81話 拠点発見並びに突撃のこと
拠点発見並びに突撃のこと
「こんなところに隠れてやがったのか・・・」
「10や20どころじゃないのう、ざっと見ても100は下らんぞ」
平たい屋根の上で腹ばいになりながら、俺は七塚原先輩と並んで眼下を見下ろしている。
視線の先には、蠢く人影。
それに、まるでサーカスのテントのようなものがいくつも並んでいる。
「さすがに、無策で突っ込んだら即死ですねえ」
「ほうじゃのう・・・銃持ちが歩哨に立っとるけえな」
発見されるかもしれんので、煙草は吸えんな。
さてさて・・・これからどうしたもんか。
奴らのバスを発見した俺たちは、付かず離れずの位置で尾行した。
ただでさえ車が全然走っていないのだ。
後ろを走るだけで見つかるリスクは跳ね上がる。
直線では停まり、バスが曲がれば走る。
放置車両や倒れた看板の陰に隠れ、気を付けながら車を走らせた。
どれくらい追っただろうか。
バスは、龍宮市街地の工業団地へ入って行った。
以前は確か・・・製鉄工場があった場所だ。
かなり広い団地があったはず。
あまり来たことはないが。
それを追って適当な駐車場に車を停め、荷物を持って降車。
近辺で一番見晴らしがよさそうなマンションの屋上へ登った。
何体かのゾンビをサイレントキルしつつ、たどり着いた屋上で偵察を開始。
そしてすぐに、奴らの拠点は見つかった。
以前は広い公園だったんだろう、団地の中心の空間。
龍宮高校のグラウンドと同じくらいの広さだ。
奴らはそこにテントをいくつも設置し、共同生活をしているようだ。
・・・周り中に団地があるのに、なんでわざわざ野宿してるんだろうか。
まあ、あれほどネジの外れた連中だ。
なんか常人には理解できないような教義でもあるのかもしれん。
『屋根の下に住むべからず』みたいなアホな感じの。
「とりあえず偵察しますか」
「おう」
俺は単眼鏡、先輩は双眼鏡をそれぞれ持ち、思い思いに観察する。
野宿・・・野営地の周囲は、四方を高さ2メートルほどの有刺鉄線に囲まれている。
駐車場はその外で、あの胸糞悪いバスがなんと12台も停車しているのが見える。
こりゃ、かなり大人数がいるな。
野営地への出入り口は二か所。
対角線上に急ごしらえのゲートがある。
さっき先輩が言ったように、そこには猟銃のようなものを持った歩哨が4人ずつ詰めている。
・・・正面突破はキツそうだ。
そして内部はいくつものテント。
合間合間に洗濯物を干すような場所、調理場、そして簡易トイレが見える。
かなり大掛かりな場所だな。
「明らかに一つだけ変なテントありますよね」
「幹部・・・お偉いさんの住居かのう」
言った通り、テントの群れの中に一つだけ違和感がある。
周囲に歩哨が立った、一際大きなテントだ。
しかも何故かそのテントだけ真っ赤。
他は白や迷彩など市販品っぽいのに、それだけ一点物のように見える。
「・・・なーんか変だよな、あれ」
どうにも腑に落ちない。
なんというか・・・言いようのない違和感がある。
「・・・わかった」
隣で先輩が呟く。
見ると、恐ろしい形相だ。
「血じゃあ、あれは・・・血染めのテントじゃ」
・・・倍率を上げて確認。
確かに、赤は赤だが変にムラがある。
一部は赤黒く変色していて・・・世界がこうなってからは見慣れたカラーリングだ。
「胸糞がわるいのう・・・気狂いどもが」
先輩が吐き捨てる。
俺も同感だ。
あんな色のテントを崇めるのもアレだし、何よりその制作過程でどれほどの血が流れたのか。
以前の体育館がフラッシュバックし、俺は唇を噛んだ。
血の味がする。
「とにかく、連絡を入れましょう」
そう言って、持ってきたリュックからバカでかい携帯電話の化け物を取り出す。
神崎さんから渡された衛星電話だ。
通信衛星さえ生きていれば、世界中どこへでもかけられるという一品。
『必ず携帯して!必ず定期連絡を入れてくださいね!必ずです!!』
と言われ、出発の時に予備を渡されたのだ。
心配性だなあ・・・なんてその時は思ったが、こうなってみると大層ありがたい。
神崎さんさまさまである。
教わった通りに操作し、耳に当てる。
うわあ・・・呼び出し音とか久しぶりに聞いたなあ。
『はいはーい!おかけになった電話番号は現在使われておりまーす!!』
璃子ちゃんの元気な声が返ってきた。
「や、電話なんて久しぶりだね璃子ちゃん・・・神崎さんいる?」
『うんうん!久しぶりでテンション上がっちゃうねっ!凜おねーさんは洗濯物取り込んでるよー、持っていこうか?』
「ああ、お願いするよ」
そう返すと、パタパタと足音が聞こえる。
お、今階段を駆け上がっているな。
『おじさんから電話だよー!うひゃあ!?凜おねーさんだいじょうぶ!?』
ドアを開ける音と、ぼふ、という音が聞こえる。
何だろうか?
