61話 緊急無線のこと
遅くなって誠に申し訳ありません。
これからもよろしくお願いいたします!
緊急無線のこと
ブラックバスフライをしこたま楽しんでから、翌日。
『あ、どうもどうも大木です~、誰か聞こえてますか?』
時刻は昼前。
放牧に馬たちを出し、軽く稽古をして汗を流していると……馬房近くのテーブルに置いていた無線機に着信があった。
これは、神崎さんたちが持っている各避難所との連絡に使うものじゃない。
大木くんが『緊急連絡用に』と置いて行ったものだ。
なので、かけてくるのは必然的に大木くんしかいない。
ええと、応答のスイッチは……ここか。
「あー、こちら田中野だ、どうした?」
駐車場で葵ちゃんと無限ボール投げに勤しんでいるサクラを見ながら応答。
『あ、田中野さん。どうもです~……』
なんか、さっきもそうだったけど声が籠ってるというか反響してるというか……
聞こえ方がちょいと変な感じだな?
「大木くん、今どこにいるんだよ?なんか変だぞ?」
『あ、やっぱりわかっちゃいます?いやあ、実はですねえ~……おわ、おわわ!?』
がらがらがら、と。
何かが崩れるような音がした。
「おい!大丈夫なんか!?」
明らかに尋常じゃないぞ。
……おう、気が付いたら足元にサクラがいた。
俺の様子が気になったらしい。
『うぐぐぐ……い、いやあ……その~……』
大木くんは、いつものように少し困ったような声で……
『――ビルが崩れて生き埋めになってるんですよ~、あっはっは!』
そう、笑って言ったのだった。
・・☆・・
『んぎぎぎ……ふう、なんとか空間が確保できましたよ。参ったなあ』
馬房前。
さっきまでとは違い、俺の横には神崎さんがいる。
今朝早くに御神楽から帰ってきて、仮眠してたんだけど……俺がビックリした様子に気付いたのか玄関からダッシュで飛び出してきた。
サクラがビックリしすぎて思わずジャンプしてた。
「それで大木さん、現在位置と状況をお願いします」
『あーはい、よっこいしょ……ええっと、住所は龍宮市の皆川って所にある『OMGビルディング』地下二階です』
神崎さんの質問に答える大木くん。
それを聞きながら、スマホを起動。
地図アプリを呼び出して確認……
ふむふむ、ここから車で30分かからんくらいの場所だな。
OMGビルディングは知らないけど、中小企業のビルが密集してる区画ってとこか。
行ったことないなあ……近くにコンビニくらいしかないし。
「何故そこに?」
『ここに入ってる会社に用があったんです。医療系の……義手や義足を作ってた所ですよ』
そんな所にいったいなんで……大木くんは五体満足じゃないか。
知り合いに身体障碍者でもいたのか?
