128話 避暑計画のこと
避暑計画のこと
「うえぇえ・・・」
吐き出した煙が、嫌になるほどの青空へ溶けていく。
本日は晴天なり。
いや、『本日も』晴天なり、だ。
「かなわんなあ・・・」
暑い。
暑すぎる。
まあ、屋上にいるから余計に暑く感じるんだが。
「マジで天気ぶっ壊れてんじゃないのか・・・?」
うう、もう限界だ。
煙草のためとはいえ、このままでは日干しになってしまう。
建物の中に退避しよう。
女子会の日から翌日。
俺は、汗だくで目を覚ました。
室内は熱気に包まれ、いつもなら俺に密着して寝ているはずのサクラは床の隅っこで丸くなっていた。
毛皮まみれのサクラには、この暑さはこたえるだろう。
今も屋上へついてくることもなく、オフィスの影でじっと丸まっている。
梅雨が明けたとはいえ、この暑さはちょっと異常である。
海開きまでまだまだ先だというのに・・・
お陰で煙草を喫うだけで一苦労だ。
「あついねー、おっちゃん」
階段の所でカイトや子供たちが涼んでいた。
「おう、まるで夏だなあ・・・ここら辺は元々涼しいはずなんだけどな」
「ねー、おれこんなに暑いのはじめてかも」
そんなに辛そうではないが、それでも子供。
気の早い夏風邪にでもなったら困る。
俺達大人は我慢もできるが・・・無理をさせて体調でも崩されたらなあ。
どうしたもんか。
「ソラなんかさ、そうこのすみっこからでてこないよ~」
「あー・・・猫はなあ、犬より暑いの苦手かもしれんな」
倉庫ね・・・ここよりいくらかは涼しいだろう。
床はコンクリだし。
「・・・よし、おっちゃんに任しとけ」
「え?」
怪訝そうなカイトたちに手を振り、階段を下りた。
目指すはそう・・・困ったら大木くんハウス!!
「確かに異常気象ですよね、この状況」
「だよなあ。アレか?どっかの国の気象衛星がバグって天候いじってんのか?」
「まさか、そんなのSF映画じゃないですか」
大木くんの家まで来ると、彼は家の周りにある水路にパンツ一丁で沈んでいた。
一瞬水死体かと思ったぜ。
現在は大木くんはそのままに、俺は靴を脱いで水路に足だけ突っ込んでいる。
山水だからか、とても冷たくて気持ちがいい。
「でもどうすっかな、今ある蓄電池の性能でクーラーって動くか?」
「むーん、動きはしますけど一日中はきついですね。太陽光頼りの発電なんで、いかんせん不安定です」
そうか・・・今がコレだと、夏本番になったら死人が出るくらい暑くなりそうだ。
「世界中でゾンビが大暴れして、確実に変化が起きてる証拠でしょうね・・・たぶん」
浮いたり沈んだりしながら大木くんが言っている。
・・・器用だな、おい。
「とりあえず、子供だけでも涼しくしてやらんとな・・・大人に比べて体温調節機能も低いんだし」
「フヘヘ、生きるか死ぬかのゾンビパンデミックにそこまで考えられるなんて、ホントここは恵まれてますねえぼごごごごご」
何らかの調整をミスって沈んでいく大木くん。
「ぷはっ!・・・とりあえず原始的な方法でアプローチしますか」
そう言って、大木くんは水路から上がった。
よく見ればその唇は紫色である。
・・・入りすぎだろ、おい。
「たぶん役場にはあると思うんですよね~・・・ちょいついて来て下さいよ」
「そりゃあいいが・・・パンイチで行くのか?」
俺の言葉に、そのまま歩き出そうとしていた大木くんが動きを止めた。
「フヒヒ・・・」
すぐさま彼は、恥ずかしそうに家へと消えていった。
・・・あれ、気付いてなかったな。
変な所で抜けてるんだよな、大木くん。
「田中ぁ、あづい~」
「ああもう!暑いんなら引っ付いてこないでくださいよ」
大木くんは後で来ると言っていたので高柳運送に帰ってきたところ、門の影で涼んでいた後藤倫先輩が絡みついてきた。
うぐう・・・暑さが余計に辛い。
「なんだと馬鹿ぁ。こんな美少女に引っ付かれてるんだからもう少し喜べ~喜べ~」
「あっつい!鬱陶しい!そして恥じらいを持っていただきたい!!」
「恥じらいはそこらへんの浜で死んだと思う」
「もっかい拾って来なさい!捨てちゃ駄目だからソレ!!」
暑さでパイセンがバグっておられる!!
