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82話 獅子奮迅のこと(※残酷な描写アリ)

獅子奮迅のこと(※残酷な描写アリ)




「よし!こっから動くんじゃないぞ!ここなら安全だからな!!」


団地の一棟、そこの屋上まで子供たちを連れてきた。

給水機の下の、金網で封鎖されたエリアだ。

いささか狭いが、安全には代えられない。


悲鳴と爆発音がいいブースト効果を生んだのか、彼らは必死だった。

大きい子が、自然と小さい子を補助しつつ声も上げずに。

目に涙を浮かべ、それでも必死に走っていた。


いきなりやって来た俺みたいな不審者の言うことをすぐ聞くとは・・・やはりあそこの生活は筆舌に尽くしがたいものだったのだろう。

返す返すも不憫だ。


「おじさんは田中野ってんだ、お前は?」


先程助けを求めてきた年長の少年に聞く。

恐らく彼が実質的なリーダーなんだろう。

逃げる時もよく気を配っていた。


「あ・・・だ、ダイキ、です!」


「いい名前だな・・・ほい、これ」


ここは、さっきまで先輩と偵察していた場所だ。

置いておいたリュックを開け、中身を掴む。

そう、大量のチョコバーである。

合わせて、道中の水分補給用にと持ってきていた2リットルのペットボトルを二本。

ちなみに中身は水出しの麦茶である。


「みんなでしっかり分けて食うんだぞ。ここにはこれしかないが、この騒ぎが収まったら腹が爆発するまで食わせてやるから、我慢しな」


「わぁあ・・・!」


いかに大量とはいえ、子供たちは20人くらい。

子供といえど、この痩せた状態を見ると足りるかどうかわからん。

久しぶりに見るだろうお菓子を見て、目を輝かせる面々の顔を見る。


「わかったな?小さい子にもちゃんと分配してやれよ?」


「う・・・うん!!」


ダイキは力強く頷いた。


「よしよし、いい子だ・・・いいか?俺が出ていったら、この針金でこことここをグルグルに縛って固定しろ」


その頭を撫でつつ、一巻の針金も渡す。

フェンスの入り口を封鎖させるためだ。

例え黒ゾンビが来ても、破られるには時間がかかる。


それに、どう考えても俺たちが暴れている方に来るはずだし。

どんちゃん賑やかだからなあ。


「俺か・・・警察か兵隊さんが来るまで、絶対にほどくな。ここならゾンビも入ってこれないからな」


「・・・うん!」


最後に、例のゴツい電話を渡す。


「ここに連絡が来たら、俺の代わりに話をしてくれ。神崎さんっていう人からかかってくるはずだ・・・詳しく説明しなくても、たぶんGPS的なもので位置が分かるはずだから心配すんな、普通に話せばいい」


・・・こんなもんかな?注意事項は。

聞き分けもいいし、この分なら大丈夫だとは思う。


「わかったか?」


「うん・・・わかった!」


「よしよし」


俺も行くか。

爆弾の在庫は尽きたようでもう音は聞こえないが、相も変わらず先輩の声と誰かの悲鳴はひっきりなしに聞こえてくる。

銃持ちもいたはずだからな、早く援護に行かないと。


「じゃ、俺は行ってくる・・・みんな、よく頑張ったな。後は大人に任せろ」


不安そうな面々をぐるりと見回す。


「なあに、大丈夫さ!この後すぐに仲間がいっぱい来てくれるし・・・」


手早く全身の装備を確認。

これからは対人になるから、刀持ってきといてよかった。

手裏剣も・・・よし、大丈夫!


「こう見えても、おじさん結構強いからな!」


抜刀した刀を肩に担ぎ、走る。

そしてさっきと同じように、屋上から身を躍らせた。

さあ、仕切り直しだ!!