『はいはーい、どうぞ!』
『・・・んんっ!・・・あ、あの、神崎です』
何やらバタバタした後、神崎さんに替わった。
「やーどうもです、実は・・・」
とりあえず、現状を報告することにした。
電池は貴重だしね!
『わかりました、すぐに龍宮に連絡を入れます。合わせて私も行きますから』
報告を終えると、神崎さんはそう言った。
「ええ、でも神崎さんはそこにいてくだs」
『行!き!ま!す!か!ら!』
「お待ちしておりますゥ!!」
お留守番を引き続きお願いしようとしたら、恐ろしい声で言われた。
おっかねえ。
『後藤倫さんや斑鳩さんがいればここの守りは大丈夫です。なにより今は大木さんもいらっしゃいますし』
・・・言われてみれば。
大木くんボムがあれば大体の問題は片付きそうであるなあ。
高柳運送が吹き飛ばないことを祈る。
『田中野さんたちは引き続き偵察を、くれぐれも、くれぐれもお願いしますね!!』
そう言うと、通話は終了した。
・・・了解でござる。
「元気がええのう、神崎さんは」
先程までの表情とは打って変わって、先輩は嬉しそうである。
「お仕事が好きなんですねえ・・・いだぁ!?」
先輩に頭をはたかれた。
おおお・・・世界が揺れちょる・・・
「はぁあ・・・おまーとは今度じっくり話をせにゃいけんなあ。巴も入れて」
心底かわいそうな生き物を見るように、先輩が言う。
何ですかその哀れみの視線は。
「先生がおったらのう・・・」
「何なんですかさっきから・・・」
「うんにゃ、今言うことじゃなーし、時間もなあ。忘れてええぞ」
この脳天の痛みは忘れられないんですが!?
いかんともしがたい気持ちを抱えながら、再び俺は単眼鏡を覗き込んだ。
先輩と偵察を続けている。
「なんか・・・普通の避難所って感じですね」
「ああ、特におかしなところもなさそうじゃ。あの一件を知らにゃあ、ただの奇抜な服の集団にしか見えん」
そうなのだ。
あの謎ローブがやたら目立つ以外、特にこれといって不審点は今のところない。
お互いに顔を見合わせて談笑している感じすらある。
あの惨劇を引き起こしたなんて、全く想像できない。
てっきり定期的に生贄の儀式でもしてそうなもんだが・・・イメージ的に。
「あ、子供がいますよ先輩。右の奥」
「・・・ほうじゃのう」
テントの奥まった場所に、子供たちが見える。
服はローブではなく普通のものだ。
数は・・・20人はいるぞ。
しかし遠すぎてよくわからん。
もう少し近付く必要があるな。
荷物を持ち、下から見えない場所を音を立てないようにして移動する。
団地の屋根伝いに、子供たちがいる場所目がけて。
豪雪地帯じゃないから、屋根がまっ平でよかった。
外側を歩けば見つかる心配はない。
屋根から屋根にジャンプして移動することしばし。
俺たちは目当ての場所にたどり着くことができた。
団地屋上の給水塔の影から、そろりと身を乗り出して単眼鏡を構える。
よし、ドンピシャ。
ここからならよく見えるぞ。
「まいったなあ・・・信者の子供ですかね?人質にでもされると厄介ですね・・・」
「うまいこと一か所におってくれりゃあ、保護もしやすいんじゃけどな・・・」
いかにカスの関係者とはいえ、年端も行かない子供をどうこうする気はない。
親の因果が子に報い、などという言葉があるが俺や先輩はそれをガン無視する。
きっと師匠だってそうだろう。
親のしたことは、親にだけ償わせる。