「わん!わん!」
遊んでいると思ったのか、サクラが足元を駆け回る。
「・・・あっつ!離れて!!」
そして後藤倫先輩は俺から離れるなり再び影に横になった。
理不尽・・・理不尽の化身・・・!!
「だがまあ、どうにかせにゃならんなこれは・・・なあサクラ」
「きゅ~ん」
『あつい!』とでも言うように、サクラはしょぼくれた顔をしている。
「ふうむ。やはりサクラは留守番させた方がいいか・・・お?」
「きゅん!」
抱き上げて独り言を言っていると、サクラが腕から飛び出して社屋へ走って行った。
やっぱ外は暑いかあ。
「みぃい・・・みぃいい・・・」
それと入れ替わるように、ソラが塀の影だけを歩いてきた。
器用だなお前。
「みゃぉ、みゃおおぅ!」
俺の近くへ来るなり、何やら悲痛な鳴き声を上げている。
「お前はうちで一番小さいからなあ。生まれて初めての猛暑?はきつかろう」
「んみみぃ・・・みぅ!」
塀の影に座り込むと、ソラはぴょんと俺の膝に乗ってきた。
「暑いなあ、ソラ」
「みみぃい・・・」
「あづい・・・夏になったら森が燃えそう・・・」
うつ伏せになったまま、後藤倫先輩が何やらもごもご喋っている。
「もうちょっとしたら出てきますよ。なんか大木くんが思いついたらしいんで」
「うぐぅ・・・早くしてぇ・・・」
弱音を吐き放題の先輩である。
「先輩って夏苦手だったんですね」
こんな姿は初めて見るかもしれん。
「夏は暑いから大嫌い。冬は寒いから大嫌い。一年中秋でいい」
「・・・春は?」
「花粉があるから大嫌い・・・」
なんとも生き辛い人であるよ。
よくこれでパンデミック前は働けてたよな。
たしか・・・ええっと、何してたんだっけ?
「そういえば先輩って何の仕事してたんでしたっけ?」
「龍宮でバーテンダー・・・」
え?そうなの?
「あれ?デパートで働いてたんじゃなかったでしたっけ?」
前に聞いた時はそうだって言ってたんだが・・・
正社員だったよな?
「去年の3月まではそう。そこを辞めて知り合いの店に雇ってもらってた・・・」
ほーん、マジか。
大手デパートの正社員なんて、実入りもよかっただろうになんで夜の仕事なんか・・・
「なんで辞めちゃったんです?」
そう聞くと、先輩は顔だけこちらに向けてきた。
うお、顔がコワイ。
「上司のオッサンが後輩を酔い潰してホテルに連れ込もうとしてたから・・・両手の指全部へし折ってやったらなんやかやあって依願退職扱い」
「・・・よく懲戒免職になりませんでしたね」
「オッサンが妻子持ちだったから揉み消しも兼ねてそうなった?感じ」
うへえ、どこの業界にもカスはいるもんだ。
「指じゃなくて金玉破壊してやればよかった・・・」
一瞬で体感温度が下がった。
股間がヒュッてなる。
「田中も気をつけないと駄目」
「気をつけなくてもしないですってばそんなこと・・・『女に襲われることはあっても襲ってはならん』なんて、師匠も言ってましたし」
「先生はよくモテてた・・・繁華街でいっつも違う女の子連れてた」
だろうなあ。
師匠は爺さんの癖に格好良かったからなあ。
和服でも洋服でも、いつでもビシッと着こなしてたし。
「俺もアレくらい格好いい年寄りになりたいもんですねえ」
「田中は・・・あと300年くらい年を取ればいけるんじゃないかな」
それ遠回しに今世では無理って言ってます?