「なんだ!一体何が!!」「火を消せ!火を!!」「ああああ!!経典が燃える!!ああああああ!!!!」


走って戻った野営地は、火に包まれている。

俺たちが盛大にポイポイした爆弾が、なんかいい感じに引火でもしたらしい。

ケケケ、燃えちまえそんなクソみたいな経典。


「あぎゃあ!?」「たすっ!たすげ!?」「うわ!うわああああああああ!!!!」


遠くの方からは変わらず悲鳴が聞こえてくる。

先輩が暴れているようだ。

さて、俺もやるかな。


「南雲流、田中野一郎太・・・参る!!」


始めは恥ずかしかったが、今は何というか名乗らない方が居心地が悪い。

そんな風に考えながら、俺は右往左往する奴らに駆け寄る。


一体どこの火を消すつもりなのか、バケツを持った1人に狙いを定める。


「りゃあ!!」


「なんっ!?誰ぇえ!?」


一気に踏み込んで、大上段から顔を斬り下ろした。

顔の中心の赤い線が走り、両目がてんでばらばらの方向を向く。

その両目が白目になると同時くらいに、奴は前のめりに倒れた。


「ひえ!?」「なんだ・・なんだぁ!?」「何者だお前!!」


おっと、死角に3人いたか。

武器は・・・ないみたいだな!!


「当ててみろよ・・・間抜けェ!!」


視線を1人に向けつつ、そいつとは反対方向の奴に飛び込む。

単純なフェイントだが、効果は十分だろう?


「っふ!!」「ぎ!?ぎゃっ!!」


踏み込みつつ沈み込み、奴が咄嗟に持ち上げた腕の下・・・腹を真一文字に切り裂く。

噴出する血液の音を聞きながら、瞬時に目標を変更。


「やめ!やめめめめめ!?」


手をブンブン振り回し、何事か懇願しようとするそいつの口に真っ直ぐ刀身を突き入れる。

切っ先が喉を貫通し、反対側から飛び出る。


「ひいあ!ああああ!誰か!誰か助けっで!?」


仲間の惨状を見て逃げようとする最後の一人に向け、十字手裏剣を投擲。

高速回転する刃先が、後ろを向いたそいつの延髄に深々と突き刺さった。


「・・・ふぅ」


素手相手は楽でいいな。

さっくり3人片付けられるとは、ついてる。


・・・非武装だろうが何だろうが知ったことか。

子供をあんな目に遭わせるような連中に、情けなんざ必要ないだろう。


「あっちだ!あっちでも暴れてるやつがいる!!」「ヤマガさん!こっちです!!」


・・・おっと。

暴れすぎたか?

混乱が収まりつつあるのか。


煙の隙間から、俺の方へ走って来る一団が見える。

全員、武器持ちだな。


「いたぞ!あいつd」


引き抜いた拳銃を向け、引き金を引く。


銃声と、軽い反動。


俺を指差して何事か叫んだ奴の顔面に、丸い穴が開く。


「じゅ、銃!銃を持ってrぎゃああ!?」


横にスライドさせ、もう一発。

今度は腹に着弾。


「このやr」


今度は眉の上。


「あああ!あああああ!!!」


腕を交差させて走って来る男に、残り二発を。

腕と、胸に着弾した。

・・・装填はできそうにないな。


その後ろから、草刈り用の大鎌を担いだ男が一人。


上体にブレがない。

武器を持った走り方を心得ている。

武道経験者、だな。


「貴様ぁああああああああ!!よくも!よくもォ!!!」


鎌男はそう叫びながら、獲物を後方に向けて構えたまま減速しない。

走り込んだ勢いで薙ぐつもりだな。


「お前も・・・その仲間に入れてやるってんだよォ!!!」


拳銃をしまいつつ、俺も走る。


「うぐ!」


俺の加速が思いのほか速く、目測が狂ったのか。

タイミングを取り損ねた大鎌の薙ぎ。


「あぁっ!!」


残念だったな、刃の到達点よりもここはかなり内側だ!!

長い柄に向けて、体重を乗せた斬り下ろしを放つ。


「おの・・・れ!!」


奴は強引に大鎌を持ち上げ、柄の部分で刃を受け止めた。

ほう、中々反応が早いじゃねえか!!


