121話 減るに減らない害虫のこと
減るに減らない害虫のこと
「サクラちゃんかわいいね~おりこうだね~?」
「わん!」
「見て見てこの毛並み!つやっつやだよ~いい手触り~」
「きゅん!」
「あ、それ飼い主の田中野さんに聞いたんだけどさ・・・サクラちゃん、毎日お風呂に入ってるんだって!」
「わふ」
「ま、毎日ぃ!?いいなあ~いいなあ~サクラちゃ~ん!」
「ひゃん!」
謎めいた式部陸士長と別れ、何故か大変にご機嫌斜め・・・というか1人百面相をしている神崎さんを連れて、俺は駐車場に帰ってきた。
マジで神崎さんどうした・・・?式部さんが山田(推測)に似ていたから嫌な記憶でも蘇ったのか?
まあそんなこんなで戻って来てみると、我が愛犬サクラが4人の女の子に囲まれていたわけだ。
高山さんと・・・ええと、璃子ちゃんの友達だな。
たしかえなちゃんとよっちゃんときーちゃん?だったか。
「わふ!わおん!」
俺を見つけたサクラが、高山さんの足の間をくぐってこちらへ駆けてくる。
おお、はやいはやい。
「ただいまサクラ。いい子にしてたか?おねえちゃんたちに可愛がってもらえてよかったなあ」
そう声をかけながらしゃがむと、サクラは俺の膝を器用に使ってジャンプ。
「わん!」
「うべっ!?」
体ごとミサイルのように突進してきた。
おごご・・・結構痛い。
「高山さんたち、ありがとうね」
首筋を舐めたり甘噛みするサクラを抱っこしながら、先程まで面倒を見てくれていた4人に言う。
こしょばい。
「いいえっ!ボクたちも楽しかったですから!ねーみんな?」
「「「はぁいっ」」」
元気いっぱいにいいお返事が返ってきた。
うむうむ、子供は元気が一番。
「そう言ってもらえてよかったよ・・・みんなちょっとこっちにおいで」
サクラを地面に下ろしつつ、4人を軽トラの影に誘導する。
周囲の人間の目がないことを確認したうえで、車のドアを開けて座席の後ろからあるものを取り出した。
「はいこれ。まだ賞味期限は大丈夫だからね・・・バイト代をどうぞ」
そう言って、袋に入ったチョコバーを見せた。
「そっ・・・そんな!悪いですよォ!?」
高山さんはそう言うが、目はチョコバーに釘付けである。
わかりやすい。
避難所生活では甘味までは手が回らんだろう・・・不憫である。
「遠慮しないの。俺は外でいっくらでも探せるからね。どうぞどうぞどうぞ~」
「わわわわ・・・あっ、ありがとうございますっ!」
というわけで少々強引に押し付けた。
「ただ、誰もいない所でこっそり食べるか・・・ああ、石平先生ってお医者さんに言って保健室を使わせてもらってもいいかな?」
あそこでは前に保護してもらった子供たちもお菓子を食ってるだろうしな。
残念ながら避難所全員に行き渡るような量ではないからな。
小さな不公平が不和を生むのだ・・・ま、ここは古保利さんの『監視』の目が行き届いているようだからそこまで心配ではないが。
「甘い物、久しぶりですっ!おじさんありがとう!」
中学生3人も口々にお礼を言ってくれる。
気にしないでいいのにぃ。
「ははは、どういたしましt」
―――りぃん
・・・なんだ急に。
腰のあたりから幻聴が聞こえたぞ。
慌てて周囲を見渡すと・・・正門のあたりが騒がしい。
こちら側では、駐留軍と自衛隊が物々しい雰囲気だ。
向こう側は・・・うーん、よく見えないが20人くらいの人だかりがあるな。
いつものように、中に入れろっていう連中だろうか。
「あれは・・・」
俺の様子から気付いた神崎さんが、険しい顔をして拳銃を収めたホルスターに手をやっている。
「高山さん、それに3人とも・・・サクラを―――」
と、俺が言いかけたまさにその時。
轟音と共に、正門が吹き飛んだ。
一拍遅れて、体に衝撃波が襲い掛かってくる。
「きゃああっ!?」「うわっ!?」「なっなに!?なにぃ!?」
「―――サクラ!!」
悲鳴を上げる4人をよそに、サクラを呼ぶ。
彼女は耳をペタリと伏せたまま、怯えたように俺の方へ走ってきた。
「よーしよし・・・」
震えるサクラを撫でつつ、正門からは目を外さない。
爆発の噴煙によってよくは見えないが、立派な正門が片方吹き飛んでこちら側に倒れているのだけは見えた。
さっきまで警護していた各陣営の皆さんは、地面に倒れている。
くっそ!こんな時に!!