「それにしても先輩がバーテンダーか・・・」
「む。なに?なんか文句でもあるのか田中」
「いや、バーテンの制服って格好いいからよく似合うだろうなって」
先輩シュッとしてて足長いしな。
身長は低いけど。
なんか同性にも人気が出そう。
「むぅ・・・むふふ、そうだろうそうだろう・・・おいでおいで」
「みぃい」
何が気に入ったのか、先輩はソラを手招きして抱っこすると立ち上がった。
「・・・いつか、後藤倫特製カクテルをご馳走してあげるね、田中」
滅多にないことだが、先輩はにっこりと微笑んだ。
「・・・あんまり度数の高くない奴でお願いしますよ。俺酒ぜんっぜん飲めないんで」
「任せるといい。ウォッカ80%で勘弁してやろう」
「即死しそうだからゆるして」
恐ろしいことを言いつつ、先輩は倉庫の方へ歩き去った。
そんな日が来るのはいつになることやら・・・ま、楽しみにはしておこう。
大木くんが来るまではここにいようか。
暑いし。
装備はもう身に着けているしなあ。
「お待たせでーす。あ、サクラちゃんだ」
「わふ!」
「おう・・・連れてっていいかな?」
大木くんがやってくる頃、サクラもほぼ同時に社屋から出てきた。
キラキラした顔で、この前回収した新品のリードを咥えて。
こんな顔をされちゃあ、断るわけにはいかないな。
アスファルトはそこまで熱くないので、犬用靴はいらんだろう。
役場のゾンビは全員成仏させてるし、変な人間もいないし。
「まあ、ゾンビが出ても犬は安全だからいいでしょ。っていうか確実に僕より機動力高いし、サクラちゃん」
「何でか動物には興味ないんだよなゾンビ・・・なんでだろうなあ?」
「さあ?グルメなんじゃないですか?僕も何度も犬猫見てますけど、一回も喰われてるの見たことないですよ」
いっそのこと、ゾンビが草食にでもなってくれればいいんだけどなあ。
そこら辺の雑草食ってたら、この世は平和だろうに。
「よーし、じゃあとっとと行きましょうか!あ、トラック出してもらっていいですか?」
「うえ?徒歩じゃないのか」
「無理です、目的のものが重すぎます。田中野さんなら片方は持てるかもしれませんけど、僕は絶対途中で死ぬんで」
・・・一体何を探しに行くんだろう。
「そんなに重いなら七塚原先輩呼ぶか?」
「うーん、畑仕事の邪魔するほどのことじゃ無いんで、たぶん大丈夫だと思いますね」
ふむ。
まあ、それならいいだろう。
いつもの軽トラではなく、駐車場に鎮座しているトラックに乗り込む。
うおお・・・窓開けとけばよかった。
室内まで暑すぎる・・・しばらく冷やさないとサクラが干し犬になってしまうな。
「田中野さん、探索ですか?」
トラックのドアを開けていると、神崎さんがやってきた。
「ももふ!」
「あら、お散歩?いいわね、サクラちゃん」
未だにリードを咥えたままのサクラが撫でられている。
「ええ、ちょいと役場まで行ってきます。すぐに戻りますから」
「そうですか・・・お気をつけて。いってらっしゃい」
「はい、行ってきます」
近距離なので神崎さんについて来てもらうほどでもなかろう。
今日は暑いんだ。