『防具を自作しようと思って、3Dプリンター用の正確なデータを回収するつもりだったんですけど……』
ああ、なるほどな。
フットワークが軽いこって。
『で、目的のモノを回収したんで帰ろうとしたら……黒ゾンビの群れに出くわしまして、マジでバッタリ!って感じで』
「群れ、ですか。規模はどれほど?」
『数えられたのは20体までです。んで、慌てて出てきたビルに逃げ込んで入り口を爆弾で吹き飛ばしたんですけど……いきなりなんでちょっとテンパってて、強力すぎるのをチョイスしちゃいまして』
大木くん、攻撃力というか制圧力はピカ一だもんな。
メンタルも常人離れしてはいるが、近接戦闘とかの対応力には難があるけど。
……まあ、それが普通なんだが。
『悪いことに地下への階段を爆風で転がり落ちちゃって……怪我はないんですけど、地下一階がほぼ完全に崩落しちゃったみたいで、出れなくなっちゃいました、へへへ』
そんなお前、足を挫いちゃいましたみたいな軽さで言うなよ……
大惨事じゃないか。
「……周囲の状況はどうですか?」
『どっからか空気は入ってきてるみたいです。とりあえず僕の周囲、半径5メートルはまだ崩落の予兆はないですね……落ちてきた階段付近は完全に崩落してます。一応非常脱出口があるんですけど……そっちの階段にはその、会社の備品が山と積まれてましてね……田舎の中小企業はこれだから!』
なんてこった。
脱出不可能じゃないかよ。
「現在、ゾンビは?」
『いますねえ、ギャンギャンガウガウ吠えてますよ。こっちの声は流石に聞こえないでしょうけど……ここ、周囲がほぼ無人なんでなかなか他に行かないみたいですねえ』
他人事みたいに……
『で、田中野さんにお願いがあるんですよ』
「おう、待ってろ。すぐに掘り出しに行って――」
『――僕の家に行ってPCにパスワード打ち込んで起動しといてください、1週間に1回起動しないとあの家吹き飛ぶんで』
「……は?」
『……え?』
無線機を挟み、俺達は沈黙した。
「……あの、助けに来いってことじゃないの?」
『いやいやいや、そんな厚かましいこと頼めないですよお。これは僕がやらかしたことなんで、自力で脱出しますってば』
妙な所で律儀なんだよな、こいつ。
「あのなあ、そんなこと気にすんなって!俺もみんなも、散々大木くんには世話になってんだよ。それに友達だろ?それが困ってりゃ助けるって!」
『友達なんですか!?!?』
うわびっくりした。
え、なに?そっちはそう思ってなかった感じ?
それはちょっとショックだな……
「俺はそう思ってるがな?」
『おおお、今僕は猛烈に感動していますよ……てっきり使い捨てお助けキャラくらいに思ってるんだろうなって感じてたもんで』
お前……
「自己評価低すぎんだろ」
『あー!田中野さんだけには言われたくありませんねソレ!朴念仁!ちんぷんかんぷん!クソボケサムライ!!』
……なんで今罵倒されたの、俺。
た、たぶん生き埋めになってパニックになってんだろな。
『でもまあ、非常口の荷物をなんとかしてみようと思います、幸い爆弾の予備もまだあるんで。それが駄目だったら改めて救援要請をさせてもらい……オイ嘘でしょ』
がらがら、と何かが崩れるような音。
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
『ふっざけんな!僕はこんなピンチは望んでないんだよ!!こんにゃろ!死ね!!』
狼狽する大木くんの声。
続けて――スピーカーが音割れするほどの爆発音。
「大木さん!大木さん!!」「おい大丈夫か!おい!!」
……スピーカーからは、ざりざりという異音しか聞こえてこなかった。
何度呼び掛けても、そうだった。
しばし後、口を開く。
「……神崎さん、仮眠の後でアレなんですけど」
「すぐに準備をします、5分ください!」
神崎さんはそう言うと、社屋へ走っていった。
……さすが、相棒。
言わずともわかるってか。
……俺がわかりやすすぎるってことかもしれんがな!
「きゅ~ん、きゅうん」
「おーよしよし、心配すんな。大木くんがあのくらいで死ぬわきゃないって」
ただならぬ雰囲気に怯えるように鼻を鳴らすサクラを、ゆっくり撫でた。
・・☆・・
「すいませんね先輩、急に」
「気にすんなや、わしも大木にゃあ世話になっとるけえな」
軽トラの荷台に乗った七塚原先輩に声をかける。
八尺棒を持った先輩が、頼もしく微笑んだ。
神崎さんを待つ間に、放牧地にいる先輩にも助力を頼むことにした。
何故かって?間違いなくここで一番の力持ちだからさ!
崩落とかしてるから男手が必要だからね!
