2話 現状の把握のこと
現状の把握のこと
「水だ。飲めるか?」
しばらくすると、先程のガスマスクの人がペットボトルを持って戻ってきた。
「ん、ぎ、ぎぃ・・・の、のめ、ます」
駄目だ。
声を出すだけで体中に激痛が走る。
幸いにして、手足が欠けている様子はないが・・・これは動けんな。
指が動くから、神経も無事だろうが。
目も見えるし耳も聞こえる、ただ体だけが動かない。
「あな、た、は・・・?お、れは、どう、して・・・そ、れに、ここ、は?」
随分と長い夢を見ていた。
いつもと違って内容は覚えているが・・・いい夢だった。
本当にあの世があるならそれでいいし、たとえ夢でもいい。
「おい、一度に急に聞くな。まずは水だ」
彼、もしくは彼女はしゃがみ込んでペットボトルを差し出してくる。
そのキャップは外され、ストローが差さっていた。
「・・・そうか、動けないのか。待っていろ」
マスクさんは、俺の体を浮かせて何枚かのタオルケットを挟んでくれた。
死ぬほど痛いが、これで上体が起こせる。
「んぐ・・・んぐ・・・んぐぅ・・・」
どれほど眠っていたかは知らないが、水が超美味い!
体の隅々まで沁み込んでいくようだ・・・たまらない!!
「っぷはぁ!」
「いい飲みっぷりだな。これなら大丈夫そうだ」
マスクさんが、くぐもった声で笑う。
今更ながらなんでそんな恰好なんだ?
「先程の質問にいくつか答えよう」
俺が落ち着いたのを見て、マスクさんは話し始めた。
「まずは自己紹介からかな。私は・・・ジャックだ」
外人さんでしたか。
「田中野、一朗太、です」
「イチロー・・・タ?変わった名前だな。しかし水を飲んだだけで話せるとは・・・」
「丈夫なのが、取り柄なんで。ええっと・・・ここは、もしかして、牙島ですか?」
うぐう。
話す度に胸がしくしく痛む。
肋骨がヤバいことになってんな、確実に。
「ああ、そうだ」
「やっぱり・・・あの、俺は、どうして?」
「それは私の方が聞きたい。キミは半分沈みかけたボートにしがみ付いて、海岸に打ち上げられていた・・・一体何があった?」
・・・あの時しがみ付いたのはやはりボートだったか。
我ながら悪運の強いことだ。
「ええっと、話せば長い、です」
「だろうな。こんなご時世にまさかサムライにお目にかかるとは夢にも思わなかった」
っていうかジャックさん、日本語上手いですね。
所々たどたどしい発音はあるが、問題なく会話できる。
ライアンさん以上、斑鳩さん以下って感じ。
斑鳩さんはもう外人とは思えないほど流暢だからな。
「俺は龍宮・・・ここにある橋の対岸から、来ました。どれくらい、眠っていましたか?」
「今日でちょうど3日目だな。できる限りの処置はしたが、正直これほど早く目を覚ますとは思わなかった」
・・・3日目、か。
夕飯には間に合わなかったな。
ごめんね神崎さん。
「それは・・・ありがとう、ございます」
「いやなに、こちらにも理由があってのことだ」
だろうなあ。
こんな状況で見ず知らずの人間を助けるなんざ、何かの見返り目的じゃないと説明が難しい。
相手が俺のような成人男性ならなおさらだ。
子供ならともかく。
「・・・とりあえず、今は眠れ。起きたらまた話そう」
「は、い・・・」
そう言うとジャックさんは俺の体を支え、再び寝かせてくれた。
うぐぐ・・・いてえ。
「私はもう行く。ここの周囲は安全だから、心配ない」
「なにから、なにまで・・・」
「いいんだ。先程も言ったが、こちらにも考えがあるからな・・・お休み、イチロータくん」
ジャックさんが立ち上がって歩いていく。
軽く扉を開けるような音がして、それきり倉庫?内は静かになった。
色々と知りたいところだが、今はとにかく寝よう。
体を、休めなければ。
