8話 ゾンビゾーン通過のこと
ゾンビゾーン通過のこと
「むーん・・・港の方に集まってるなあ」
懐から取り出した単眼鏡を覗きこむ。
坑道の出口である現在地は、港を見下ろす小高い丘の中腹にある。
周囲にゾンビはいないので、腰を落ち着けて観察できる。
拡大された視界に、港にたむろしているゾンビが見える。
数は・・・ううむ、見える範囲で30体はいるな。
ざっと確認した限りでは黒や白黒はいないようだが・・・
ジャックさんも存在は知っていたからな、どっかに隠れている可能性もある。
「んぐんぐ・・・ぷっは。にいちゃん、どーお?」
「おう、ちょっと見てみろ。造船所の場所もついでに教えてくれ」
家から持ってきた水筒を豪快にラッパ飲みしている朝霞に、単眼鏡を渡す。
地図アプリと照らし合わせるよりも朝霞に聞いた方が早そうだ。
「は~い!・・・うあ!すっげ~・・・よく見えるねにいちゃん!ひゃあ・・・グッロ!グロイし!」
そう言いつつも、興味津々といった感じで見ている朝霞。
この様子じゃ、造船所を見つけるまでだいぶかかりそうだ。
俺も水分補給しとこう。
「んん~、知り合いはいないかな~、お、アレってサカマキのジジイじゃん。あっちはヤマギシのアニキか~」
どうやら次々に知り合いを見つけたようだ。
他にも何人か名前を呟いている。
「・・・親しかったのか?」
「むー、そこそこ?ヤマギシのアニキはいい人だったからちょい悲しいけど、それ以外はセクハラオヤジだからなんとも思わんし」
ドライなことである。
だが、知り合いゾンビは成仏させられない!と言われても困るのでそれでもいいが。
朝霞は結構メンタルが強いな。
伊達に修羅場をくぐってないってことか。
・・・そういえば俺って知り合いゾンビに遭遇したことないな。
坂下のオッサンくらいか?
親しい相手だと少しやりにくいから、それでいいんだが。
オッサン程度の嫌いな相手ならいくらでも成仏させられるけど。
むしろ人食いの虫に乗っ取られた相手を楽にしてやったんだから、オッサンも地獄で感謝していて欲しいところだ。
仲のいい人がゾンビになっていたら・・・か。
気は進まないが、ゾンビが人間に戻る可能性はゼロ。
ためらっていては俺までゾンビの仲間入りしちまうからな。
生き残るためにはどっちみちぶん殴るしかない。
・・・こういう、切り替えの早い所が我ながらネジ外れてると思う。
特に心は痛まないけども。
「っていうかお前ってセクハラされ過ぎじゃないか・・・?」
「ほんとサイアク!なんでなんだろ、にいちゃんわかるぅ?」
俺に聞かれても困る。
アレか?ギャルだから軽く見られてる・・・とか?
だがさすがにこれは言えないな。
「ええと・・・美人だからじゃないか?あと・・・たぶんだけどお前薄着ばっかりしてただろ」
「みゃう!?」
「さらに距離近いし、人懐っこいし・・・そういうところじゃないか?」
「はぁう!?」
その面白い返事をやめなさい。
そして、これは言わないが、どうせスカートも短いとかそういう感じなんだろ?
ギャルは改造ミニスカ制服とか着るだろうし(偏見)
「ま、でもセクハラする方が100万倍悪いけどな。いちいち気にすんなよ、朝霞はいい子なんだからさ、それくらいは俺でもわかる」
「み、みゃい・・・」
なんだこいつ急におとなしくなったな。
褒められ慣れてないのか?