「お前ェ・・・どこのどいつだぁ!!」


半ばまで柄に食い込んだ刃を押さえつつ、奴は蹴り上げてくる。

そいつを、さらに踏み込んで加速する前に脛でガード。


「死神だよ・・・てめぇら、限定の、なあぁ!!!」


蹴りを放ったことで、防御が緩む。

その隙を見逃さず、刃を引きながらさらに押す。

力の均衡が崩れ、大鎌は下へ押し下げられる。


「ぐぁあ!?ああああが!?」


刃が奴の首元に吸い込まれるように入った。


「っし!!!」


その瞬間に、一気に引く。

首の半ばまで一瞬で食い込んだ刃が、頸動脈を確実に切断した。


「あが・・・こ・・・の・・・」


噴出する鮮血が、バイザーにびちゃびちゃと降りかかる。

・・・下げといてよかったぜ。


「後が控えてるんでな、とっとと死ね」


しばらく痙攣した後、鎌男は倒れ込んで失血によるショック症状で動かなくなった。

微妙に強かったが・・・それほどでもない使い手だった。


地面に倒れた鎌男の黒ローブで刀身とバイザーを拭く。

けっこういい布地だな、ふき取りも楽々だ。

さて、次だ。


その前に、子供たちのいる屋上を確認。

ふむ・・・問題なさそう。

っていうかかぶりつきで見てるんだけど、こっちを。

軽く手を振ると、たぶんダイキが振り返してきた。

・・・情操教育上最悪なのであんまり見ないで欲しいなあ。



結構走り回って駆除してきたが・・・火の回りが若干収まってきた。

これだけの規模の集団だ、一応防火対策はしているらしいな。

そろそろ、先輩と合流した方がいいかもしれん。

子供たちの安否だけは報告しとこう。


適当な死体から引っぺがした黒ローブを羽織り、こそこそと先輩を探す。

いや、コレ便利だわ・・・バッタリ会っても向こうは味方だと思うし。

不意打ちがしやすいのなんのって。

・・・バッタリ先輩に会ったら殺されそうなので、そこだけは気を付けておこう。


「がああああああ!!!!」「えぎゅ!?」


「ばっばっ・・・・化け物だあああああああああああああああ!?」「逃げろ!!あんなのに勝てるわけな・・・ぎゃあああああああああああああああああ!!!!」


・・・先輩見っけ。

脱いどこ黒ローブ。

流れ弾ならぬ流れ六尺棒で成仏してしまう。


「ぎゃばあああ!?」「おっとと」


先輩が吹き飛ばした奴が俺の横を飛んでいく。

人間ってよく飛ぶなあ。

・・・いやいやおかしいだろ。


一呼吸で3人を吹き飛ばした先輩は、俺よりよほど暴れているというのに少し息が乱れているだけだ。

バケモンだなあ。


「おつでーす」


「おう・・・数だけは多いのう、ちいとしわい(疲れた)わ」


俺を確認し、緊張を解く先輩。

全然疲れてそうに見えない不具合。


「子供たちは全員無事です。俺たちがいた屋上に避難させてます」


「食いもんは・・・」


「ご心配なく、飲み物も渡しときました」


「ほうかほうか・・・えかった」


これで、先輩的にも後顧の憂いはなくなったな。


「さて・・・援軍が来るまでに削って、楽をさせてあげましょうか」


「ほうじゃな、たまぁにちいと手強いのがおるけぇ気を付けえよ」


・・・先輩がそう言うってことは、俺にとってはかなり手強い相手ってことだ。

気を引き締めておこう。


「銃持ちには特に気を付けましょうね」


「おう、困ったら呼べよ」


そう言うと、息を整え終わった先輩は猛然と走り出す。

一瞬でトップスピードに・・・速いなあ。

あんまり先輩に頼るのも悪いし・・・頑張るか、俺も。


とりあえず外周部分を掃除していくか。



「お前!お前かああああああ!!!!」


周囲を確認しながら歩いていると、燃え残ったテントから男が飛び出してきた。

消火活動をしていたのか、その顔は黒く煤けている。

その手には、鞘に入った日本刀。


「なんでしょうか?俺は近所の住民なんですけど・・・?」


「ふっざけるなぁあ!!」


男は鞘から引き抜いた日本刀で殴りかかってくる。

おいおい、棍棒じゃないんだから・・・そんな握りじゃ切れないぞ。


「っふ!」


強張ってガチガチになった握り手を、刃で軽くなぞる。

握りしめていた勢いで、その手から刀がすっぽ抜けた。


「っはぁ!!」「げぅ!?」


斬り付けた刀を引き、首元に突き。

よし、これで・・・!?


