127話 男だらけの探索行のこと 後編
男だらけの探索行のこと 後編
「なーんか静かですねえ」
俺の後ろで大木くんがぼそりと呟いた。
「確かに。結構な規模の施設だけど何の気配もないな・・・ないですよね?」
俺達は複合施設・・・『グランデ龍宮』の駐車場を入り口に向かって歩いている。
放置車両と俺達以外、何もない。
「・・・ないのう。車の中にはゾンビが残っとるのも何台かあるが」
さすが七塚原先輩の気配察知だ。
車の中まではとんとわからん。
「ゾンビは頭ゾンビですからね。いないもんと考えていいでしょう」
悲しいかな、車内でゾンビと化したものはドアすら開ける知能がない。
ドアを開けられないということは、外に出れないということだ。
外に出れなければ、食い合って進化?することもできない。
つまり、誰かに成仏させられるまでゾンビは未来永劫そのままなのだ。
腐らないし。
「嫌だなあそんな人生・・・もといゾンビ生。田中野さん、僕が噛まれたら即患部を斬ってくださいね・・・首なら諦めてしめやかに切腹します」
「おう任せろ、そんときゃ皮一枚残して抱え首にしてやるから」
「首切りイチ衛門だぁ・・・」
そんな内臓で薬を作ってそうな名前で呼ばないでいただきたい。
神崎さんがいたら死ぬほど怒られる類のジョークだが、男しかいないので言いたい放題である。
うーん、気楽。
華だけがない。
「・・・む」
先頭を行く先輩が、声を漏らして歩みを止めた。
それに従って前方を見る。
「・・・いますね、人間」
「敵意は、なさそうじゃがな」
「うわめんどい、死体の方が楽でいいですねえ」
だだっ広くて車がまばらな駐車場を歩くのは、さぞ目立ったんだろう。
施設の全面・・・大きなガラス戸の向こうに、こちらを見る人間の影がいくつも見えた。
「入り口、補強されてますねえ。結構な人数がいそうですけど、どうします?」
1階部分・・・たしかにスーパーマーケットの入り口は、内側から補強されている。
その横のガラスの部分も、本棚やテーブルをぴったり立てかけてあるようだ。
「とりあえず話だけでもしてみるか。駄目なら撤退、別の場所を探そう」
「話の通じる人たちだといいなあ・・・」
大木くんのボヤキを聞きながら、俺達は再び歩き始めた。
さて、どうだろうか。
「止まれ!!」
ある程度近付くと、入り口から4人の人間が出てきた。
全員がプロテクターとヘルメットを身に着けている。
俺達に声をかけてきたのは、その中の1人だ。
「ここへ何をしに来た!!」
金属バットを握るその男は、そう俺達へ怒鳴ってきた。
結構若い声だな。
大学生くらい・・・か?
大学生に全くいい思い出がないので、少し嫌な気分になる。
先輩が、振り返って俺を見る。
あ、これ『任せた』って目だな。
後ろを振り返ると、大木くんがいい笑顔でサムズアップ。
・・・はいはい、俺が対応しますよ。
「物資の調達に来た!釣り具と子供用のオモチャ、それにペット用品と書籍類だ!食料はいらない!!」
食い物は潤沢にあるから、別にここで調達する必要はない。
もしこれでも断られたら、別の場所に行くだけだ。
ざっと4人と、その後ろを見る。
中にいる人間も武装しているが、銃器の類は見えない・・・いや、弓持ちが何人かいるな。
「(大木くん、もし弓持ちが動いたら俺か先輩の影へ入れ。あの程度なら防げる)」
「(・・・ヒェ~、南雲流こっわぁ・・・ラジャラジャ)」
一方向から飛んでくる矢なら別になんてことはない。
とんでもない数がいれば別だが、見えている範囲の数ならいけるしな。
4人は俺の返事が予想外だったのか、一瞬固まった後何やら相談をしている。
そりゃなあ、この状況下でそんなもの何の役にも立たないし。
俺達が特殊なだけだな。
「・・・本当に、それだけが目的なのか!?」
しばらくすると、先程の男が聞いてきた。
「ああ!駄目なら別の場所に行くだけだ!無理やり押し通る気はない!!」
偽りのない気持ちだ。
ひっ迫していない物資のために、わざわざ戦いを起こすほど暇じゃない。
ここで駄目なら、いくらでも他があるのだ。
地方都市とはいえ腐っても県庁所在地、店はいくらでもある。
ここを選んだのも、複合施設で手間が省けるっているだけだしな。
個人経営の店ならそれこそ膨大な数があるのだ。
「・・・監視をつけてもいいか!?」
お、入れてくれるっぽいな。
「問題ない!物資を調達したらすぐに出て行く!!」
そう叫び返すと、4人は再び相談に戻った。
むーん、いいか悪いか早くしてくんないかなあ。
ここに執着するつもりはないぞ。
・・・現在最も警戒すべきは遠距離攻撃。
後ろの弓持ちたちは、矢をつがえてすらいない。
・・・ありがたいけどさ、いくらなんでも気を抜き過ぎじゃないのか?
