54話 ふれあいセンター再びのこと
ふれあいセンター再びのこと
「わふ!わん!」
頬にぺちょりとした感触。
・・・むむむ、ナメクジ・・・じゃない。
「・・・おはよ、サクラ」
「きゅん!」
デジャブってやつかな?
何か前にも同じことがあったような・・・
「・・・ここどこぉ?・・・ああ、そうか」
寝ぼけ眼で周囲を見渡し、独り言。
ここは、俺達がいつも寝ている資料室だが・・・微妙に場所が違う。
昨日保護した子供たちが風邪をひくといけないので、俺の布団も提供したのだ。
そして俺は部屋の備え付けのソファーで、薄いタオルケットを被って就寝した。
「うごご・・・腰がいてえ」
「くぅん・・・」
慣れない姿勢で寝たので腰を気にする俺を、サクラが不思議そうに見ている。
時刻は・・・朝の6時。
いつもよりちょいと早いな。
「うし、サクラ飯にすっか・・・今日は忙しいぞ~?」
「わん!!」
いつものようにサクラを抱え上げて階段を下りる。
もう1匹で問題なく下りられるが、朝だけはこうしている。
サクラも嬉しそうだし、この時だけは絶対に自分だけで下りようとしないのだ。
いわば俺たちの朝のルーティーンってやつかな。
それにしてもサクラかしこすぎないか・・・?
「おう、早いのう」
「大丈夫っすか先輩、髪が爆発してるんですけど」
1階へ下りると、七塚原先輩がもう起きていた。
いつものライオンヘッドは、さながらメデューサヘッドとも呼ぶべき様相を呈している。
「寝ぐせじゃ。いつもはシャワーで直るんじゃけど・・・」
ああ、なるほど。
子供たちにしがみつかれてたもんな、昨日。
シャワーも浴びれなかったか。
「いい加減で切りたいんじゃけど・・・」
「巴さんが許しませんよねえ」
苦笑いしながら、棚からサクラ用のドッグフードを取り出す。
ガサリという音を聞いたサクラが、喜びいっぱいに床を高速回転している。
朝からすごくかわいい。
「で、今日・・・行くんか?」
サクラが皿に頭を突っ込んで餌を貪っている様子を微笑ましく見ていると、先輩が切り出してきた。
・・・子供たちは、まだ起きてないか。
「ええ、軽トラ回収しなきゃいけませんしね・・・神崎さん辺りと一緒に行こうかと」
俺一人じゃどうにもならんからな。
恐らく向こうで警察と合流はするが、行きに使った車と愛車2台を単独で運転するのは不可能だ。
おっと、もう少ししたら御神楽高校に連絡入れとかないとな。
「・・・わしが行くわ」
「・・・いいんですか?」
そう言うと、先輩は険しい顔をした。
「2人、死んでしもうた・・・あっこに、わしが預けた子は」
血を吐くように、先輩が言った。
「じゃけえ、せめて見つけて・・・しっかり葬ってやりたい。川原さんのこともあるし、他の避難民ものう」
「・・・わかりました」
そう言うのなら、止めはしない。
俺も、あの子を葬ってあげたいしな。
「行きたくないけど、行かないのはもっと嫌ですからねえ」
「・・・おう」
俺達はお互いに、弱々しく微笑んでいた。
食事を終えたサクラが、そんな俺たちを不思議そうに見上げていた。
「んみゅ・・・あ、サクラちゃんだ」
「わふ!」
その話が終わる頃、葵ちゃんが目をこすりながら扉を開けて出てきた。
起こしちゃったかな。
サクラはそれを見るや否や突っ込んでいき、撫でて撫でてと言わんばかりにぴょんぴょん跳ねている。
ああ^~サクラがぴょんぴょんするんじゃあ^~
「あは、おはよ・・・おじさんたちも、おはよ」
「おう、おはようさん」
「おはよう・・・早いのう、まだ寝とってもええんで?」
その時、きゅるると可愛らしい音が葵ちゃんのお腹から聞こえた。
「・・・おなか、すいた」
若干恥ずかしそうに葵ちゃんが言う。
おっと、それじゃあおじちゃんが腕によりをかけて・・・保存食を温めてやろうかな!
「よーし、じゃあ待ってなよ~」
「うん」
たしかパンの缶詰が大量にあったハズ。
あれとジャムまたは蜂蜜がいいだろう。
「あんこ追加・・・」
「はいはい、バターは?」
背後にいつの間にかいた後藤倫先輩が言う。
気配を消すな気配を。
「いる・・・少しは驚け」
「もう慣れました~」
一々ビビってたら、心臓がいくつあっても足らんのじゃよ。
「缶詰パンでも焼くとうまうま」
「あんこバター・・・おいしい、ねー?」
「そうだろうそうだろう・・・見どころがある。将来は美人になる」
「びじんー?」
「そう、私みたいな」
自分で言うのか・・・(困惑)
後藤倫先輩と葵ちゃんが、並んでパンをもぐもぐしている。
・・・なんか似てんなこの2人。
親戚ですか?
よくわからんが波長が合うというやつなのだろうか。
まあいいや、葵ちゃんも楽しそうだし・・・このまま元気になっていただきたいものだ。
頼むぞサクラと後藤倫先輩。
「いーにおーい!」「おなかすいたー!」
がやがや騒がしくなってきた。
保育園の子供たちか。
「いいにお~い・・・はっ!むーさんごめんなさあい!!寝坊しちゃいましたあ!!」
・・・でっかい子供も混ざってるな。
さーて、神崎さんも斑鳩母娘もいないし・・・
ここは俺の出番だな!