「お待たせしました!」
神崎さんが完全装備で帰ってきて、そのまま助手席に。
俺も『魂喰』と兜割、それに脇差のフル装備だ。
途絶する前の通信でも、黒ゾンビまみれだって言ってたしな。
「カメラ小僧には甘味を献上する役割がある、任せたぞ田中」
……後藤倫先輩、いつの間に。
だが、この人も大木くんには大層世話になってるんだから心配してるんだろう。
その、先輩なりに。
ここの守りは後藤倫先輩を筆頭にエマさんたちに任せれば安心だ。
さあ、行くぞ。
「おーい!嫌だっつっても今から行くからな!死ぬんじゃないぞ!!」
何の返答もない無線機にそう怒鳴り、軽トラのエンジンを始動した。
・・☆・・
法定速度ガン無視で愛車は爆走し、あっという間にOMGビルの近所に到着した。
途中何度かゾンビの群れに遭遇したが、大木くんのカスタムによって頑丈になった強化バンパーの錆になるだけだった。
小規模とはいえオフィス街なので、見通しは悪いが……あからさまな噴煙が見える。
アレ絶対大木くんのボム由来の煙だろ。
……わかりやすくていいや。
「目的地はこの先100メートルです。こっからは徒歩で」
「了解です、援護はお任せを」
助手席の神崎さんが、頼もしくライフルをコッキングした。
うし、行くか!
「どがいすらあ?」
運転席から出るなり、先輩が聞いてくる。
「先輩と俺が前、神崎さんが後方です。黒が多いらしいんで、臨機応変に」
「おう。牙島の連中かいのう、こりゃあ?」
「違うでしょ、ここいらは元々人が多かったし……自然発生ゾンビじゃないスか?牙島のならネオが混じると思いますし……ぬ」
兜割を引き抜き、先輩と神崎さんに目配せ。
いるな、近くに。
「誘引します。数が多いようなら右斜め前のビルに退避を」
「がってん」
神崎さんが胸ポケットからガチャガチャのカプセルを取り出す。
大木くんが作った、爆竹入りのやつだ。
それに火をつけ、前に放る。
からん、と路面に落ちたカプセルが……一拍おいて盛大に音を出す。
それはビルに反響し、遠くまで聞こえるだろう。
「来ます!」
「応!」「はい!」
肩幅に足を開く。
すぐに、前方から声が聞こえてきた。
「ガアアアアアアアアアッ!!」「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
続いて、ダバダバと足音。
「別れるのう、わしは左じゃ」
「んじゃ、右ですね」
ビルとビルの隙間から、黒光りするゾンビが走り出てきた。
……普通の黒か!今の所ネオはなし!
「ぬおっ!」
まずは先輩が、近い黒ゾンビへ向けて走る。
「ガアアアアア――」「でりゃああああ!!」
疾走の勢いを乗せた八尺棒が唸り、黒ゾンビの首に真っ直ぐ突き込まれた。
首を起点にして、黒ゾンビの体が浮き上がった。
そのままそいつは体を弛緩させ、ぐにゃりと地面に倒れ込む。
……一撃で首をへし折ったのか、相変わらず凄い攻撃力だよ。
「ギャッガアアアアアアアア!!」
と、俺の方にも来たか。
「っしぃい……」
息を吸い込み、踏み込む。
両手を伸ばしてスプリンターも真っ青な加速で走ってくるゾンビの――その、手の隙間に半身になって。
「――っは!!」「ゲグゥ!?」
身を躱しながら疑似的に振り上げた兜割が、大上段から黒ゾンビの眉間にめり込んだ。
「オオォッ!!」
インパクトの瞬間に、重心を乗せる。
さらにめり込んだ剣先が、黒ゾンビの両眼を飛び出させる。
ぐら、と揺れるそいつを蹴り付けて後方へ跳ぶ。
「――体を低くっ!!」
神崎さんの声。
着地し、体を折る。
「――ッバ!?!?」
今ぶん殴った黒ゾンビの後ろから現れた新手。
そいつの右目が、銃声と同時に弾けた。
「そのまま、そこにおれ!!」
行こうとしたら、先輩が踏み込んだ。
踏み込みつつ、その巨体に似合わない鋭いステップで横回転。
「――っじゃらぁあ!!」
遠心力を乗せた八尺棒が、横薙ぎの軌道で黒ゾンビの胸にめり込む。
胸の装甲を紙みたいに砕き、黒ゾンビ2体は路地の方へ吹き飛んだ。
「――後方!ノーマル4体!お任せください!!」
続けて神崎さんが斉射。
吹き飛んだ黒ゾンビの後ろに出た通常のゾンビが、瞬く間に脳天を撃ち抜かれて成仏した。
「声と気配が遠い、こんまま先に行くで!」
「応!」
先輩に続き、路地へ入る。
歩くごとに、先から聞こえる声が大きくなってくる。
大きくなってくるが、近付いてくる感じじゃない。
これは一体……?