俺達が今ダッシュしたらどうするんだよ。
ここ、今に至るまで結構平和だったのかもしれんな。
もういないけど『みらいの家』とかに見つかってたら全滅だぞ。
「(入れそうじゃのう)」
「(ま、ここで済むならそれに越したことはないですからね)」
「(だまして悪いがされたら吹き飛ばせばいいですし)」
・・・それができるのは大木くんだけだと思うが。
「・・・わかった!さっき言った物資は持って行っていい!だが重ねて言うが食料は渡せないぞ!!」
「大丈夫だ!食い物に不自由はしていない!!」
お許しの言葉にまた返す。
・・・言い過ぎたかな?
あまりこちらの情報をオープンにするのもヤバいか。
少しフェイク情報を考えておこう。
ヘルメットのシールドは下ろしているし、表情から読み取るのは難しいはずだ。
「よし!入場してもいいぞ!!」
「感謝する!!」
大きく手招きしてきたので、また歩き出す。
「(いつでも抜けるように準備しとれよ)」
「(当然。敵対を確認した瞬間にぶち殺しますよ)」
「(僕はいつでも逃げる準備はできてます)」
大木くんの後ろ向きさが清々しい。
まあ、俺達と一緒に最前線で戦われても困るけども。
入り口をくぐって店内に入る。
さっき正面にいた4人が、そのまま俺たちの監視役になるようだ。
一定の距離を保ちつつ、等間隔で俺たちを囲っている。
・・・武器も没収せんのか。
ここ、大丈夫か?
まあ渡せと言われたらUターンして帰るだけだからいいけど。
「真っ直ぐ行けばアウトドアショップだ。そこに釣り具はある」
「ありがとう」
案内までしてくれるのか。
・・・いや、余計な所まで行かないようにルートを限定しているんだな。
別にいいけど。
入って左側がスーパーのエリアだな、確か。
あっちには近付かないようにしないと。
あらぬ誤解を受けたら面倒臭い。
「じゃあ行きましょっか・・・あ、カートを使っても?」
「好きにしろ」
運搬カートの使用許可まで出た。
至れり尽くせり、だな。
とりあえず釣り具はカートで・・・本やオモチャはリュックサックで持ち運ぶか。
・・・結構人がいるな。
普通に歩きながら、目線だけで周囲を確認する。
ふむ・・・この施設の規模からすれば少数だが、それでもざっと50人くらいはいるな。
内訳はほとんどが若い男女だ。
ご老人や子供も多少いるが、さほど多くはない。
見慣れぬ侵入者である俺たちを、あるものは興味深そうに、あるものは疎ましそうに見てくる。
やはり気になるのか、主な視線の先は俺の日本刀や先輩の八尺棒だ。
そんな視線を受け流しながら歩き、お目当てのアウトドアショップが見えてきた。
「おーでっかいっすねぇ・・・来たことなかったけど立派だあ」
大木くんがこぼす。
確かにデカい。
売り場面積も大きく、扱っている商品は多岐にわたっている。
登山靴なんてのもあるな。
釣り具は・・・あの奥か。
「よっしゃ、それじゃとっとと集めますか」
「そっすねー」
「おう」
俺達は売り場に入るなり、行動を開始した。
「先輩、竿お願いしますね。俺はルアーと仕掛け関係を彼と一緒に集めます」
「おう、数はどがいじゃ?あと子供用の竿でええかいのう?」
「うーん・・・入門用は結構壊れやすいものもあるしなあ。よし、10本は子供用のいい奴を、加えて、大人用の奴を5本くらいで・・・両方リールが付けられるヤツをお願いしまーす」
そう言うと、先輩は軽く手を上げて竿売り場へ。
渓流用は難易度が高いからな、それに川魚は喰えるやつも少ない。
やはり釣りに行くなら海だ。
もしくはモンド亭近くの溜池。
ブラックバスは少々泥臭いがスズキ科なので食えるしデカい。
俺と大木くんは仕掛け売り場へ向かった。
「ルアーって何系にしときます?」
「むーん・・・主に海用だからな。小型のワーム系とスプーン、それにトップウォーター系を頼む・・・って、わかる?」
