が開いて……ないね、よかった」


「うううう……どっかで僕の悪い噂をしている人がいるに違いない……いだだだ……!」


「いい噂かもしれないよ?」


「いいえ、そんなことはあり得ませんよ石平先生……!」


「……その負の自信はどこから来るんだい?」


「経験と、直観ですう……はっくしょ!? ぶえっくしょ!? いづづづづづ……!!」



・・☆・・



「右です!」「はいよっ!」


 ハンドルを左に切る。

ぬっと出てきたおばちゃんゾンビが、フロント右の装甲に接触して吹き飛ぶ!


「正面! 放置車両の影であります! 数、3!!」


「こなくそーっ!」


 一瞬左に切って、右!

ドリフト気味に2体を躱し、最後の1体が荷台にぶち当たって――うわわ、千切れた!

雨が凄いから綺麗になっていいな! 車体が!!


「雨の中で運転するとこうなるのか! 明日使える無駄じゃない知識だなぁ!」


 実家を出て、詩谷市内を龍宮方面へ向けて走っている。

原野への山道に入ってしまえばゾンビはいなくなるだろうが、そこに行くまでの道程がしんどい!


「ゾンビたちは、雨になると平坦な道に出る習性があるらしいです。偵察隊からの情報が集約されて、最近わかってきました」


 はえ~……脳内の謎虫がそうやってんのかな。

だから、雨の中だと移動距離が長いのか。


「やっぱり雨の時は家にこもるのが正解ですね――っと!」「ギャギ!?!?」


 路地から飛び出してきた男子高校生ゾンビを撥ねる。

急に出てくるなよもう! ビックリするだろうが!


「もうすぐ県道に入るであります、そうしたら数も減るでしょう。一朗太さん、ファイトであります~!」


 式部さんの応援が心に沁みるぜ……別にそんなに苦にしてないけど。


「……ム?」


 道の先に、何かが見える……横倒しになったトラック!?

馬鹿な、来た時はあんなもんなかったぞ!?


「あれは……一朗太さん! スピードを落としてください! 二等陸曹、てき弾を!」 


「これを!」


 ブレーキを踏むと同時くらいに、神崎さんが式部さんにライフルと……筒みたいなものを渡した。

あ、あれは見覚えがある! ライフルに突っ込んで使うグレネードだ!

……車内に持ち込んでるの、凄いな。

準備万端じゃないか。


 それを受け取った式部さんは、すぐさまライフルに装着。

銃床を折り畳んでコンパクトにした状態のまま、窓を開けて身を乗り出した。

降りしきる雨で、あっという間に濡れていく。


「一朗太さん、クラクションを!」「アイアイ!」


 雨の中、甲高いクラクションが響く。

すると……横転したトラックの向こうから、ゾンビが何体もワラワラと飛び出した。

新鮮そうなのが何体か混じってる! アレを運転してた連中か!


「撃ちます!」


 ぽしゅん、と聞き馴れた音がした瞬間には――ゾンビが吹き飛んだ。

すかさず新しいのを渡す神崎さん。


「もう一発!」


 再びぽしゅん。

爆風の範囲外にいたゾンビも、体のパーツを散らばらせながら吹き飛ぶ。


「排除完了であります!」


 アクセルを踏み込む。

トラックは道のど真ん中に横たわっているが、この軽トラなら横をすり抜けられる!

吹き飛んだゾンビ共の生体パーツを踏む、なんともいえない感触と音を響かせて……愛車はトラックを越えた。

……ふう、なんとかなったか。


 おっと、式部さんがびしょ濡れだ。 


「お疲れ様です式部さん、これどうぞ。まだ使ってないんで」


 ダッシュボードに入っていたタオルを渡す。

 

「感激であります~……ふもも、ももも~!」


 そんなに喜ぶことかなあ?

ま、まあいいか……


 しかし、雨の中のドライブは危険がいっぱいだ……愛車がゴッテゴテじゃなかったらもっと苦戦しただろうな……返す返すも、大木くん様様だよ。

それに……


「神崎さんと式部さんのお陰で、安全に帰れますよ。いや~、お2人にはどんどん借りが増えていきますねえ」


 自衛隊、様様だ。


「ふふぅふ! うふふ、しょ、しょんな……ほめ過ぎでありますよぉ……えへへ」


「んんんん! た、田中野さん、油断は禁物ですからね! 油断は!」


 それもそうか……神崎さんはしっかりしているなあ、いつも。

気を引き締めながら、アクセルを強く踏み込んだ。

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挟み撃ちとなった瞬間に緊張感が生まれた、が、すぐ優秀な自衛官2人により一蹴された。 車の性能もそれを信じて迷いなく運転する田中野も彼女らも、みんな頼りがいあるー!
む?偶然トラックを運転してたか連中が襲われて道を塞いでしまったのか?
さらっとブ◯ス・ナックルぶち込んでくる作者、好きやで
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