69話 俺とは関係ない所で動き始める事態のこと
『無職マンのゾンビサバイバル生活。』第一巻、8月8日発売です!
ネット版を加筆修正し、書き下ろしもありますので是非是非お買い上げをよろしくお願いしま~す!
神奈月先生の描く美麗イラストが目印です!
「ブルル」「ひぃん」
「おはよう、今日もいい天気になりそうだなあ」
青草とおがくずの匂いを堪能しながら、水飲みバケツに井戸水をドバドバ。
すると、待ってましたと言わんばかりに母娘は水を飲み始めた。
ゾンちゃんはともかく、おかあちゃんはデカいだけあって水分も必要なんだろうな。
現在入院中の大木くんが言ってたもんな、熱中症で死んだ馬もいるって。
気を付けてやらんとな……空前絶後のサラブレッドをそんな死に方させたら、世界中の競馬ファンに殺されちまう。
「あ、ちょっと待ってろよ……」
大木くんに言付かっていたことを思い出したので、軽トラまで走る。
「わふ!はふ!」
「おっ!競争するか!」
玄関先に転がっていたサクラがダッシュしてきた。
キャッキャしながら軽トラの荷台まで行き……荷台のコンテナを開ける。
「あった、これこれ」
大木くんが回収してたヤツだ。
これから先は絶対必要だから!って無茶苦茶主張してたな。
「わふはふ」
『何スかこれ!何スか!』みたいに足元をジャンプするサクラをいなしつつ、馬房へ戻る。
お前にはたぶん毒だからな~これ。
「ただいま~っと」
興味津々な馬2頭を尻目に中に入り……柵の内側に紐で結ぶ。
「どうだ?」
そう問いかけると、まずヴィルヴァルゲが寄ってきて……その物体をベロベロ舐めた。
おー、いくねえ。
「おう、岩塩か。わしもそろそろ探しに行こうかと思っとったんじゃけどな、大木はよう気が付くのう」
青草の束を担いで歩いてきた七塚原先輩が言うように……こいつはブロック状の岩塩。
ここらへんの農協には普通に置いてあるらしい、牧場が多いから。
「結構舐めるもんですねえ」
「馬は大量に汗をかくんじゃが、自分でナトリウムを作れんけえのう。こうして補ってやらんと、特に暑い時期は大変じゃ。今までは餌に塩をちょいと混ぜとったんじゃが、こっちの方がええ」
そうなんだ……汗を無茶苦茶かくのは知ってたけど、そうしてやらんと駄目なんか。
漠然と塩が必要なのは知ってたけども。
「わふ」
サクラが興味深そうに見つめている。
「お前は汗かかないからな、種族的に。あそこまでベロベロする必要はないんだぞ」
塩分過多になっちまうからな。
「今年は暑くなりそうじゃけえな。色々手を考えてやらにゃあいけん……扇風機やらも回収した方がええのう」
「あ、そういや竜庭牧場にありましたね……行くなら手伝いますよ」
となると、それ用の発電機も調達せんと駄目だな。
大木くんに聞……くことは今できないから、とりあえず先輩に頼ろうか。
いや、見舞いに行って聞けばいいんだろうけどさ……それは退院? してからの方がいいだろ。
アイツ、自主的に切り上げて帰ってきそうだし。
「ひん」
おかあちゃんが謎の物体を舐めているのを興味深そうに見るゾンちゃん。
「おう、お前もしっかり舐めあばばばば」
なんで俺を!舐めるんだ!
……あっ!
いつだったかドキュメンタリーで見たぞ!
動物が人間の顔を舐めるのは、塩分を摂取するためって説があるって!!
……なるほど、ゾンちゃんのこの癖は塩分を求めてのことだったのか!
すまんな、岩塩置くの遅れて!