いい人?に拾われてよかった・・・
あ、結局なんでガスマスクしてんのか聞き忘れた。
目を閉じると、睡魔がすぐさま襲い掛かってきた。
視界の隅に、鞘に入れられた『魂喰』が見えた。
よかった・・・海の藻屑にはなってなかったらしい。
とりあえず、おやすみ。
鳥の鳴き声に、目を開けた。
どうやら朝らしい。
あいも変わらず体はろくに動かないが、昨日と違って明るいので周囲の状況がよくわかる。
「船の、ドックか・・・ここは」
俺の視線の先には、漁船の姿があった。
何の漁に使うのかはわからんが、さほど大きくはない。
周囲には、網やらなんやらが雑多に置かれている。
後はいくつかの工具類。
長い間使われていないようで、軽く埃が積もっている。
昨日は気付かなかったが、潮の匂いがする。
海が近いようだ。
「っふ、うう・・・うう、う!」
軋む体を叱咤し、なんとか上体を起こす。
何かする度に、体のどこかが連動してひどく傷む。
「はまってるな、左肩」
包帯で厳重に固定されてはいるが、それでもその気になれば腕が上げられる気がする。
昨日のジャックさんが処置してくれたのだろうか。
『魂喰』が貫通した左腕も、同じように血のにじんだ包帯が巻かれている。
こっちは・・・動脈を逸れていたようだな。
死ぬほど痛いが、死ぬような傷ではない。
『魂喰』判定では俺は悪人ではないらしい。
涼しいと思ったら、上半身は裸だ。
鍛治屋敷の爆弾パンチにやられた箇所は保護され、胸の包帯にはなにか板のようなものが入っている。
添え木的なモノかな?
「おい、無茶はするなよ」
ドアが開き、ジャックさんが入ってきた。
相変わらずのガスマスク姿だ・・・前衛的なファッションですね。
開いた扉の向こうに、大きな家が見える。
どうやらこの倉庫は、あの家の敷地内に建っているようだ。
ひええ、ブルジョワ。
「目覚めはいいようだな、昨日よりも顔色がいい」
その手には、湯気を立てるお皿。
スプーンも見えるな。
「流石に固形物はまだ無理だろう。スープだ」
「面目ない、朝ご飯までいただくとは・・・」
至れり尽くせりすぎて後が怖い。
とんでもない要求とかされんよな?
「気にするな、ここの家主からだ」
・・・?
ジャックさんの家じゃないのここ。
「ほら、がっつくなよ」
疑問を抱えていると、俺の目の前に皿が差し出された。
おお・・・クタクタになった野菜が入っている。
コンソメのいい匂いが食欲をそそるなあ。
「はい、それじゃ・・・いただきます」
鍛治屋敷の娘にナイフを投げられた傷が痛むが、無視してスプーンを持つ。
ゆっくりと啜ったスープは、体の隅々まで染みわたるような美味さだった。
「うっま・・・!うっまぁ・・・!!」
スプーンが止まらない!止める気もない!
こんなうまいスープは久しぶりだ!
斑鳩さんのスープとはまた違う、なにか懐かしい味がする!
・・・ん?
懐かしい・・・?
・・・うん、なんか昔飲んだことがある気がする、このスープ。
どこでだったかなあ?
「はは、美味そうに食べるなイチロー」
タが消えているんですが!?
また俺を最高の安打製造機認定する人がここにも!!
・・・まあいいか。
外人さんには呼びにくい名前だろうし。
「しかし・・・昨日の今日でよくもまあそれだけ食えるものだ。サムライは化け物じみているな」
「んぐ・・・いや、運よく致命傷がなかっただけですよ」
「ナイフ2本が刺さって、肩が外れて、複数の打撲と切り傷に胸骨の骨折までしている人間の言葉とは思えんな」
・・・改めてそう言われると重症だな。
しがみ付いた船が沈まなくってよかったよかった。
「じゃあ、やっぱりジャックさんが俺の肩をはめてくれたんですか?」
「ああ。それに腕と背中の刺し傷の縫合もな」
・・・お医者さんかな?