「・・・おい、田中野。気付いたか」
「・・・ええ」
先輩の声が一段低くなった。
返す俺の言葉もそうだ。
「『一か所にいる』んじゃなくて・・・『一か所に集められて』ますね」
「・・・やっぱりあいつらは糞じゃ。生かしておけん」
近くで観察してわかったことがある。
子供たちの様子が、親の近くにいる子供のそれではない。
表情は恐怖に染まっており、みんなで寄り集まっている。
顔色も悪く、服も薄汚れている。
体つきは、病的なほど細い。
必要最低限の栄養だけで生かされているようだ。
お互いに身を寄せ合ったまま、身動きもせずじっとしている。
カロリー消費を抑えるためだろうか。
「・・・外道ォ」
ぎちり、と歯が鳴る。
その上・・・子供たちがいる場所は、2重のフェンスで区切られている。
敷地内には見るからに衛生状態の悪そうな簡易トイレ・・・それに、適当に作られた布張りの屋根の下の寝床。
どう考えても、20人以上の子供を収容する規模ではない。
明らかに面積が足りていないのだ。
その区画の外にいる黒ローブ共は、血色もよく栄養に不自由している様子は見られない。
よくも・・・よくもまあ平気で生きていられるものだ。
目と鼻の先で子供が飢え死に寸前になっているというのに、何故笑っていられるというのだ。
単眼鏡を握る手に力が入り、本体が軋む。
「・・・許せんのう。何が『救う』じゃ・・・笑わせるわ」
先輩も同じ気持ちのようだ。
子供たちのことを思ってか、目の端に涙を浮かべて怒っている。
はらわたが煮えくり返りそうだ。
いや・・もう口から出そうな気がする。
沸騰した内臓が。
「・・・援軍はまだかのう?」
「距離からいっても、あと30分はかかると思います。ここ結構わかりにくい場所ですし」
じりじりとした気持ちでそう返す。
一刻も早く何とかしてやりたいが・・・いきなり無策で突っ込むわけにもいかん。
最低でも8人以上の銃持ちがあっちにはいる。
俺も先輩も自衛隊用の防弾チョッキは着用しているが、そこ以外を撃たれれば行動不能になってしまうかもしれん。
先輩にも予備をもらっているのだ。
なお、後藤倫先輩は動きが鈍るからいらないと断っていた。
恐ろしい人である。
しかし・・・七塚原先輩なら散弾は何とかなりそうな気がするが。
大型の獣は散弾では死なないって言うしな・・・先輩はそれより強いし。
しかし、こちらの有する遠距離攻撃手段は俺の拳銃とお互いが持つ手裏剣だけ。
いやまあ、先輩のはブーメランぐらいでかいけども。
漫画みたいな手裏剣だぞ。
・・・それにしたって数も足りないし、射程距離はせいぜい10メートルが精々だろう。
いや待て、たしかリュックの非常用ポッケに大木くんボムが入っていたな、パイプのやつ。
確認すると8本あった。
先輩に4本渡しておく。
「赤いボタンを2秒長押しして起動だそうです。それから4秒後に爆発するとか」
「見た目はヒョロい兄ちゃんじゃけど、物騒なもん作るのう・・・あいつ」
俺たちの中では断トツの危険度だよな、大木くん。
主に武器的な意味で。
まあ、ありがたいけれども。
確かに子供たちはとんでもない状況に置かれているが、すぐに殺される・・・という雰囲気でもない。
・・・心苦しいがこちらの状況が整うまではこのまま待機だな。
―――そう、思った瞬間だった。
ごうん、ごうん、ごうん。
重い鐘を打つ音が3度響いた。
なんだ、これは?