「あと・・・おい、造船所ってどこだ?」
「あうあう・・・え、えっとぉ・・・あ、アレ!港のちょい右にあるオレンジの屋根!でっかい建物」
ふむ、アレか。
ゾンビわらわらゾーンからそう離れていない距離にあるな。
・・・最悪だ。
どうすっかなあ、アレ。
「爆竹があればよかったんだが・・・しょうがねえ、やるしかないかあ・・・」
「えっ!すごいにいちゃん!アレに突っ込んで大暴れすんの?」
「無理だから、あっという間に死ぬから・・・そういうのは流石に俺には無理だ」
四方八方から突撃してくるゾンビを同時に全部倒せるほど、俺は人間捨ててない。
七塚原先輩や六帖先輩、あと師匠なら大丈夫だろうけども。
朝霞もいる以上、博打はできないからな。
「ヤバいゾンビが混じってるかもしれないから慎重に偵察する必要がある・・・もうちょい近付くぞ」
「うぇ~い・・・ヤバいゾンビって前に言ってた白黒とかいうの?」
「ああ、奴らはヤバい。俺も正面からなら1体が限度だ・・・出くわしたらとにかく逃げろよ朝霞」
「う、うん・・・」
握り慣れてないこの鉄パイプでどれほどやれるかはわからんがな。
もう遭遇した場合、朝霞を坑道へ逃がしてひたすらぶん殴るしかねえ。
教主サマクラスの奴が出てきたら俺も撤退を考えるが。
ざっくりとした方針が固まったので、移動を開始する。
とにかくここを下りて港の外周くらいにはたどり着かないとな。
周囲に気を配りながら丘から下り、港への道を行く。
足元の砂利道がアスファルトへ変わり、文明の匂いがする。
「朝霞、あそこに3階建てのアパートがあるだろ?とりあえず、そこまで行くぞ」
「うん!」
丁度いい場所にアパートを見つけた。
あそこの屋上に登ってさらに詳しく偵察をしよう。
平屋根だし、楽に登れるはずだ。
「っ!・・・にいちゃん」
朝霞が何かに気付いたようだ。
「ああ、わかってる。俺の後ろから来い」
こちらからはアパートの裏が見えるが、今何かが動いた。
植木に阻まれてよく見えないが・・・恐らくは。
「声を出すなよ、俺から10メートルくらい離れてな」
「うん・・・気を付けてね」
ゆっくりと、足音を立てないように歩く。
斜めに動いていると、植木の切れ目から先が見えた。
地面にしゃがみ込んでいる人影が目に入った。
体のあちこちをごっそり抉られたゾンビが、地面に倒れた人間の前で何かをしている。
何かっていうか、まあ食ってるんだろうな。
ぶちぶちと肉を千切るような嫌な音が、風に乗って届いてくる。
ゾンビは見える範囲でそれだけだが、まだ見えないところにもいるかもしれない。
慎重に、そして迅速にカタを付けよう。
「っふぅ・・・」
軽く息を吐き、鉄パイプを脇構えに。
足音を立てないように再度注意しつつ、早歩きへ。
ある程度の距離まで近付くと、一気に地面を蹴る。
「っしぃい・・・!!」
遅ればせながら俺に気付いたゾンビが、ぎこちない動きでこちらを振り向く動作に入った。
その脳天に、勢いよく鉄パイプを振り下ろす。
ごぎん、と鈍い感触があり、同時に頭蓋骨が割れる手応え。
「ァッ・・・」
吐息を漏らしたゾンビが、さっきまで食っていた死体の上にくたりと倒れ込んだ。
ゾンビも死体も同年代くらいの男だ。
死体の方は・・・うげ、顔がっていうか頭が半分以上喰われている。
脳を摂取していたようだ。
ここで成仏させといてよかった。
息を吸いこみつつ、残心。
周囲の気配を探る。
・・・何も聞こえない。
近くに新手はいなさそうだ。
朝霞に手招きすると、嬉しそうに小走りで近付いてきた。
なんか、ホントにあいつ・・・犬みたいだな。
ゴールデンレトリーバー系女子とでも名付けようか。
いや長いな、大型犬系ギャルでいいか。
もしくは犬ギャル。
「すっごいね、にいちゃん」
「どういたしまして・・・これから正面に回って階段を探すぞ、同じようについて来い」
「がってん!」
朝霞に死体を見ないように注意しながら、再び足音を忍ばせて歩き出した。
「ホラ、手ぇ伸ばせ・・・引っ張り上げてやるから」
「うん!」
アパートの屋根に登り、朝霞に手を差し出す。
「ふうう・・・ぐぐぐぐ・・・!!!」
「ふわっ・・・!にいちゃん力持ちぃ!」
「褒める前にそこの手すりに足引っ掛けろぉお・・・!!」
嬉しそうな朝霞を、筋肉パワーで屋根の縁まで引っ張り上げた。
ひい、疲れた。
結局、階段で3階に上るまでにゾンビとは出会わなかった。
盛大に何かがあったらしい乾いた血まみれの通路を歩きつつも、何事もなく3階に到着。
俺は雨どいをつたって屋根にアクセスした。
「よし・・・普通のゾンビはここまで登って来れないからな。嫌な臭いもないしちょいと弁当にするか」
「やった!キンチョーしっぱなしでお腹チョー空いてたし!」
リュックサックから弁当箱を取り出し、屋上に置く。
「なんだろな~なんだろな~♪」
ピクニック気分の朝霞である。
・・・こいつ、結構肝が据わってんな?