「高山さん!サクラを頼むぞ・・・!神崎さん!この4人を!!」
パニックを起こしかけている高山さんにサクラを押し付け、神崎さんに声をかける。
「はいっ!お気をつけて!私もすぐに援護に回りますから!!」
頼もしい神崎さんの声を聞きつつ、『魂喰』を抜刀。
陽の光を反射する刀身は、来る戦いに備えるように妖しく輝いていた。
「おっ、おじ、おじさ・・・」
「こっちよ!4人とも、早く校内へ!!」
神崎さんたちが校内へ行くのとは反対に、俺は爆心地へ向けて足を踏み出す。
ここの守備隊にお任せしたいが・・・今じゃない!
どっちみちあそこが片付かんと高柳運送には帰れないんだ!
援軍が来るまで、外敵を中に入れるわけにはいかん!
「南雲流・・・田中野一朗太、参る!」
小さく呟き、地面を蹴って走り出した。
地面に倒れている隊員さんたちを見ながら走る。
爆風で吹き飛ばされたのか、口から血を吐いてピクリとも動かない。
生死はわからんが、軽い状態ではないだろう。
以前の友愛襲撃に使われた爆弾より、威力が高いようだ。
軽トラで出る前でよかった・・・
「行け行け行け!」
前方・・・門の向こう側から声がする。
あっちは無事か、当たり前だが。
「すっげえ威力!サイキョーじゃん!!」
「あのオッサンがくれた爆弾スゲーな!!」
高々門を吹き飛ばしたくらいで余裕しゃくしゃく、といった声が聞こえてくる。
オッサンがくれた・・・か。
また鍛治屋敷の差し金か!!
あの野郎マジで余計なことしかしやがらねえな!!
「学校に入っちまえばこっちのもん・・・あ!?」
噴煙を出てきた先頭の、明らかに馬鹿そうな若い男が俺を見て目を見開く。
武器は・・・マチェットか!
狼狽えている間に死んでもらう!!
「しぃいい・・・あああっ!!!」
一足で踏み込みつつ、上段から刀を振り下ろす。
―――ひゅお
涼やかな風鳴りとは裏腹に、切っ先が獰猛に首筋を喰い破りながら通過する。
「ぎゃっあ!?」
振り切ると同時に、肩から思い切り体当たり。
弛緩した体が、後方に向けて吹き飛んだ。
「うえあ!?なっ!?マサキ!?」
すぐ後ろにいた男が、仲間の成れの果てを見て足を止める。
貰ったァ!!
「しゃあっ!!!」
「ぉぎゅ!?」
鋭く突き出した切っ先が、そいつの喉を正確に貫いた。
「まだ生きてるやつがいる!!」「構うこたねえやっちまえ!!」
喉から血の尾を引いて男が倒れると同時くらいに、晴れつつある煙の向こうから威勢のいい声がする。
よし・・・ここで迎え撃つ!
ここを通りたきゃ俺を倒してからにするんだなあ!ってところか?
「どけえええええっ!!」
正門は斜めに倒れているので、一度に通れるのはせいぜい3人くらいか?
それくらいなら俺1人でもなんとかなる。
一方向から攻めてくる相手ならな!
それに・・・
「いぎゅう!?」
棒手裏剣が、新手の土手っ腹に深々と突き刺さった。
馬鹿正直に接近戦で相手をしてやるつもりもない!