「……本当にそうか?」
「ぷるる、ひん」
俺の顔をベットベトにしたゾンちゃんに聞いてはみたが、答えは返ってこずにカワイイ嘶きだけが馬房に響くのだった。
・・☆・・
「今日あっついね~、おじさん」
「それな! 夏になったら毎日プールっしょ、プール!」
「うぐぐぐ……行動に、言葉が、合致、してねえ!」
馬たちのお世話を終え、朝食を食べ……ちょっと休憩して、日課の筋トレ。
倉庫内にマットを敷いて腕立てをしていたら、まず朝霞が乗っかってきて……その上に璃子ちゃんが座った。
これもう腕立てじゃなくて腕を伸ばして保持する別の筋トレじゃん。
体幹が鍛えられるのはいいが、暑い!暑すぎる!!
なんだこの状況!
「ぐ、グワ-ッ!」
もう駄目だ、耐えられない!
「にいちゃんマジ頑張ったし~」
「だね!今度小さい子が何人乗るか試してみよ―よ!」
「……俺は遊具か何かか?」
まあ、この程度でいいか今回は。
璃子ちゃんはどいてくれたが、朝霞はそのまま巻き付いている。
コイツは本当に……!
「にいちゃあん、今日なにすんの~?」
む、今日……今日か。
「特にコレと言って予定はないな。いつも通りの何もない日々だ」
平穏って、最高。
近所に色々とヤバい連中はいるが、連中は表立って動いてないからなあ。
あの古保利さんたちでも察知できていないのに、俺が動いても何もわからんだろう。
基本的に待ちの姿勢ってキツイよなあ。
ああ、早くこの世から消えてくれねえかなあ。
「だって、璃子っち!」
「うんうん、良いね!」
俺の上にいる朝霞と話し込んでいる璃子ちゃん。
なんか嬉しそうだな……暇が好きっての、将来有望だぞ!
……本当にそうだろうか?
あ、これは考え過ぎるとアレだな、忘れよう。
「にいちゃんにいちゃん、あーし欲しいものがあんだけど!」
「おうなんだ? 庭付き一戸建てならそこら中に転がってるぞ」
たまに中には『元住人』がいるけど、そこは説得という名の兜割で退去していただけるし。
「違うってば~! あーしドラッグストア行きたい!」
「……ほほう?」
現状、色々足りてると思うけども……
「ここってさあ、むっちゃ便利だし子供いるし動物いるし、なによりにいちゃんがいるから最高なんだけど……ちょとね、色々足りないものがあんの!」
「そーそー! なくても困らないけど、あるとムッチャいいものが足りてないんだよ~!」
朝霞たちは意気込んでプッシュしてくる。
「そうなんか、それってなんなんだ?」
そう聞くと、朝霞は耳元に口を寄せてきた。
やめろくすぐったい。
「あのね、にいちゃん……ぽしょぽしょ」
……ああ、ああ、そういうことね。
あ~……うん、多少は回収したはずだが、女性特有の『ソレ系』はなぁ。
俺は門外漢だからなあ。
「すまんなあ、気の利かん男で」
「いや、ぶっちゃけコレにおじさんが気が利いたらドン引きすると思うな、私」
璃子ちゃんが真顔で言ってきた。
……確かに?それはそう。
「よし、それじゃあ準備するか」
七塚原先輩は馬のお世話で放牧地だし、後藤倫先輩は寝てる。
神崎さんと式部さんはまだ詩谷から戻ってこないし……ふむむむ。
俺と朝霞だけでは少し心もとないかな。
さて……
「フムン、頼れる美女の出番かね?」
アニーさん!
なんで屋根から飛び降りてきたんですか!?