「大丈夫です!この生活始めてから本だけはめっちゃ読んでるんで!」
頼もしい返事が返ってきた。
ちなみにトップウォーターってのは読んで字のごとく、水面に浮かぶ系のルアーのことだ。
深く沈むシンキング系ってのもいいんだが、子供が使うとなると根ががりするかもしれんからな。
それに、何匹か釣れればそれをばらして餌釣りに切り替えるので、そんなにこだわらない。
大木くんは素早くルアー売り場に進んでいった。
よし、俺は彼が見える範囲でテグスやらなんやらを探すかね。
「・・・おい」
と、俺の後ろにいる監視役が声をかけてきた。
「はい、なんでしょう」
「そんなに釣れるのか、魚」
ほう、気になるらしい。
言葉遣いが気に入らんが、ここで騒いでも仕方がない。
リーマン時代のスキルを活用して平和的にいくとするか。
「ええ、世界がこうなってから釣りをする人間が減ったんでしょうねえ。もう入れ食い状態ですよ~、海は川と違って一年中魚がとれますからねえ」
「そ、そうなのか!」
「海釣りは簡単ですからねえ。干物なんかも作れば日持ちしますよ~」
話しながら作業する。
意外と素直だな、コイツ。
えーと浮きは・・・こっちか。
俺は別にいらんが、子供たちにはこっちの方が分かりやすいからな。
ほぼ手付かずの状態なので、無茶苦茶ある。
ありがたくいただいて行こう。
カゴに手早くドサドサ入れていく。
全体からすれば微々たる量だ、問題あるまいよ。
「ヤマダさーん、オッケーです~」
空気を読んで大木くんが偽名で呼びかけてきた。
「おうダテくん、こっちも・・・完了だ。先輩のとこに行こうか」
大木くんが『安直な・・・』みたいな顔をしている、気がする。
いいじゃん下の名前が政宗なんだから!
とっさにそれしか思いつかなかったの!!
監視2人を引きつれ、先輩と合流。
「これでええか?」
先輩がカートに積んだ釣竿を見せてくる。
・・・うん、問題ない。
っていうか大分高級品ばかりだ。
どうせこの状況だから100%オフだけど。
普段なら絶対に買わないようないいやつばっかりだ。
役得、役得。
監視役を振り返る。
「これでOKです。後はおもちゃ屋と本屋なんかを見せていただいても?」
「・・・ああ、こっちだ」
俺達が本当に食料に興味がないとわかったのか、毒気を抜かれた様子の監視役たち。
顎をしゃくって、行先を示してくる。
さて、とっとと回収して帰るとするかなあ。
「じゃあ先輩は・・・あの子たちが喜びそうな本を探してください。俺たちはおもちゃとペットショップを」
「おう」
誘導に従ってやってくると、ペットショップとおもちゃ屋は隣接していた。
どうやらここではペット単体は売っていなかったらしい。
本屋は、そこから通路を挟んだ向かいにある。
・・・俺用の漫画とかも回収したいところであるが、ここは我慢だ。
帰りながら無人の本屋でも探した方がいいだろう。
「んじゃ、僕はオモチャを探しますね・・・どんな感じがいいですかねえ?」
「保育園の子たち用には知育玩具みたいなのがあればいいんじゃないか?後は・・・電池を使わずに遊べるものがいいな、とりあえずは」
乾電池も行く先々で回収してはいるが、オモチャ程度なら使わないもののほうがいいだろう。
何があるかわからんし。
ゲーム機も調達してもいいが・・・いや、やめておこう。
要望があれば考えるか。
「あー、あと外遊び用は結構足りてるから・・・雨が降った時に遊べるものの方がいいだろうな」
「ぬぬぬ・・・ひらめきました!バッチリのものがありますよ!!」
大木くんは目を輝かせながらおもちゃ屋ゾーンに飛び込んでいった。
あ、俺用のプラモ頼むの忘れた・・・ま、いいか。
別の場所で探そう。
監視役を引きつれ、ペットショップへ。
さてと、何を探すかな。
「おい、缶詰は駄目だぞ」
「ええ、わかりました」
・・・食う気なのかな?