精々後続の奴らの邪魔になるように・・・半矢にしてやるぜ!
「んのおおおおおおおおおっ!!!」
手裏剣に苦しむ男を押しのけ、斧を持った男が走り出てきた。
おいおい、仲間のことを少しは気にしてやれ。
「邪魔すんなああああああああっ!!!!」
大きく振り上げた斧を振り下ろそうとしてくる。
「するに決まってんだろぉ・・・があああっ!!!!!!!!」
それが振り下ろされるよりも早く踏み込みつつ、腹を真一文字に斬り払う。
「ぎゃがあああ!!!ああああ!!!!!ああああああっ!!!!!」
すうっと切れたTシャツに赤い線が浮かび、腹圧で内臓が飛び出る。
飛び出たそれらを押さえようとした男が、後ろから突き飛ばされて地面に倒れる。
「邪魔だどけ!!」
新手は大振りなナイフをデッキブラシっぽい柄に結び付け、簡易的な槍のようにしている。
足元を踏み、後方に跳躍して距離を稼ぐ。
「死にたくなけりゃそこをどけ!!」
「死にたくなけりゃとっとと尻尾を巻いて帰るんだなぁ!!」
こいつらを校内に入れるわけにはいかん!
人質でも取られたら大変だ。
「ううおおおおおっ!!」
槍男は走りながら大きく右方向に槍を振った。
馬鹿か!?この間合いで突かないなんて・・・槍の腕は素人だな!
「ふうっ!!」
勢いをつけて俺に向かう槍の柄を払うように刀を振る。
まるで草でも刈るような手応えで、柄はすっぱりと切れた。
「えっ・・・ひぎゃ!?」
目を丸くする男の、がら空きの頭を反転させた刃で斬りつける。
頬から侵入した切っ先が、男の顔を斜めに横断した。
血振りをしつつ、新手に備える。
瞬く間に仲間を失った後続集団は、たたらを踏んで止まった。
よしよし、それでいい。
時間がかせげりゃいいんだ!
もうそろそろ援軍も来るはずだろうしな!
「おい!止まるな!!1人相手に何してんだよ!!行けってば!!このままじゃ―――がああっ!?あっ!!あぎいいいいいいい!?!?」
後ろから顔を出してがなり立てる男の右目に、十字手裏剣が突き刺さった。
おい、俺の手裏剣じゃないぞ。
「あああ・・・せっかくいただいたのに勿体ないであります・・・」
先程聞いたばかりの声がする。
「どうも田中野さん、さっきぶりでありますなあ」
俺の斜め後ろから、式部さんの声がした。
接近する気配が直前まで読めなかった。
俺の周囲、隠密能力高すぎ問題。
「・・・あんなもんでよけりゃまたあげますから」
「ふふぅふ、それは重畳であります!・・・さて撃ちます」
それに続き、銃声が何度も響く。
拳銃の軽い銃声が聞こえる度、男たちが1人また1人と倒れていく。
正確に、頭部ばかりを撃ち抜かれて。
・・・俺の拳銃の腕とは天と地だ。
この人も絶対ただの隊員じゃないだろ。
まあ、あの古保利さんの部下だしな。
「後続が来ました、お疲れ様であります。初動がお早い・・・自分は感激でありますよ!」
後方から足音がいくつも聞こえる。
流石に行動が早いな。
「シールド、正門へ展開!」「3番隊は負傷者の救護に当たれ!」「この場で応急処置するぞぉ!早くしろ!!」
俺の横を、いつか見たごついシールドを担いだ隊員たちが何人も走り抜けていく。
・・・あんなもん担いでよくそれだけ走れるもんだな、ほんと。
「うわあ!!やめてくれえ!!」「畜生!!なんで俺達だけ!!」「おい逃げるぞ!!逃げろ!!」
あっという間にシールド隊は敵集団と接触。
盾を打撃武器のように使って相手をボッコボコに殴り倒している。
容赦ねえ・・・ま、俺もそうなんだがな。
「思ったより行動が早かった・・・これは予想外であります」
俺の横に進み出た式部さんが、ぼそりと呟いた。
「・・・今回の襲撃、予兆があったってことですか?」
「で、あります。避難民の中に少々怪しい連中がおりまして・・・外部と連絡を取り合っていたようでありますなあ」
マジか。
そりゃ監視役も必要になるよなあ。
「避難民として入って・・・後から乗っ取ろうって魂胆だったんですかね」
「恐らく。はぁ・・・ゾンビだけでお腹いっぱいなのに、これ以上の面倒ごとは御免であります」
ウンザリしたように溜息をつく式部さん。
あ、ってことは・・・
「あの、じゃあ連絡役の避難民って・・・」
どうしたんですかね、と言いかけたその時。
「通して!!そこを通してよっ!!!!」
と、女の声が聞こえてきた。
「下がってください!危険です!!」「こちらには来ないで!!」
「いやっ!!離して!!!」
なにやら後ろの方でもみ合っているようだ。
見ると、20代くらいの若い女が自衛隊員と押し問答している。
あー・・・あれが連絡役かな?