「なるほど、大木くんの置き土産か」
路地を抜けると、前方にお目当てのOMGビルが現われた。
入口付近が盛大に吹き飛び、5階建てのビル全体のガラスがバリンバリンになっている。
そして、エントランス部分には――アラームを鳴らし続けるカプセルらしきものと。
その周辺で吠えながらうろつく、黒ゾンビの群れ。
大木ボムの破壊力はとんでもなかったようで、そこかしこに活動を停止した黒ゾンビのバラバラ死体……死体?がある。
バラバラ過ぎて数えられんくらいだ。
生きてる?のは……見えてるだけで10体、か。
一斉に来られると、ちょっとまずいな。
黒ゾンビ1体に後れを取るつもりはないけども、広い空間で四方から襲い掛かられたらヤバい。
先輩みたいな空間兵器もとい八尺棒は持ってないもんでな。
「爆発物の使用は控えた方がいいですね、崩壊を助長させかねません……あのアラームが効いている間に、私が数を減らします」
俺の横で体勢を低くし、ライフルのマガジンを交換する神崎さん。
あれ?なんかマガジンに赤いテープが貼ってある。
なんだろう。
「アーマーピアッシング……徹甲弾です。この距離ならば……」
サプレッサーで消音された銃声が、規則正しく響く。
その度に、うろつく黒ゾンビの顔が仰け反って倒れていく。
……50メートルは楽に離れてるんだけどな。
スコープもナシでよくやるよ、流石は神崎さんだ。
「気付かれたわ、来よるぞ」
が、頭ゾンビとはいえ連中も『攻撃』に気付いたらしい。
4体目が倒れたあたりで、一斉にこちらへ走り出した。
残りは6……いや、8体か!!
「まだ、いけますっ!」
神崎さんは射撃を続け、奴らは追加で3体倒れた。
「田中野!」「はい!」
まずは先輩が先に出た。
地面を蹴り、先頭の黒ゾンビに体重を全て乗せた跳び蹴りを放つ。
「おうりゃあ!!」
コレで倒せはしないが、列になっていた後続を巻き込んで倒れていく。
俺は、その先輩を追って走り――
「背中、借りますッ!!」「応!!」
地面に落ちていた大き目の瓦礫を足場に、その肩に跳び――さらにそこを踏み切る。
先輩が倒した3体のゾンビを跳び越えて、後続へ!!