いつも頑張っている神崎さんには、少しは休憩させてあげないとな。
車内に風が通り、若干涼しくなったのでサクラと大木くんを呼ぶ。
神崎さんに見送られながら、高柳運送を出発した。
ほんの少しだけのドライブを経て、トラックは役場へたどり着いた。
「待たせたなサクラ。行くぞ~」
「わぉん!」
リードを装着し、サクラと降りる。
「目的地は地下の倉庫だよな?」
「ええ、そうですよ~」
大木くんと話しながら、周囲をササっと確認。
・・・うん、気配はない。
新しくここへやってきた人もゾンビもいないようだ。
周囲をフンフン嗅ぐサクラと一緒に、役場へ入る。
彼女は見るものすべてが珍しいようで、周囲の確認に余念がない。
そういえばこうやって一緒に建物の中を歩くのは初めてだな。
ゾンビまみれの世界だが・・・いろんな所へ連れて行ってやりたいものだ。
「おー・・・高柳運送より涼しい~。こっちの方が山に近いからですかねえ?」
大木くんが後ろから言うが、確かにその通りだ。
若干ひんやりとしている。
「ほんとだ、こっちの方が過ごしやすいな。木造だからか?」
「あ、それあるかもしれませんねえ。木の方が夏は涼しく冬は暖かいですし」
なんでもかんでもコンクリにすりゃいいってもんでもないのか。
木造はコストがかかるから大変なんだろうけど。
別に急ぐものでもないので、ゆっくりと歩く。
サクラは久しぶりの散歩に満足している・・・ように見える。
あ、この先階段があるんだった。
どうしよっかな。
「大丈夫かサクラ?」
地下への階段の手まで来ると、サクラはぴたりと止まった。
「きゅ~ん!ひゃん!ひゃおん!!」
そのまま振り向いて、なにやら訴えかけるように鳴いている。
うーむ、これは階段が怖いのか・・・それとも暗いのが怖いのか。
「うし、こっからはおとうちゃん達で行ってくるぞ。サクラはここの見張りを頼む」
「ひゃん!」
通じたのかそうでないのか。
それはわからんが、サクラは行儀よくお座りの姿勢のままじっとしている。
・・・うちのこ賢すぎ。
サクラを残し、大木くんと階段を下りる。
ヘルメットのライトのお陰で視界は大丈夫だが、油断せずに先に立つ。
「お化けでも出そうですねえ・・・暗いし涼しいし」
「やめろ!お化けだけは無理だ・・・殴っても殺せないからな」
「理由が蛮族ですよ田中野さん・・・」
いや待てよ、妖刀補正で『魂喰』ならいけるかな?
くそ、持ってきとくんだった。
大木くんの発言のせいで若干ビビりつつも、何事もなく倉庫へたどり着いた。
ここには前回持ち帰れなかった物資がまだまだある。
ライトで照らされた倉庫内には、手付かずの段ボールが雑然と積まれている。
「んーと・・・これは違う、これも・・・違う・・・あ!あったあった!!」
ぶつぶつ呟きながら室内を物色する大木くんが、何かを見つけたようだ。
「田中野さん!これですよ!これ!」
そう言って指差した先には、巨大な段ボールがあった。
・・・なんだこれ。
「えーとなになに・・・『緊急用防災風呂キット』ぉ・・・?」
通し番号がふってあるいくつもの段ボール群だ。
これが目当てか?