でも……
「待ってましたよ、頼れる美女!」
「ほう、素直だなイチロー。カワイイから手助けをしてやろう」
頼れる美女ことアニーさんは、いつものように嫣然と微笑むのだった。
・・☆・・
「なんか、久しぶりだなこの定位置」
原野から硲谷方面へ向かう愛車。
その荷台で、咥え煙草で呟く。
運転席の方からは、楽しそうな声が漏れてきている。
今回の硲谷遠征は、俺とアニーさん、それに朝霞と璃子ちゃんの4人で向かうことになった。
朝霞は想定していたが、さすがに璃子ちゃんは……と思ったが。
「前にもミスターモンドが言っていただろう? 戦場の空気に慣れさせねば駄目だ。我々が24時間ガードできるわけでもないのだしな」
という説得により、こういう形になった。
武装は、朝霞は拳銃とライフルが1丁。
璃子ちゃんは少し大きめな猟銃。
さらに、大木くんの開発した棒にスタンバトンを接続したものを持っている。
俺は兜割と『魂喰』、それに脇差。
アニーさんは……いつぞやの銃器店から回収した散弾銃を、なんかこう……短く切ったモノを1丁。
それに加えていつものライフルに……たぶん、例のクソデカ拳銃。
……うん、戦力的には十分すぎる状況だ。
そこらへんのチンピラでもゾンビでも、楽に成仏させられるだろう。
問題は場数だけだな……こんな場数、普通なら踏まなくてもいいんだけど。
残念ながら世紀末だからなあ~……
そんなことを考えていても、車は進む。
「ままならんなあ……」
とりあえず、咥えっぱなしだった煙草に火を点けることにした。
「よし、イチローと私が先頭だ。クリアリングしたら合図を出す、いいな」
「あいあい」「さー!」
「私はキミらの上官ではないが、まあ許してやろう……行くぞイチロー」
「了解」
軽トラの荷台から飛び降り、兜割を抜く。
黒光りする相棒は、今日も頼もしい。
本日やってきたのは、硲谷にあるドラッグストアと電気屋が隣接した所だ。
朝霞達の目的はドラッグストアだが、電化製品も回収したいし。
ドライヤーとかなんか色々。
俺や七塚原先輩はなにも不自由していないんだが、女性的な目線からすると結構不便らしい。
今まではそれどころじゃなかったけど、余裕もできてきたので欲しいとのこと。
みんな頑張ってるからな、それくらいのご褒美は必要だと思う。
さて……駐車場にはそれなりにクルマが停まっている。
どれにも人影がないってことは……外で死んだか、ゾンビになったか。
硲谷の公民館に巣くっている大量のゾンビに仲間入りしてるのかもしれんな、意外と。
「パーキングはクリアだ。店内はわからん」
「俺もそう思います……アニーさん、その短い散弾銃は?」
映画とかで見たことのある形をしている。
「ソードオフ、というやつだ。銃身を切り詰めることで取り回しをよくし、散弾の拡散範囲を広げる効果がある」
はえ~……なるほど。
「ライフル弾は節約したいが、この国でも散弾は良く手に入るからな。狙撃には向かんが、近距離のノーマルや手癖の悪いヒューマンにはコレで十分だ」
「ゾンビとクソ人間が同じカテゴリーなんですね……まあ、同じか」
そんな話をしながら、アニーさんと並んで歩く。
「ドラッグストアから行きます?」
「ああ、その方がよかろう……電化製品は主目的ではない。どこからかゾンビ共がやってくる前に、とっとと攫っておく方がいい」
了解っと。
ふむ……この状況では猶更需要があるドラッグスストア。
見た感じ、扉は破られてるな。
中は薄暗いが……棚がいくつか盛大に倒れている。
それに……
「死臭は何度嗅いでも慣れんな」
「慣れたくもないですね」
生き物が、死んで腐った臭いがする。
「朝霞、璃子ちゃん、マスク装着」
「アイアイ!」「にいちゃん!」
アイアイにいちゃんってなんだよ……まあいい、俺も口元をタオルで覆う。
そのままゆっくり歩いていると……
「誘い出しますね」
「ン、援護は任せろ。後ろには通さん」
店内に、なにかがいる。
ポケットから缶コーヒーを取り出し、出入り口のガラス戸に向けて投げつける。
中身入りの缶は、頑丈そうなガラスを盛大に割った。
一瞬の静寂があり――
「――ガアアア!アアアアアアアッ!!」「オウオオオオオオオオオッ!!」「ギャババババババ!!!」
店内の暗がりから、聞き馴れた声と走る音。
「さん……いや4!」
「ガッチャ! 頼むぞサムライ!」
足の速い若いゾンビがまず飛び出してきた。
制服……店員の成れの果てか!