「通していいでありますよー。彼女が『S』でありますから」
式部さんがそう言うと、女を押しとどめていた隊員たちが一斉に冷たい目になって道を開けた。
いや、冷たいどころじゃないな・・・極寒である。
そりゃそうだ、そいつのせいで仲間が爆弾に吹き飛ばされてんだからな。
「タケオ!タケオーッ!!!」
髪を振り乱しながら女は走り、俺達の前に出た。
「タケオ!どこ!どこなの!?」
俺や式部さんがコテンパンにのした襲撃犯の前にしゃがみ、必死で誰かを探しているようだ。
「恋は盲目・・・でありますなあ。面倒なので一生盲目でいてほしいであります」
いつぞやの神崎さんのようなことを言いながら、ジト目で女を睨む式部さん。
「タケオ!?ああっ・・・ひどい!!」
どうやらお目当ての男を見つけたようだ。
げ、俺が棒手裏剣を腹に当てた奴じゃないか・・・まだ息がある。
面倒くさいなあ。
「うぐう・・・ミキ、いってえ・・・いてえよ・・・」
ちなみにそいつの腹に刺さっている棒手裏剣は『返し』付きなので容易には抜けない。
ノーマル棒手裏剣なら急所に当たらない限り致命傷にはならんが、こいつは特別製だ。
外科手術でもしなけりゃ遠からず死ぬだろう。
距離も近かったからかなり深く刺さってるだろうしな。
「だ、大丈夫よタケオ・・・ここにはお医者さんがいるから!ねえ!誰か手を貸して!!」
・・・は?
何言ってるの?
「いやいやいや、正気でありますか?」
あ、式部さんが俺の代わりにツッコんでくれた。
「田中野さん!お待たせしま・・・ああああ・・・」
神崎さんが走ってきたが、もう戦いが終わっているのを見てひどくがっかりしている。
・・・ドンマイ。
「お疲れ様です神崎さん。今ちょっと面倒なことになってて・・・」
俺が説明しようとすると、先程の女が怒鳴る。
「なにしてんのよ!タケオが死にそうなの!!早く担架でもなんでも持ってきて!!」
・・・頭痛くなってきた。
「何故、避難所を襲撃してきた相手をこちらが治療する必要が?」
式部さんがそう答えた。
薄く開いた目は虫けらでも見るような感情が込められている。
「柳田美紀さん。あなたが外部と連絡を取り合ってここの襲撃に手を貸したことは既にわかっておりますよ?」
そう言うと、式部さんは拳銃を持ち上げて女・・・ミキの頭に照準を合わせた。
「ちがっ・・・!わた、私はこんなことまでするなんて聞いてない!知らないっ!!」
「結果が全てであります。そんな言い訳は到底通用しません」
男の頭を抱え、ミキは必死だ。
「あなたがたの所業によって正門は崩壊、守備兵にも多数の負傷者が出ているであります。とても看過できるものではありません」
そこまで言って、殺気を消した式部さんが拳銃をしまった。
ミキの顔に精気が戻る。
「・・・ですがまあ、我々にも情けはあります。降伏するというなら治療をするであります」
「っし!します!もう何もしません!だからタケオを助けて!助けてください!!」
その言葉を受けて、式部さんは右手を上げる。
すると、後方から担架を持った隊員が走ってきた。
「第四保健室へ」
式部さんの声に隊員は頷き、負傷した男をテキパキと担架に乗せる。
ミキは男に付きそうようで、ありがとうありがとうと涙を流しながら礼を言っている。
「・・・よかったんですか?爆弾抱え込むようなもんですよ」
担架とミキが校舎へ消えていった後、俺は小さい声で聞いた。
いわば裏切り者なのに、そうまでして面倒を見る必要があるのだろうか。
「・・・ふふぅふ」
式部さんは、俺の方を向いてにこりと笑った。
あ・・・なるほどなるほど。
「実は、自分は他人の運命がわかるのであります」
わざとらしく、式部さんはそう言った。
「男の方は治療空しく死亡。女の方はそれを悲観して後を追うでありましょうなあ。悲しい事であります」
飄々としているが、その笑顔からは凄まじい殺気が放出されていた。
こええ・・・古保利さんの部下こええ・・・!