ゾンビや死体を見ても取り乱した様子はないし、かなり有能な相棒だなあ。
弁当箱の蓋をあけると、デカいおにぎりがみっちりと詰め込まれていた。
おお、漬物も添えてあるし海苔もしっかり巻いてある・・・唾が湧いてきた。
ねえちゃん様様だ。
「俺が言うのもなんだが、食欲あるのな、朝霞」
「うん!『明日戦争が始まってもいいように、食える時に食っとけ!』って死んだじいちゃんによく言われたし!」
あ、俺もそれ死んだ爺ちゃんに言われたことがある。
戦争を経験した年代のご老人はみんなそう言うのかな?
師匠もなんか似たような事言ってたし。
「んふ~、いっただっきまぁす♪」
しっかりと手を合わせ、朝霞が大口を開けて握り飯を頬張った。
見ているだけでほっこりするな、表情。
普段はどっちかというとキツめの美人なのに、こうしていると璃子ちゃんと同年代にも見える。
元気にしてっかなあ・・・璃子ちゃん。
「んみゅぅう・・・梅干しぃ・・・母さん入れないでって言ったのにぃい・・・」
かと思えば、一瞬で顔をしかめる朝霞であった。
「にいちゃぁん・・・」
「・・・おい、食いさしを俺に渡すんじゃない・・・ああもう、まったく」
涙目で半分齧った握り飯を差し出す朝霞。
お前ね、一応カテゴリー的には俺は異性なんだぞ?
こら、目を潤ませるんじゃないまったく・・・
「梅干し苦手なのか?」
「これだけは無理なんだぁ・・・あーし。それ以外は何でも食べれるんだけど」
そいつは難儀なことだな。
梅干し美味いのに。
仕方がないので受け取って頬張る。
まったく、甘いね俺も。
うん、うまい・・・ねえちゃんの自家製梅干しは最高だ。
いくらでも米が食えそうだな。
米も美味いな・・・去年の古米だって聞いたけど、十分だ。
「とりあえず割ってみよ・・・あ、昆布!やった!!」
お目当ての具だったらしく、朝霞は今度こそ幸せそうに握り飯をパクつき始めた。
幸せそうに食っちゃってまあ・・・
「腹八分目にしとけよ、満腹だと動けなくなるから」
「ももっむい!むむん!まままも!!」
「馬鹿野郎米を飛ばすな!あーあーもう、ほっぺにもこんなにお弁当つけてお前は・・・」
「みゃむみゃあむ!?!?」
「あだだだ!?落ち着け!!」
頬についた米を取ると何故か朝霞が振動し始めた。
かと思えば俺の指ごとご飯粒を食った。
さてはお前・・・意外といやしんぼだな?
腹ごしらえが無事に済み、お茶を飲んで一息つく。
玄米茶・・・最高!!