「ガアアッ!!」
「――ぬう、ん!!」
上空の俺を見て吠えたゾンビに、落ちながら兜割を振り下ろす。
首元に叩き込んだ一撃が、確実に首をへし折った。
そのまま、倒れ込む黒ゾンビの胴体を踏みつけて着地。
「っしゃあ!!」「オグ!?」
巻き込むには少し距離が足らず、立ったままだった新手に突き。
鋭利な切っ先が牙だらけの口に飛び込み、喉を貫く。
「っらぁあ!!」
抜かずに、握ったままこじる。
延髄が砕ける手応え。
「っし!」
兜割が刺さったままのそいつを蹴り付け、倒す。
最後に残った1体が、肥大化した右腕を振り上げて走ってくる。
「っしぃい……!」
腰の『魂喰』に手を滑らせ、抜刀。
抜き打ちの形になった斬撃が、右腕の下を潜って脇腹に食い込み、食い破る。
「ガオッ!?」
脇を半分以上切り裂きつつ、左へ身を躱す。
俺の横を通り過ぎる黒ゾンビ。
「――おおおぉッ!!」
そいつが振り向くよりも早く、翻った切っ先が延髄に切り込んだ。
刃が入った装甲板に火花が散り、首の3分の1を斬り抜けた。
空中に、黒い飛沫が飛ぶ。
「カ……ハ……」
倒れ込んだ黒ゾンビが、しばし痙攣して静かになった。
「見事じゃのう、おまーは身が軽いけえな」
「……よく言いますよ、あんだけ動く癖に」
振り向くと、先輩が残った黒ゾンビの脳天を粉々に砕き終えた後だった。
俺よりも早いじゃんか。
「お2人とも、お見事です!」
上気した顔で神崎さんが走ってきた。
ブレないけど、大木くんのこともあるのでいつもより抑えめだ。
空気が読めるウーマンだなあ。
「こっちはやれんのう、完全に塞がっとるわ」
「ですねえ」
黒ゾンビを片付け、ビルに踏み込んだ。
生々しい爆発の痕があり、オフィス用品が粉々になって吹き飛んでいる。
それと、ゾンビ由来っぽい臓物の数々も。
壁の血まみれ案内図を確認して階段の方へ行ってみたが……地下への階段があった場所は、滅茶苦茶になっていた。
地上4階までの階段が瓦礫と化し、山になっている。
これは……重機でもないと無理だな。
「大木くんが言ってた非常階段の方へ行くしかなさそうですね」
「じゃのう」
「案内表示があります、こちらです」
『非常口』と書かれた看板を指差す神崎さんに先導され、そちらへ向かうことにする。
「……これ、消防署に怒られる案件だろ」
爆風でごちゃついた社内を歩き、非常階段があるエリアに到着。
だが、その扉の前には古いコピー機やら書類を入れた段ボールっぽいものやらがうず高く積まれていた。
何のための非常口だ、何の。
「どかさにゃあなんもできんのう……ぬん!」
先輩が、ノーモーションでコピー機を持ち上げて横へ投げ捨てる。
……やっぱりついてきてもらってよかった。
それ1人で持ち上げるもんじゃねえだろ……
俺も続いて、堆積した段ボールを撤去。
ひいひい言いながら作業し……やっとこさ扉に辿り着い……おい!ドアノブが折れてるじゃねえかよ!
「の野郎ォ!」
勢いで蹴りをぶち込むと、造りの甘いその扉は歪んで開いた。
……コンプライアンス、ガバガバだったんだろうなこの会社。
「階段も酷い有様じゃのう……」
空いた扉から中を照らすと、先輩の言う通り半分くらいが荷物で塞がれていた。
ここの連中、非常階段を倉庫かなんかだと勘違いしてたんじゃねえかな。
だけど、なんとか1人ずつは通れそうだ。
「おーい!大木くん!生きてるか!」
地下に向かって叫んでみたが、返事はな……あった!
「……しんでたら、へんじ、できないっしょ……」
暗がりから聞き馴れた声がする。
よかった!さすがはソロサバイバー大木!!
「いかん、急がにゃ……そこで待っとれ、わしが行くけぇ!!」
急に血相を変えた先輩が、ライトを咥えて非常階段をなかば飛び降りるように降りて行った。
一体どうしたんだろ?
この階段も崩落しそうとかそんな感じなn――!!
――血の臭いが、する。
「しっかりせえよ!もう大丈夫じゃけえな!!」
しばらくして、先輩が大木くんを抱えて戻ってきた。
その大木くんは……
「いやあ、どう、どうも……」
腹の部分に、歪んだ鉄パイプが突き刺さった状態だった。