・・・凄まじく嫌な予感がする。
鐘の音が響いた瞬間、子供たちの一団が全員びくりと体を震わせた。
お互いに一層寄り集まって、空間の中央に固まっている。
まるで・・・誰も連れて行かせない、とでも言うように。
「・・・田中野」
「もうコールしてます」
先輩が例のデカい手裏剣を持つ。
俺は電話を耳に当てた。
何度かのコール音の後、応答があった。
『はい!今向かっています!』
運転中だろう神崎さんが答える。
風の音とエンジン音で若干聞き取りにくい。
かなりの速度で走っているようだ。
「神崎さん、子供が捕まってます。で、状況がキナ臭い」
『なんですって!?』
「申し訳ありませんが、たぶん一足先に突っ込むことになりそうです」
目の前を見ながら早口で言う。
寄り集まる子供たち。
その区画の、封鎖された入り口に黒ローブの集団が集まってくる。
一様に、その顔面に笑みを張り付けたまま。
『・・・わかり、ました!御神楽からの部隊も急行しています!あの、お気をつけて!私もすぐに行きますから!!』
神崎さんからのOKも出た。
声の調子から、かなりの苦渋の決断だろうことは想像できる。
「ええ、任せといてくださいよ・・・約束ですからね。そっちも、事故に気を付けて」
『はい、田中野さん!ご武運を!!』
通話が終了する。
周囲の音がよく聞こえるようになった。
風に乗って、敷地からの会話が聞こえる。
「みんなぁ、『祝福』の時間だよぉ」「今日は誰かなぁ」「ほぅら、怖がらないでぇ」
口々にそう言いながら、入り口が開いて黒ローブが入っていく。
「やだああああ!!」「こないで!!!こないで!!!」「ママ!!ママああああああああ!!!」
子供たちは塊になったまま、反対側のフェンスへ下がっていく。
ここからでもわかるくらいに、体を震わせている。
まるで魂を消し飛ばされるような悲鳴を、口々に上げている。
その反応からも、危機的な状況がよくわかる。
・・・もう無理だ。
これ以上・・・見ていられない!!
「・・・最初に俺が掻き回します、先輩はまず突っ込んでください」
「わかった・・・任せい」
武器を確認し、俺たちは団地の屋上へ立つ。
まだ気づかれてはいない。
大きく、大きく息を吸い込む。
「そこまでだ馬鹿野郎!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺がそう叫ぶ一瞬前に、先輩が屋上から身を躍らせる。
2階程度なら、造作もないだろう。
黒ローブが一斉に俺を見て目を見開いている。
そうだ、もっと見ろ。
俺に注目しろアホども。
「どうも初めまして!!・・・・そしてぇ!!!!!!!」
大木ボムのボタンを長押し。
ピー、と電子音が手元から聞こえる。
「く!た!ば!れえええええええええええええええええええええええええええっ!!!!!!」
甲子園出場外野手並みのフォームで、思い切り遠投。
パイプは高速回転しながら、山なりの弾道でそいつらの頭上を越えて飛ぶ。
呆けたような顔で、奴らがそれを目で追う。
その間に、着地した先輩がほぼ音を立てずに大地を疾走。
あっという間にフェンスへ迫る。
先輩がその六尺棒を棒高跳びよろしく突き立て、高く飛び上がる。
舞い上がり、フェンスの頂点へ足をかけるその瞬間。
地面すれすれに落下した爆弾が、轟音と共にいくつかのテントを巻き添えに吹き飛ばした。
爆炎が真昼の明るさをさらに押し上げる。
フェンスの頂点を蹴った先輩が、子供たちの頭上を跳び越えて着地。
飛び越える瞬間に、片手で握っていたあのデカい手裏剣を空中で投げた。
「一体どうしたぁあ!?」
黒ローブの後頭部にそれは着弾。
半分以上突き刺さって、その勢いで地面へ頭から倒れさせる。
そのまま先輩は、爆発を見るのに夢中な黒ローブたちへ恐ろしい勢いで走り込む。