いや、この格好だとすると衛生兵ってやつか?
明るくなって見てみると、ジャックさんが来ているのは軍用の戦闘服っぽい。
オブライエンさんやライアンさんが着ていたものとよく似ている。
この人も駐留軍の一員だろうか?
「あの、オブライエン少佐ってご存じです?」
「・・・名前だけはな。そちらこそよく知っているものだ」
「ええ、少しご縁がありましてね」
「そうか」
・・・ってことは部下じゃないな。
なんか話したくなさそうだし、今はこれ以上聞くのはよそうか。
一応、恩人だし。
それに・・・なんか嫌われて銃でも付きつけられたら、今の俺では対処は難しい。
立ち居振る舞いから、それなり以上の練度と見た。
良くて相討ち、かな。
「・・・ふぅ、ご馳走様でした」
あっという間にスープは消えた。
腹が満ちると元気も湧いてきた。
さすがにゲームとかではないので、傷は治らないが。
「これだけ綺麗に食べれば、家主も喜ぶだろう」
俺から皿を回収しつつ、ジャックさんは言う。
「足を向けて眠れませんね、本当に。見ず知らずの俺に、こうまでよくしてくれるなんて」
聖人かな?
俺からは逆立ちしても若干しかとれない優しさ成分で満ち溢れていそうだ。
動けるようになったら、せいぜい恩返ししなきゃなあ・・・
「いや、恐らく知り合いだと話していたが・・・」
「へ?」
「親戚だと思うが、血塗れ傷まみれで確証が持てないと言っていたな」
・・・親戚?
おいおい、まさか。
「ジャックちゃん、怪我人さんは起きた?」
入り口から、どこかで聞いたような声がした。
逆光を背にして立ったその姿には、見覚えがあった。
「・・・チイコ姉ちゃん?」
そう声をかけると、その人影はびくりと震えた。
「や、やっぱり・・・」
そう言いつつ、その人はこちらへ走ってきた。
あがが、振動が痛い。
「いっくん!やっぱりいっくんなの!?」
走り込んできたその人・・・チイコ姉ちゃんは、俺の目の前で止まるとゆっくりと手を取った。
いやあ・・・その呼び方、懐かしいなあ。
記憶よりは老けているが、相変わらず元気そうでよかった。
血色はいいし、栄養状態も心配なさそう。
さっきのスープといい、ここは中々恵まれた環境だな。
なるほど、スープの味に覚えがあるはずだ。
あれは・・・死んだ婆ちゃんの家で飲んだスープの味だった。
チイコ姉ちゃんにしっかり受け継がれていたみたいだな。
「ごめんね、ちょっとばかしイケメンになってたからわかんなかったろ?」
おどけて言ったところ、軽いデコピンを喰らう。
ぎぎぎぎ!!振動が拡散して超痛い!!
「もう・・・そうじゃないかなって思ってたけど、傷だらけになっちゃって・・・あんなにかわいかったのに・・・」
・・・俺に可愛い時期ってあったのかな?
「びっくりしたのよ!?散歩してたら海岸に打ち上げられてたんだから!意識は戻らないし!血塗れだし・・・!」
「ああ、うん。色々あってねえ」
やはり、とても一言では説明できない。
「でも、いっくんだってわかったなら問題ないわ!ごめんね、こんな所に寝かせて・・・すぐに家に案内するからね!」
まあ、意識を取り戻すまでは物騒な外見な上に刀まで持ってたしな。
用心しても無理はない。
「・・・チエコさん、私が手伝おう」
「っぎぃい・・・!」
ジャックさんが俺の両脇に手を入れて支え、後ろから持ち上げてくれた。
凄まじい痛みが走る。
・・・って!俺下半身パン一じゃないか!?