いや、食料として持っていくのかと思っているのだろう。
まだサクラのご飯を横取りするほど落ちぶれちゃあいないぞ、俺は。
「・・・なあ、犬も飼ってるのか?こんな状況で?」
「家族ですからねえ。それに、犬も役に立ってくれていますよ」
役に立つから飼ってるってわけじゃないんだが・・・別に説明する義理もないしなあ。
えーと、じゃあ犬猫用のドライフードを探すかな。
「・・・これは大丈夫ですか?」
「ああ、食えたもんじゃないからな」
一応パッケージを見せてお伺いを立てる。
そう言うってことは、食ったことあるんだな。
俺も試したが、味がない以外は普通に食えるぞ。
ま、ここで言う気はないが。
サクラとソラ用の食料を回収し、リードやオモチャも適当に持って帰ることにする。
これはそんなに数は必要じゃないから、ささやかなものだ。
ペットフードもまだまだ在庫はあるし。
長持ちするから持って帰るだけだ。
「ヤマダさーん!どうですかこれ!」
大木くんが何かを両手に抱えながら戻ってきた。
あれは・・・そうか!ブロックか!!
俺も小学生の頃は夢中でやりまくった記憶がある!
「大きさも大小ありますし、種類もいっぱい!知育にもなるし大人も無限に遊べますよ!」
「でかした!キミって天才!!」
見た所、なんでも作れるパーツだけが大量に入ったセットのようだ。
バケツのようなデカい容器・・・あれならそれこそ恐竜から宇宙戦艦まで作れそうだな。
雨の時もいつでも遊べる!
・・・サクラが食べちゃわないようにだけ注意しておこうかな、結構小さいパーツもあるし。
喜ぶ俺たちを、監視役の面々が呆れたように見つめているのがわかる。
いや、だから本当に食料には困ってないんだってば。
「おーい、これくらいでええかのう」
と、先輩も帰ってきたようだ。
両手いっぱいに本や図鑑を抱えている。
おお、あれは○○のふしぎシリーズじゃないか!
いつの時代も子供たちに大人気だ。
今の図鑑はカラー写真もふんだんに使われているし、大人が読んでも面白い!