俺がビビッていると、式部さんはスルスルと寄って来て耳打ちをしてきた。
「(いくら裏切り者といえ、避難民の前で処刑すると色々とまずいでありますから・・・ね)」
だからそれやめなさいよ!!
くノ一よろしくハニートラップかと思っちゃうじゃないか!!
「そ、ソウデスカ・・・」
「ふふぅふ、そうであります」
式部さんはニコニコと嬉しそうだ。
・・・とらえどころがなさすぎる、これは強敵だなあ。
敵じゃないけど。
敵じゃなくてよかったけど。
「ようやく避難所の運営が軌道に乗りかけてきたのに、馬鹿が多くて困るであります。それでは自分はこれで」
ぴしりと敬礼し、式部さんは校内へ戻って行った。
「あ、そうでありました!」
・・・戻って行かなかった。
「あの~・・・田中野さん、もしよろしければ・・・そのう・・・」
なにやらもじもじとしている。
一体何が・・・ああ、そうか。
「・・・本当にいります?これ」
未使用の十字手裏剣を1枚取り出す。
「いりますいります!いりまくるであります!!」
それをまるで宝石のように胸に抱くと、式部さんは風のように去って行った。
「田中野さん!それではまた今度~!」
嬉し気に手を振りながら。
・・・今まで周りにいなかったタイプだ。
一手先がマジで読めない。
「・・・ふう」
刀を血振りし、刀身を拭って納刀する。
相変わらずの切れ味だな、本当に。
まさに妖刀って感じ。
「神崎さん、サクラたちはうおお!?」
神崎さんの方を振り向くと、彼女は目を見開いて俺を凝視している。
なに、なにごと!?
「・・・あ、の。田中野さん・・・お願いが、あるのですが」
「な、ななな何でしょう」
焦点があっているようなあっていないようなその目に恐怖しつつ、なんとか声を返す。
「しゅ、手裏剣を・・・いただけませんか?」
・・・へ?
「え、こ、こんなものでよければ、いくらでも・・・ど、どうぞ」
十字手裏剣を出すと、神崎さんはそれを恭しく受け取ってくれた。
一体何なんだ・・・?
神崎さんもこの戦いで使っちゃったのか?
あ、でも・・・
「あの、高柳運送に工具あるんで・・・一緒に作ります?」
「一緒に、作る・・・?は、はいっ!!」
うひゃあ!いきなり元気になったよこの人!!
何が琴線に触れたというのか・・・
「わん!わん!」
サクラの声がする。
顔を向けると、高山さんたちと一緒にこちらへ走ってくるのが見えた。
もう戦いは終わっているから大丈夫だろう。
「なんか疲れましたね、神崎さん」
「・・・ええ、とても、とてもツカレマシタ・・・」
再び元気がなくなった神崎さんに首を傾げつつ、俺はサクラの方へ足を向けた。