「あ、の、ふ、服はぁ?」
「上半身は血塗れ、下半身はずぶ濡れだったんだ。仕方ないだろう」
「せ、せめてズボンを・・・っていうか自分で、歩けます、から!」
流石にこの状態で歩くのは恥ずかしすぎる。
俺にだって恥じらいくらいはあるのだ。
「しかし・・・」
「大丈夫!大丈夫ですから!!」
なんとかそう主張して解放してもらった。
よし、痛いけどまあ何とかなるだろう。
マットレスの横に畳まれていたズボンを履く。
うん、やはりズボンは偉大だ。
格段に落ち着く。
「んぎぎぎ・・・」
その状態で『魂喰』を手に取り、いつものようにベルトに差す。
うん、落ち着く。
「・・・あの、他の武器って」
「拳銃もシュリケンも家で保管している。心配するな」
ジャックさんはそう言うが、ならなんで『魂喰』だけ?
「・・・覚えていないのか?」
「へ?」
なにを?
「そのカタナだけは持っていくことはできなかったんだ。少しでも体から離そうとするとキミが唸るからな」
「えっと・・・それは、ご迷惑を」
「最初は握りしめて全然離さなかったんだぞ。よほど大事なものらしいな」
臨戦態勢のままだったんだろうか。
まあ、大事な借り物だし気にするのは当然か。
「・・・それに」
ジャックさんは声を潜め、俺にだけ聞こえるように耳打ちした。
「(唸るのはキミだけじゃなかったしな。一体何だこのカタナは・・・東洋の神秘を垣間見たぞ)」
「(えっと・・・まあ、色々ありましてね)」
りんりんちりちり鳴っていたんだろうか。
我ながら好かれたものである。
「さあこっちよ?ゆっくりでいいからね?」
姉ちゃんが俺を先導するように、ゆっくり歩きだした。
それを追い、痛む体に鞭を打って歩く。
「あのでっかい家、姉ちゃんの家だったんだね。びっくりしたよ」
「でしょう?私もお嫁に来た時はビックリしちゃったわぁ」
ええとたしか・・・旦那さんは漁師だったよな?
漁師さんって儲かるんだなあ。
何とってんだろ、マグロかな?
「うお、まぶし!」
3日ぶりの陽ざしが目をくらませる。
だが、悪くない。
生きてるって感じ、するからなあ。
「・・・いい筋肉をしている。実戦で鍛えられたものだな」
後ろからジャックさんが何かを言っている。
・・・歩けてるからびっくりしているんだろうか。
家まで歩く途中、その広い庭に大きな犬小屋を見つけた。
でっけえ・・・大型犬用だな。
しかも3つも。
しかし、その住人の姿はない。
「姉ちゃん、これ・・・飼ってる犬のかい?」
「ええそうよ、今は1頭しかいないけどね」
ありゃ?
死んだって話は聞いていないんだが・・・
この騒動で、かな?
「そうなの?」
「ええ、それについても家で話しましょう。私も猛おじさんたちの話を聞きたいし」
ふむ、込み入った事情がありそうだな。
ちなみに猛ってのは俺の親父だ。
名前とは正反対のぽやっとしたおっさんである。
・・・なんで自分が猛なのに、俺は一朗太なんつう時代錯誤の名前になったんだろうな?
おふくろの趣味か?
話すうちに、玄関までたどり着いた。
俺の家とは大違いの、でっかい横開きだ。
うーん、大迫力。
3階まであるっぽいし、実家とはえらい違いであるなあ。
「入って入って。1階のリビングでお話しましょ!ジャックちゃん以外のお客様なんて久しぶり!」
姉ちゃんは大層テンションが高い。
こんな状況だからな、知り合いに会えて嬉しいんだろう。
玄関に入り、サンダルを脱ぐ。
・・・これも履かせてくれてたんだな。
俺のブーツはどこだろう。
「おじゃまします」
そう挨拶して上がろうとしたら、正面にある階段から誰か降りてきた。
「母さん、あーしのTシャツ知らない?ホラ、三毛猫描いてあるやーつ・・・」
ギャルだ。
ギャルがいる。
年のころは由紀子ちゃんくらいか?
髪を金髪に染めた、日焼けした女の子だ。
目つきが若干鋭い・・・っていいうか睨まれてる?