でも風呂はもうあるし・・・あ。
「なるほど、プールか!」
「正解!これに井戸水を入れれば、あっという間にクソデカプールの出来上がりですよ!」
はー、それで原始的な方法がどうとか言ってたのか。
「むき出しで使うんで、本体の他には天幕だけあればいいでしょう。もし風呂として運用するんだったら、その時に改めて他のパーツを取りに来ればいいんですから」
「これなら子供たちがまとめて入れるなあ・・・水着はないけど」
「とりあえずは私服でいいでしょう。今日を乗り越えたらまた探せばいいんですよ・・・食料はともかく、水着なんて誰も見向きしませんしね!」
言われてみればその通りだな。
とにかく、とっとと運び出してしまおうか。
必要な部品だけなら、俺たち2人でも運び出せそうだ。
「おい、大丈夫か」
「僕はもう死ぬかもしれません・・・」
というわけで段ボールを運び出したわけだが・・・大木くんにはオーバーワークだったっぽい。
彼はトラックにもたれ、滝のような汗を流している。
・・・もうちょっと筋肉つけたほうがいいぞ。
「ちょ、ちょいと車内で休憩してます・・・」
「了解。じゃあサクラとここら辺散歩してくるわ」
「わう!!」
『散歩』というワードに反応してテンションの上がるサクラを撫でながら、リードを持つ。
これで帰っちゃサクラには消化不良だろうからな。
30分くらいぶらぶらしようかな。
周囲には何もないが、サクラにとっては散歩そのものが楽しいらしい。
地面を嗅いだり、急に草むらに突っ込んだり。
合間合間に俺を振り返っては、テンションMAXで歩いている。
「ここらは平和になったなあ、サクラよ」
「わう!・・・うぅうう・・・うるるるるぅ・・・!!」
元気よく返事をしたかと思えば、急に姿勢を低くして唸るサクラ。
一体どうした、もうゾンビはいないはずだが・・・
片手で兜割を引き抜こうとして、サクラの視線の先にいるものに気付く。
「おう、昼間っから珍しいな」
それは、民家の影から顔を出した狸であった。
世間一般がイメージするであろうもこもこの姿と違って、夏毛のせいで痩せているように見える。
「サクラ、あれは狸って言うんだ。お前の遠い遠い親戚だぞ」
「わうぅ・・・」
油断なく姿勢を低くしながら、サクラは真剣だ。
当の狸の方は・・・こちらをしばらく見つめた後移動を開始。
野生の欠片すら感じられないのそのそとした動きで、山の方へと消えていった。
「すっかり動物天国になりつつあるなあ、ここ」
この前狐も見たし。
人間の絶対数が減った上に、ゾンビは動物には一切興味がないしな。
地球環境的には今の方がいいのかもしれん。
総人口・・・半分くらいになってそうだ。
ま、落ち着けばまたドバっと増えるんだろうけどさ。
しかし、鹿とか猪なら食えるんだが・・・どうやらこっちにはあまりいないようだ。
モンドのおっちゃんの家の周辺には結構いるらしいけど。
・・・ああ、また肉が食いたい。
敦さんについて行って手伝いでもしようかなあ。
バイト代は肉で。
狸のいなくなった後、しばらく散歩をして帰ることにした。
もう大木くんも回復しているだろうしな。
「おじちゃん・・・おにーちゃん・・・おかえり~・・・サクラちゃんも~・・・」
「あっついよう・・・おじさぁん・・・」
トラックから降りると、璃子ちゃんと葵ちゃんがヨロヨロ近付いてきた。
暑いなら無理せんでもいいのに・・・
「クーラーって偉大なんだねえ・・・文明が恋しいよう・・・」
ボヤく璃子ちゃんの横で、葵ちゃんは寄ってきたサクラを抱っこした。
「かわいいけどあつい・・・あついけどかわいい・・・」
なら抱っこしなければいいのに・・・そこは難しい問題のようだ。
「ね、ね、おじさん。これなーに?」
荷台から大木くんと段ボールを下ろしていると、璃子ちゃんが聞いてきた。
「これは災害用の緊急風呂セットだよ」
「お風呂ぉ?そりゃ、おっきいお風呂は気持ちいいけど・・・でもここにもうお風呂あるよ?」
「風呂は風呂なんだけど・・・これはプールにしようと思ってな」
そう言うと、先程までの曇り顔はどこへやら。
璃子ちゃんの目が輝いた。
「プール!!」
「ぷーる!!!」
おや、葵ちゃんまで。
2人ともプールが大好きなんだなあ。
「田中野さぁん、ちょいと家に戻って取ってくるものがあるんで、開封しといてくれます?」
「おう、なんか忘れ物か?」
「塩素のタブレットですよ。消毒用のね・・・井戸水なんで大丈夫だとは思うんですけど、念のためです」
大木くんの家って何でもあるなあ・・・
「おじさん!私たちも手伝うっ!!」
「わたしもー!!」
「わうっ!わうっ!!」
璃子ちゃんたちの声を聞きながら、俺は段ボールの封を切った。