というわけで、屋根からの偵察を開始する。
ここから港まではゆるやかな下り坂になっているので、楽に見渡せるな。
「しかしアレだ、造船所周辺が見事にゾンビまみれだな・・・」
「ねー。なんであんなに集まってんのかな?」
「さてなあ、もしかしたら生存者が脱出する時に追いかけて、そのままあそこに残ったのかもしれんなあ」
港には船の姿はない。
いや違う、『まともな』船の姿がないのだ。
湾内には沈没した船の残骸が浮かんだり沈んだりしている。
ひいふう・・・だいたい4隻ほどはここを脱出できずに沈んだようだ。
混乱の度合いが見て取れるな。
「このまま道なりに行くとゾンビの群れに突っ込むな・・・どうしたもんかね」
俺だけなら最悪掟破りの幕末志士戦法でなんとかなるが・・・朝霞がいる。
運動能力は悪くはないが、朝霞にはこの後パーツの選定とかをしてもらう必要がある。
無駄な消耗をさせるわけにはいかん。
だとすれば・・・
そこまで考えた所で、ふと閃いた。
『アレ』を使うか。
「朝霞、しばらくここにいろ」
「へ?あ、うん・・・って!?にいちゃん!?」
返事を待たずに、屋根から飛び降りた。
そのまま、アパートの正面の駐車場に停まっていたワゴン車の屋根に着地する。
おっとと。
地面に降りて車を確認。
タイヤはパンクしていない、空気圧も大丈夫そうだ。
お、よし・・・鍵はかかってないな。
運転席に乗り込み、ギアをニュートラルに入れてハンドブレーキを解除する。
「うし、やるかあ」
『方向』もバッチリ、これならいけそうだ。
運転席から降りて後方へ回り、深呼吸してから思いっきり押す。
「ふんぬぬぬぬ・・・ぐぐぐぐぐぐ!!!」
ほぼ全力で体全体で押す。
すると、ゆっくりとワゴン車が前進を始めた。
このまま・・・このままぁ!
暑い上にこの運動量、瞬く間に汗が滝のように流れてくる。
若干の気持ち悪さを感じながら、それでも押す。
ワゴン車はゆっくりと駐車場を出て、道路に合流。
もうちょいだ・・・もう、ちょい!!
「るうう・・・あああ!!!あああああああああ!!!!」
最後の仕上げとばかりに、力を振り絞る。
ここからが・・・下り坂だ!!
慣性の法則と傾斜によって、ワゴン車は自分から坂を下り始めた。
よし・・・ここだ!
押す力を緩め、後部から運転席に向かって並走する。
そのまま運転席に飛び乗り、ハンドルを持つ。
よしよし、このままだ。
ワゴン車の動きをハンドルで微調整。
このまま行けばゾンビの群れに突っ込むラインだ!
タイミングを合わせて運転席から外へ飛び出し―――
「うらぁ!!!」
鉄パイプで思い切り窓をぶっ叩いた。
力はあまり乗せきれなかったが、それでも窓には放射状にひびが入る。
地面を転がって飛び出した勢いを殺す。
俺の受け身が終わったころ、無人のワゴン車が走りながらけたたましい警告音を発し始めた。
よっしゃ!狙い通り!!
「アアアアアアアアアアアア!!!」「ギャガッガアアアアアアアアアアアアアア!!!」「イイイイイ!!!ギュウウウウ!!!!」
ワゴン車の警告音に気付いたゾンビ共が、弾かれたように走り始める。
そこそこの速度に達したワゴン車は、ゾンビを撥ね飛ばしながら港へ向かって行く。
ふう、重くて大変だったがあの車にしておいてよかった。
軽自動車だったら途中で止まってたかもしれんしな。
エンジンをかけて突っ込むのも一瞬考えたが、不確定要素が多いのでやめておいて正解だった。
目論見通り、ワゴン車は港のほぼ中央で停車している。
周囲には、人だかりを作って吠えまくるゾンビ共。
警告音が続く限り、あそこでゾンビの注意を惹いてくれるはずだ。
いやあ、ぶっつけ本番でうまくいってよかったよかった。
さて、戻って出発・・・お?
何か朝霞がこっちに走ってきている。
嘘だろ!?
向こうにもゾンビが!?