「ガアアアッ!」「――っしぃい……!」
両手をバラバラに振り回すゾンビに向かって、踏み込む!
「――ぬんっ!!」「アギャッ!?」
兜割が脳天にめり込み、骨の砕ける手応え!
そんなうちに新手がまた1体! 今度は私服のおじさんゾンビ!
「おらァ!!」
頭を砕いて弛緩するゾンビを蹴り飛ばし、ソイツに備える!
後方との距離は遠い、なら――!
「ぬうっ――あっ!!」
蹴り足を引き戻し、半身になりつつ突きの構え!
ゾンビが射程距離に入った瞬間に――突くッ!!
「ァオッ――」
鋭く伸ばした切っ先が、ゾンビの喉にめり込んでそのまま首を貫通する。
突き刺したまま横に捻って――骨を、折る!!
ばぎ、という手ごたえが届いた瞬間に、ゾンビから力が抜けた。
「――下がれ、私にも仕事をさせろ!」「了、解!」
成仏したおじさんゾンビの喉から兜割を引き抜き、斜め後ろに飛ぶ。
それとほぼ同時に、散弾銃を構えたアニーさんが飛び出した。
「アギャアアアアアアアアッ!!」
まず迫るのは、店員の制服を着た女ゾンビ。
アニーさんは悠然と散弾銃を持ち上げて、撃った。
盛大な銃声が響く。
「ァパッ!?!?」
女ゾンビの鼻から上に着弾。
色々な物体を撒き散らしながら、仰け反って倒れる。
……うへ、鈍器で殴った時とはまた違うグロさだ。
至近距離で発砲するとこうなるのか……
「フムン、いい拡散具合だ、反動が強いのも私好みだな」
倒れたゾンビに向け、アニーさんが再度射撃。
さらに飛び散る物体が増えて……ゾンビは沈黙した。
「さあ、最後のお客さんだ――おっと、なりかけか」
最後に店内から飛び出してきたのは、体が若干黒くなりつつある男のゾンビ。
放っておくと黒に進化しそうだな。
「ならば、これで……」
左手に散弾銃を持ち替えたアニーさんは、上着の中から見慣れたクソデカ拳銃を取り出した。
俺も撃ったが、無茶苦茶重いのによくもまあ片手でサッと構えられるもんだ。
「ギャバッ!?!?」
アニーさんが射撃。
さっきの散弾銃よりも重い音が響き、ゾンビの胸に着弾。
ソイツをそのまま地面に打ち倒した。
……とんでもねえ威力だな、相変わらず。
「――アサカ! リコ! 好きに撃て!」
そのままアニーさんは俺の方へ身を躱す。
ええっ!?そんないきなり言ってもパニくるだけじゃ――
――続く、二連の銃声。
「ヒット!」「んな~! あーし胸か~!」
呻いて立ち上がりかけたゾンビの額と胸の中央に穴が空いた。
振り向くと……素人の俺から見てもしっかりと構えて射撃した2人がいる。
「フフン、心配性だなオニイチャン? 女は日々進歩するのだよ、いい勉強になったろう?」
悪戯っぽく微笑むアニーさんだが、その手に持った拳銃はゾンビの方を向き続けていた。
俺も心配性かもしれんが……面倒見、いいなあ。
・・☆・・
「はいこれ、荷台によろしく~」
「おう、了解」
結局ゾンビは4体で打ち止め。
クリアリングを済ませた俺達は、ドラッグストアの物色を開始した。
床には色々と人間由来の液体やどこかのパーツが散乱していたが、朝霞も璃子ちゃんも怯えた様子はない。
逞しくなっちゃってまあ……この場合ではいいことだがね。
「璃子っち! これ、この化粧水むっちゃいいんよ! タダだからネコソギ持ってくし!」