「ぬうううううううあぁあああああ!!!!!!!!」
足音に気付き、振り返った黒ローブの顔面に横薙ぎの六尺棒が衝突。
盛大な血飛沫を上げ、そいつは糸の切れた人形のように吹き飛んだ。
「へぎ」「あ」「え」
続いて3連撃。
遠心力で加速した六尺棒が黒ローブをなぎ倒す。
腕や足がへし折られ、奴らはなすすべなく無力化される。
生きてても手足が粉々じゃあ、何もできまい。
しばらくは、任せておいてよさそうだな。
爆弾をもう1本、さらに遠くへ全力で投擲。
その爆発を待たず、俺も屋上から飛び降りる。
狙い通り芝生へ着地。
前転しつつ受け身を取り、フェンスへ向かって走る。
先輩のような芸当はできないので、その手前にある放置車両に跳び上がってさらに踏み切る。
フェンスと子供たちを飛び越え、着地。
足首は無事だ。
柔軟しといてよかった。
「よう!いきなりですまんけどな、そこから動くんじゃあないぞ!!」
後方の子供たちに声をかけながら、両手に持った爆弾を起動させる。
「月並みだけどな・・・助けに来たぜぇっ!!!」
右、左と投げる。
爆弾たちが宙を舞うのと同時に、さっき投げた爆弾が起爆。
爆発音に交じって悲鳴が聞こえる。
うし、何人か死んだな!ざまみろ!!
これで俺の手持ちはナシ。
黒ローブたちは半ばパニック状態で、俺たちの侵入には気付いていないようだ。
・・・好機!!
「先輩!適当に爆弾を!俺は子供たちを避難させます!!」
「わかったぁ!!」
先輩はそう答えながら、テント群へ続く扉をいともたやすく蹴破る。
そのまま六尺棒を担ぎ、右往左往する黒ローブ目掛けて走り出す。
俺は振り返って、目を丸くしている子供たちの横を走って通り過ぎる。
「がああああああ!!!!」
兜割を振り、フェンスのつなぎ目をぶっ叩く。
何度かそうすると、急ごしらえの接合部の一部が破損する。
「ふん!!!!!」
蹴り飛ばし、フェンスにできた亀裂をさらに拡大させる。
何度がキックを叩き込み、子供なら楽に通れそうな穴を作った。
「ぐぎぎぎぎ・・・!!!!」
そこに体をねじ込み、全身の力を込めてさらに穴を広げる。
よし、これでいい。
「みんな!こっから外へ出るんだ!」
目を丸くしている子供たちへ叫ぶ。
・・・くそ、近くで見るとほんっとにガリガリだな。
服も汚れ放題だ。
着替えもさせてもらえないんだろう、もちろん風呂もだ。
・・・なんとも不憫だ、不憫すぎる。
「頼む!俺を信じてくれ!!」
いきなり乱入してきた刀と兜割を持った爆弾魔・・・客観的に見るとぶっちゃけ怪しすぎる。
説得力は皆無に等しい。
だが、今はとにかくこの子たちを逃がさなければ!
こんだけの轟音だ、ゾンビに嗅ぎ付けられる前に安全な場所に連れて行かなければ!!
最悪、片っ端から無理やり抱えてダッシュするか!?
そう思ったとき、子供たちに変化があった。
見た所小学校高学年くらいの少年が、おずおずと俺の目を見る。
彼が最年長くらいだろうか、残りはどう見ても低学年と・・・幼稚園くらいだ。
「お、おじさん、おじさんは・・・いいひと?」
なんともコメントに困る質問だ。
「はっは!さてどうかな・・・だけどここのカス共よりかは真人間の気がするね!!」
ノータイムで正直に答える。
言い澱んだり考え込んだりすれば、それだけ子供たちは不信感を抱くだろう。
「・・・っ」
その少年は思い切ったように口を開く。
「たすっ・・・たすけて!たすけてぇ!!!」
同時に、堪えていたんだろう涙もボロボロと零れた。
「ああ!!何から何まで・・・俺たちに任せろ!!!」
俺は、そう大声で怒鳴り返し、歯を剥き出しにして笑った。
遠くからは、野太い先輩の雄たけびと誰かの悲鳴がひっきりなしに聞こえている。
待ってろよ屑ども・・・皆殺しにしてやる。