「~~~~~~!!!!」
いや、あの輝くばかりの笑顔・・・我慢できずに追いかけてきやがったな。
マジで大型犬じゃねえかよ・・・
「~~~~にいちゃぁん!!」
「ぎょむ!?」
朝霞はトップスピードを維持したまま、俺に向かって飛び掛かってきた。
身構えていなければ押し倒されるところだった・・・
「すっごいね!映画みたいだった!にいちゃんかしこい!かしこいし!!」
「離れろお前離れrウワーッ!!凄い力だ!!」
やっぱりコイツの前世はタコか犬だ!!
離れなさいはしたない!!
あっこら匂いを嗅ぐんじゃない!!!
もっとはしたない!!!!!
「・・・落ち着いたか?」
「・・・あい」
結局強めのデコピンをかます羽目になった。
朝霞はおでこを押さえながら顔を真っ赤にしている。
すぐ暴走すんだからこいつは・・・もう。
「元気がいいのはいい事なんだが・・・お前ちょっとは言うこと聞きなさい」
「うぇい・・・」
「とにかく、ゾンビが音に引き寄せられているうちにぐるっと迂回しながら造船所を目指すぞ。ついて来い」
「うんっ!」
いいお返事ィ・・・
切り替えが早いのはいいことだな、うん。
アパートから港へと続く道から、脇道へ入る。
いまだに景気よく警告音が聞こえてきているから、周辺のゾンビはあっちへ誘導されているだろうが油断はできない。
「たまに半分に千切れて動くゾンビとかいるからな、気を抜くなよ」
「うぇえ、マジ?ゾンビパねえ・・・」
軽口を叩きながらも、周囲に気を配る。
気配、無し!
よし、このまま行くぞ。
朝霞に手振りで伝え、少し歩くスピードを上げた。
幸運にも新手に出くわすことはなく、造船所の入り口までたどり着くことができた。
「でっけえなあ・・・」
「島で3番目にでっかい造船所だかんねー」
「へえ、他にもあるのか」
「うん!東と北だよ。北の『神尾造船』が一番でっかいんだ!」
『大山造船』と大きく書かれた看板を見上げる。
これで3番目か・・・
造船所はちょっとした体育館くらいの大きさのある、倉庫めいた建物だった。
俺達がいるのは正面の入り口で、反対側はそのまま港へ続く水路に直結している。
船を出すには便利そうな立地だ。
「・・・ぬ。施錠してあるってことは中に誰か、もしくは何かがいる可能性がある・・・気を抜くなよ朝霞」
「がってんてん!」
新言語を作るな新言語を。
なんだよがってんてんって
ドアを上に押し上げながら思い切り力を込める。
正面のドアは両開きのガラス戸。
鍵は簡単な構造なので、いつものように斜めに持ち上げて破壊できそうだ。
「ふう、う!!」
「ひゃあ!にいちゃんかっこいい!!」
めぎ、という音を立てて鍵は壊れた。
そのままの姿勢で、しばし耳を澄ます。
朝霞も空気を読んで黙っている。
・・・内部から特に音は聞こえないな。
ガラス戸なので内部がはっきり見える。
受付というかオフィスっぽい部屋が見える。
奥に見える扉は造船の作業ブロックに通じているんだろう。
とりあえず、オフィス部分は何も動くものはない。
「んしょぉ・・・!よし、入るか」
破壊した扉を音を立てないようにこじ開け、先に入る。
鼻を突くのは埃っぽい澱んだ空気だ。
この様子だと無人になってから大分時間が経っているな。
「後に続け。鉄パイプはしっかり持っとけよ・・・俺が教えたこと、覚えてるか?」
「相手をするときは1対1!頭を思いっきりぶん殴る!数が多かったら逃げて1体ずつ相手する!頭が狙えない時は足をぶん殴る!」
「よしよし・・・いい生徒だよ、お前は」
「えへぇ・・・えへへぇ」
嬉しそうな朝霞の声を聞きつつ、部屋に踏み込んだ。
さて、何事もなければいいが・・・