「げば、ごのやろ・・・!!がああああああああ!!!!」


なんとそいつは両手で首に刺さった刃を握りしめ、抜けないように固定した。

屑の癖にいい根性だな。


「が、ガネギざん・・・!!い、今でず!!!」


少し感心していたところ、後方から膨れ上がる殺気。

刀を掴んだ男の腹を蹴り、愛刀から手を離しつつ振り返る。


「死ねぇえええええええええ!!!!」


そこには、大上段に大鉈を振りかぶって肉薄する大男の姿。

回避する時間は、ない!!

それなら・・・!!!


「うああああああああっ!!!!」


振り下ろしの動作に入る大男。

その懐に飛び込む。


間合いの内側に潜り込み、振り下ろされる腕の肘へ・・・下から加速した肘を叩きつける。


「っが!?」


予想外の痛みに、一瞬動きが鈍る大男。

一瞬あれば・・・十分っ!!!


後ろ腰に差した脇差の鯉口を切り、逆手で抜きながら体を回転させる。


「ぎぃいい!?」


遠心力で加速した剣先が、大男の下腹を横一文字に切り裂いた。


「ぬんっ!!」


回転の勢いを殺さず、一周した所で大男の顎から脳へ向けて脇差を突き刺す。

びくびくとしばらく痙攣した後、大男は死んだ。

・・・よし、なんとかなったな。


刀と脇差を回収し、刀身を綺麗に拭く。

・・・刃こぼれはまだないな。

こいつらは防具らしいものを身に着けていないからありがたい。

以前の榊みたいなのがいたら面倒だけど。



「ぬん!おうりゃ!がああああああああああああああああっ!!!!」


煙の隙間から、先輩が大暴れしているのが見える。


相手も覚悟を決めたのか、思い思いの武器で果敢に打ちかかっていくが・・・

刀も、槍も、棍棒も。

接触した瞬間に武器ごと破壊され、続く二打目で体のどこかを破壊されて地に伏せる。

先輩の腕力と、振り回される遠心力で強化された六尺棒は・・・まるで台風だ。

一切の防御は無用の長物と化している。


「ぐううう!!!」


うお、マジか。

見るからに重そうな鉄の棒を持った男だけ、なんとか防御に成功した。


「が、い、今!今だァ!!!」


その男が叫ぶと、先輩の後方から黒ローブが飛び掛かった。

手にはナイフと長い包丁をそれぞれ持っている。


「がぎゃあ!?」


が、恐ろしい勢いで体をくの字に曲げて吹き飛ばされる。

先輩が、後ろも見ずに放った蹴りによって。


「何ぃ!?うお!?おおおおおお!?」


「ぐううあああああああああああああああああああああああああああっ!!!」


先輩が吠える。

背中に、腕に、裂帛の気合がこもる。

仲間の惨状に驚愕した男が、上体を押しつぶされていく。


「が、や、やめ・・・やべ、やべで!?」


たまらず膝を付いた男は、六尺棒によってさらにじわじわと押されていく。

まるでリンボーダンスの最終段階だ。


「そう言っとった子供らぁに・・・おまーらは・・・何を、したぁああああ!!!!」


「っひ!?ひい!?ひいいいいいいいい!?」


最後の駄目押しで、男の顔は六尺棒と地面に挟まれて圧壊した。

・・・プレス機かな?


・・・!あれは!

咄嗟に先輩に向けて走る。


「先輩!後方・・・銃!!」


猟銃のようなものを先輩に向ける人影が見える。

走りながらそう叫び、俺は燃え残ったテントの土台に向かって跳ぶ。


「っふ!」


土台を蹴りつけ、跳躍。

空中で限界まで振りかぶった手裏剣を、渾身の力で投擲。


陽光を反射しながら飛ぶ十字手裏剣が、銃を構える黒ローブの胴体へ向かう。


「っげ!?」


遠い悲鳴。

崩れる影。


どうやら猟銃に命中した手裏剣が、跳ね返って顔に命中したようだ。

ミラクルショット・・・ってやつだな。


先輩の後方へ着地すると同時に、先輩が俺の方へ振り返りながら投擲の姿勢。

・・・っへ?


「っじゃあああっ!!!」


俺の顔のすぐ横を、あの冗談みたいな大きさの手裏剣が風を纏って通過する。

うおおお!?あぶねえ!?