「たっか!? で、でも全部タダなんだよね……ワーイ! やった~!!」
「フムン、保湿クリームがそろそろなくなりかけていたな……持っていくとするか」
女性陣にとって、化粧的な用品は俺にとってのDVDやゲームに匹敵するらしい。
みんなノリノリで物色している。
まあな、全品100%オフだしなあ。
俺でもああなる自信があるわ。
とりあえず荷物運ぼっと。
「あ、このグロス新作出てたんだ~! いつ手に入るかわからんから全部持ってこ~!」
「朝霞おねえさん、詳しいね~! あの、今度お化粧教えてくれる?」
「いーよーいーよ! 璃子っちをリッパなギャルにしたげるし~!」
「ぎゃ、ギャルはいいかなって……」
NOと言える璃子ちゃんは立派だなあ。
さて、荷台に積めるだけ積んで帰るか……
「当たりだし、ここ! ヘアアイロンもドライヤーもそのままあるし!」
「フムン、日本語がわからん……アサカ、コレはなんだ?」
「それね、スチーマー! あ、こっちには脱毛器も~! アガる~!!」
「とにかく何でも無料って最高だね~!」
帰れんかった……電気屋でも朝霞が大暴れしている。
ちなみにこっちは開店前だったのか、店員ゾンビが4体ほどいた。
女子連合が即刻射殺したので、俺の仕事は全くなかった。
頼もしいな、みんな……
彼女たちはしばらくあの様子だろうし、俺は俺でいるものを探そうか。
充電式乾電池とか、いくらあっても困らんしなあ。
あ、子供たち用にプレーヤーとよさげなDVD探して来てやるか!
残念ながらここにはおもちゃ売り場はないが、それでもいいものはあるだろう!
こうしちゃおれん、探すぞ~!
「にいちゃん、コドモみたいだし。かっわい~!」
「おじさん、むっちゃ嬉しそうだねえ」
「ふふ、ああいう子供な所があると女は弱いのだよ、ふふふ」
なんか聞こえた気が……まあいいか! 探すぞ~!!
・・☆・・
「田中野さん、お帰りなさい……凄い荷物ですね? 今日はどちらまで?」
「ああ、硲谷まで行って……色々と回収してきました。俺には皆目見当がつきませんが、なんかドライヤーとか化粧品とか……」
「そうですか、それは……いいですね!」
盗賊とかゾンビに襲われることもなく、夕方くらいに高柳運送へ帰還した。
門を開けてくれたのは神崎さんだった……詩谷から帰ってたのか。
この目の輝き……神崎さんも女の子ってことだな!
口に出したら怒られそうなので何も言わんけど。
「おかえりなさいであります~! ささ、荷下ろしをお手伝いするであります~!」
式部さんも帰っていたようで、楽しそうに段ボールを担いで手伝ってくれた。
結構軽く担ぐなあ……力持ちだな、あの人も。
「実りあるよい探索だったな」
「それな! 今度は服屋にエンセイするし~!」
「いいね! 行きたい行きたい~!」
女性陣3人も、心なしか顔がつやつやしてる気がする。
声はあまり聞こえなかったが、車内は大盛り上がりだったしなあ。
「――田中野さん、少しお耳を」
「む?」
たしかドライヤーの入った箱を下ろしていると、神崎さんが横へやってきた。
内緒話って雰囲気だな……詩谷で何か、あったんだろうか?
すす、と寄ってきた神崎さんは俺の耳元で呟いた。
「――詩谷駐屯地奪還作戦が始まりました」
……そうか~。
じゃあ今頃、あっちは大騒ぎだな……