小さい子用に絵本まで持ってくるとは・・・流石先輩。
「いいですねえ!奥さんが喜んで読み聞かせしてくれますよ」
「はっは、そうじゃのう」
一応の用心で、固有名詞は出さないことにする。
「・・・こんなもんかな。ありがとうございます!私たちはこれで十分ですよ」
「あ、ああ・・・わかった」
正直まだまだ持って帰りたいものもここにはいっぱいあるが、わざわざお伺いを立てて持ち帰るほどではない。
さっきも考えたが、無人の施設なんて山ほどあるんだ。
そこから調達すればいい。
それに、いつこいつらの気が変わるかわからんからな。
友好的な状態の時に、とっとと撤退するのが吉だろう。
それぞれにカートを担当し、入り口の方まで戻る。
監視役は見るからに警戒を解いているようで・・・先程までの緊張感も薄れつつある。
おいおい、大丈夫かよここ・・・もっと警戒しろってば。
ま、この状態はこっちにとって都合がいいからアドバイスする気はないんだがな。
見ず知らずの他人を気遣う余裕は今の所在庫切れだ。
誰彼構わず救えるほど、俺の手はワールドワイドではないのだ。
闇討ちされることもなく、入り口まで帰ってきた。
「わしが見とるけぇ、車取ってこいや」
先輩がそう言ってくれたので、俺と大木くんは駐車場へ進む。
あの人が番人をしてくれるんなら安心だな。
黒ゾンビの群れが来ても何とかなりそう。
「襲われなくてよかったですねえ」
「ああ、無駄な人死にを出さずに済んだからな」
「こっちが死ぬかもって考えはないんですね・・・うん、ないや」
大木くんと歩きながら話す。
彼我の戦力差が違い過ぎるからな。
これは慢心ではなく、純然たる事実だ。
それぞれ車に乗り込み、入り口まで走る。
先輩を遠巻きに監視している一団が、大木くん特製バイクを見てざわついている。
うん、インパクトすげえよなこれ。
「荷物は全部軽トラに積みましょうか、余裕あるし」
「おう」
「じゃあこっちは空けときますね」
監視の視線を受け流しつつ、せっせと荷物を積んでいく。
『気が変わった!返せ!』とか言われても困るからな。
なるべく迅速に行動せねば。
男3人の流れ作業で、あっという間に荷物は荷台に消えた。
「それじゃ、お邪魔しました。助かりましたよ」
運転席から顔を出し、監視役に礼を言う。
「あ、ああ・・・あんたらはどこから来たんだ?」
え?それ今聞く?
「俺達ですか?龍宮の聖鱗地区です・・・それじゃ!」
『みらいの家』元本拠地辺りを適当に言い、アクセルを踏み込んだ。
何か言いたげな監視役が、バックミラーからどんどん小さくなっていく。
「・・・あっこは、遠からず全滅しそうじゃのう」
助手席の先輩が、ぼそりと呟いた。
「ええ、あまりにも危機感が足りなすぎますからね。言うことを聞くふりでもして内部に入って・・・銃で暴れられでもしたら即壊滅でしょう」
後ろについてくる大木くんのバイクを横目で確認しながら、俺は煙草を咥えた。
「おじちゃんたち、おかえり~」
「わう!わん!!」
特に何もなく、高柳運送まで帰ってきた。
帰りに無人コンビニでお菓子と煙草を調達したくらいだからな、暗くなる前に帰れてよかった。
「おう、ただいま。無茶苦茶お土産持って帰ってきたぞ」
正門を抜けるとすぐに駆けてきた葵ちゃんとサクラの頭を撫でる。
「わーい!なにかななにかな?ねえサクラちゃん」
「わふ!わふん!」
「ふふーん、じゃーん!」
荷台から荷物を下ろしてやる。
「わー!いっぱい!」
「わふ!スンスンスンスン・・・」
サクラは新しいリードに興味津々のようだ。
これが散歩に使う道具だってよくわかってるんだろうな。
「あ、葵ちゃん・・・女子会は楽しかったかい?」
「うん!みんなでね~、あの・・・あう、駄目!」
ブロックの入れ物を運ぼうとした葵ちゃんに聞くと、顔を曇らせた。
駄目って何?
「ごめんねおじちゃん・・・しゃべったら綾おねーちゃんがおじちゃんをハンバーグにしちゃうんだって、だからナイショ~」
・・・なんで俺!?
「そ、そうかあ・・・うん、こっちこそゴメンね。さ、さあて!荷物を運ぼうか!!」
「うん!」
触らぬ後藤倫に祟りなし、だ。
俺は何も聞かなかったことにして、黙々と作業を開始した。
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「・・・僕、今ので大体の内容が察せられたんですけど」
「わしもじゃ」
「田中野さんの鈍さっていうか・・・ううん、あの察しの悪さってなんなんですかね?トラウマか何かあるんです?恋愛に」
「・・・まあ、あるのう。こればっかりは時間が解決するのを待つしかなさそうじゃな」
「・・・別にこんな状況だから、ああいう人は何人でも嫁さん娶ってもいいんじゃないですか?」
「さてのう・・・アイツ次第、じゃな」
「ですねえ」
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何やら先輩たちがしんみり話し込んでいる。
「こら!ちょっとは手伝ってくださいよ!!」
まったく、俺が一番働きたくないというのに!!