うが!?驚きすぎて足が滑った!!


「っが!?ひゅ!?」


受け身を取りながら後ろを見ると、瓦礫の影からボウガンを構えていた男の顔面に手裏剣が命中している。

うわあ・・・あのデカいのが半分以上めり込んでる・・・

がらんとボウガンを取り落とし、がくがくと痙攣しながらそいつは前のめりに倒れた。


「貸し借りはチャラ・・・じゃのう」


「はは・・・ソウデスネ」


恥ずかしい。

自分の周囲がおろそかになっていた。

油断大敵、だな。


いつしか煙も晴れ、周囲の惨状がよく見えるようになってきた。

ということは、相手からもよく見えるということ。

大木ボムの威力がデカかったこともあり、遮蔽物が驚くほど少ない。

・・・おのれ大木くん!有能すぎる!!


「殺せ殺せ!あそこだ!!」


その声に、先輩とほぼ同時にテントの影へ。

コンクリートの土台的なものに、ちゅんちゅんと銃弾が弾ける。

まだだいぶ遠いな・・・かといって当たれば無事にすまんだろうが。


「おっと・・・止まるなよ田中野、動きを止めりゃあハチの巣よ」


「はっは、無理難題をおっしゃる」


コンクリの影に身を寄せ合って軽口を叩き合う。


さてさて、俺や先輩が大暴れしたものの・・・相手の数はまだまだ多い。

さすがに2人で100人以上を相手にするのは無理がある。

子供を見てほぼ無策で突っ込んだツケが回ってきたかな・・・?


「ま、遮蔽物を駆使して銃持ちを優先的に片付け・・・ん?」


先の戦術を考えていると、何か聞こえる。

これは・・・車か?


「援軍ですかね?」


「・・・むう、それにしゃちゃあ数が少ないような気がするのう・・・というか1台じゃなーか?」


先輩が笑う。

銃撃が止み、何やら騒がしくなってきた。

瓦礫の影から鏡を出し、確認する。


「はは、こりゃあ・・・最高の援軍だ!」


鏡に映る遠くの光景。

黒ローブが轟音と共に撥ね飛ばされている。



そこには、心から楽しそうな顔で愛車の大型バイクを駆る後藤倫先輩と・・・

その後ろでライフルを乱射する神崎さんの姿があった。

恐ろしい二人乗りである。



周囲の銃持ちを片付けたのか、まず神崎さんが走行中のバイクから飛び降りた。

綺麗な受け身を取りながら着地すると、そのまま呆気にとられた周囲に銃弾をばら撒く。

1マガジンを瞬く間に打ち切った神崎さんは、弾切れになった瞬間に四方へ手りゅう弾を投げる。

爆音が響き、一気に黒ローブはパニックになる。


そのパニックを助長するように、後藤倫先輩が縦横無尽に爆走。

巧みな運転技術で黒ローブを撥ね飛ばす。

豪快に4、5人を後輪を滑らせながら撥ね飛ばし、バイクが停車するや否や長巻を引っ掴んで適当な黒ローブを刻みに飛び出す。


異様に低い、地に沈むような体勢からニ連、三連と光が走る。

その度に足を斬り付けられ、悲鳴を上げながら黒ローブたちは無力化されていく。


「田中野さん!ご無事ですか!田中野さん!!」


四方に銃弾をばら撒きながら、神崎さんが叫んでいる。


「熱烈じゃなあ、田中野ぉ」


・・・何故かにやつく先輩に軽くいらっとしながら、俺は援護の援護へ向かうべく瓦礫から飛び出した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 田野中くん愛されてるね。早く気づきなさいトーヘンボクめ!
[良い点] >>そこには、心から楽しそうな顔で愛車の大型バイクを駆る後藤倫先輩と・・・ >>その後ろでライフルを乱射する神崎さんの姿があった。 >>恐ろしい二人乗りである。 遠近両対応の最終兵器が……
[良い点] これだけ強い主人公なのに、上には上が居すぎること [一言] 二人だけでもはやターミネーターみたいな状況で、お師匠様と六帖先輩という人と合流できたらこれもう消化試合に変わるのでは? 主人公な…
感想一覧
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