うぐ・・・大木くんの関係者を思い出すな。
ギャルにはトラウマがあるんだよなあ。
「あ、おじさん起きたんだー・・・っていうかすっげえ筋肉じゃん!めちゃあつ!」
「や、やあどうもこんにちは・・・田中野一朗太です」
「名前までいかちー!あ、あーし、朝霞ってんの。よろしくー」
朝霞ちゃんはそう言うと二カッと笑って手を振ってきた。
愛想も元気もいい・・・ギャル子とは大違いだ。
「ねえちゃん、この子は・・・」
「長女の朝霞よ?いっくんには何度か遊んでもらったのよ~、覚えてない?」
んん~?
姉ちゃんが結婚してから、そんなに顔を合わせてないしな・・・
えーと、たぶんこの子は高校生くらいだから・・・遊んだって言うとだいたい10年くらい前か?
俺が高校か大学のころだから・・・
「・・・あ!あれか!リューグーパークに一緒に行ったことあるな?」
「そうそう!懐かしいわねえ」
懐かしいなあ。
えー・・・あの時の『おにーちゃ!おにーちゃ!』って言ってた子かあ!
妹が小さい頃を見ているようで、思う存分甘やかした記憶がある。
「あーしも覚えてるよ、ずうっと肩車してくれたっしょ?」
あー、そんなこともあったなあ。
動物園エリアで。
・・・今はもう跡形もないけどな、あそこ。
動物たちも、もういない。
「立ち話もなんだし、皆でリビングに行きましょ!お茶入れるわ!」
姉ちゃんの一声で、俺達は移動することにした。
・・・正直体が痛すぎるから有難い。
リビングは、綺麗なフローリングの部屋だった。
テレビやテーブルがあって、くつろぎの空間だな。
っていうかテレビでけえ・・・ウチの4倍はあるぞ、おい。
広い空間の奥には、これまた広いシステムキッチンがある。
冷蔵庫まででけえ・・・
棚に入れてある食器も綺麗だし、壁にかけられている時計やなんかも高級品っぽい。
ブルジョワだ・・・ブルジョワだ・・・
「いっくんは体がしんどいでしょう?ソファに座りなさいね」
「ありがとう、悪いね」
「いいのいいの!親戚なんだから当然よ!」
というわけで、俺はテーブルの近くにある1人掛けのソファに腰を下ろした。
っと、刀は抜いておこう。
うっわ、なんちゅう柔らかさ・・・これは人を駄目にするソファだな、絶対。
「いかちー、刀持ってんじゃんおじさん。サムライ?」
「似たようなもんかなあ」
朝霞ちゃんは俺の横に腰かけた。
ジャックさんは、テーブルを挟んで向かいに腰を下ろす。
「焼いたクッキーもあるからね~」
至れり尽くせりである。
恐縮しちゃうなあ。
「ねーねー、それ、見てもいい?」
朝霞ちゃんはその目をキラキラさせて、刀に見入っている。
・・・初めは睨まれてるのかと思ったが、どうやらあの目は普通らしい。
随分と人懐っこいな・・・遊んだ記憶のおかげかな?
「鋭いから気を付けるんだよ」
伸ばした手に刀を渡す。
・・・コイツは女子供には優しい妖刀だから大丈夫だろう。
「ふおー!綺麗ぃ!アガるねこれー!」
よくわからん感想を口にしつつ、朝霞ちゃんは目を輝かせて見入っている。
なんとも、変わった子だな・・・
「どう?今回のは自信作なんだけど」
「美味いよ姉ちゃん、市販品とタメはれるね」
しばらくするとクッキーとお茶を持った姉ちゃんがやってきた。
斑鳩さんのクッキーに勝るとも劣らん美味さだ。
「もう普通に食事ができるのか・・・驚きだな」
ジャックさんはマスクの口の部分を外し、お茶を飲んでいる。
脱ぐ気はないんですね、そのマスク・・・
朝霞ちゃんはまだ刀に夢中だ。
変わった子であるな・・・本当に。
「では、イチロー・・・龍宮の話を聞かせてくれるか?」
「ええ、最初から話すので長くなりますよ?」
「構わんよ、どうせ時間は売るほどあるんだ」