田中野式雑なサバイバル朝食の時間じゃあ!!
「・・・食堂で働いてるおばちゃん達って、凄かったんだなあ・・・」
屋上で煙をくゆらせながら、俺はため息をついた。
いやあ・・・まさに戦場であった。
世のお父さんお母さんたちは毎朝あの状況なんだなあ。
小学生たちは遠慮がちだったが、保育園の子供たちのパワーときたら・・・
もう疲労困憊でござるよ、うん。
「わん!わぉ~ん!」
「待てー!」
「あはは、待って待って~」
駐車場から楽しそうな声が聞こえてくる。
サクラが子供たちと駆け回って遊んでいるようだ。
「むーさん、つっかまえたー!」
・・・いや巴さんの声も聞こえるんだけど!?
「よーし!今度はおねえさんが鬼だからねー!そーらみんな逃げた逃げたーっ!!」
・・・璃子ちゃんもいるみたいだな。
今までは自分が最年少だった分、小さい子たちが増えて嬉しいんだろう。
いいお姉さんになってあげてほしいなあ。
子供たち・・・特に保育園の子たちは、昨日のことが嘘のようにはしゃいでいる。
・・・いや、半分は空元気だろうな。
じっとしている方がしんどいんだろう。
俺も・・・ゆかちゃんが死んでしばらくはああだった気がする。
はしゃいではしゃいで・・・ふっと我に返ると、たまらなく悲しくなったのを覚えている。
あまり大声を出すとゾンビの心配はあるが・・・周辺にはほぼいないので大丈夫だろう。
それにここ、塀が高いし。
「こちらにいらっしゃいましたか」
神崎さんがやってきた。
少し申し訳ない顔をしている。
「あの・・・寝坊してしまって・・・」
「いやいや、昨日夜警してくれてたらしいですね?ゆっくりしていてくださいよ」
そうなのだ。
神崎さんは昨日、かなり遅くまで動いていてくれたようだ。
夜警に、バスに何か発信機とか爆発物とかが付けられていないか調べてくれていたらしいし。
そこらへん、俺は全く頭になかったので大変助かった。
「明日の朝は必ず作りますので・・・!」
昼と夜は斑鳩さんが固定で作ってくれるのだ。
何度も話し合ったがその決意は固かったので、もう俺は甘んじて享受することにしている。
なんでも、『恩返しの一環』なんだそうだ。
マジで気にしなくてもいいのに・・・
「そんな気にせんでも・・・あ、だったら一緒n」
「やりましょう!!」
判断が早い!
・・・俺が寝坊しないように気を付けねばいかんな。
「こほん・・・先程、御神楽高校と連絡が取れました」
気を取り直して本来の目的を話す神崎さん。
「おお、それはよかった・・・それで?」
「はい、昼までに来てくれれば一緒に連れて行ってくれるそうです」
ありがたい!
お言葉に甘えようかな。
「それと・・・すみません、先日の件も合わせて・・・私は各方面への通信のためにここへ残ります・・・」
まるで目の前で店員に『すいません売り切れッス』とでも言われたような、そんな苦渋に満ちた顔をしている。
・・・そんなに悔しがることか?
「いえいえ、そっちの方が大事でしょ」
「しかし、もしまた例の宗教団体が襲撃してくれば・・・」
「そこですよ神崎さん、やつらはこっちに来るかもしれないんです」
聞けば、例のカス宗教連中は龍宮市街での活動は確認されていないらしい。
ということは、こちらのような僻地っていうか田舎を狙うかもしれない。
昨日聞いた妄言が本当だとすれば、奴らは殺しが『救い』だとマジで信じているらしい。
頭をカチ割って中を確かめてみたいもんだ・・・あ、やっぱナシで。
ろくでもない病気とか持ってそう。
そんなわけで、神崎さんたちには最重要任務を遂行してもらうことになる。
「子供たちのこと、お願いします。これは、神崎さんにしか頼めない事です」
「・・・ず、ずるい言い方ですね。ですが任されました、ふふ」
目を見てお願いすると、神崎さんは顔を赤らめて承諾してくれた。
やはり、神崎さんはいい人だなあ。
「煙草1本も追加でくださいね」
「1本でも1カートンでもどうぞ、相棒」
俺達は、顔を見合わせて笑い合った。
うんうん、いい相棒だよな俺達。
「・・・何か無性に腹が立ったのですが」
ナンデ!?
「センセイ・・・」
「うお、どうしたんですかライアンさん」
あの後俺は、七塚原先輩の軽トラで御神楽高校に来た。
皆さんは俺を見知っているのでいつも通りだが、先輩が車から出てきた瞬間に緊張していたな。
わかるよ、うん。
迫力が・・・ね?
でもいい人なんですよ、本当に。
まあ、そんなわけでふれあいセンターへ行くべくやって来たわけなんだが・・・
ライアンさんの様子がおかしい。
いつもならダッシュで来そうなものなんだが、今日は何やら沈んだ感じだ。
なんかあったんだろうか?
「アー、その、聞きました。昨日のコト・・・」
・・・なるほどな。
近隣で起こった大規模避難所の壊滅だし、そりゃ注意喚起の意味で周知するよなあ・・・
「子供、みんな、カワイソウに・・・」
言う端から、ライアンさんは目に涙を溜めている。
・・・本国に妻子がいるもんなあ。
ナイーブにもなるってもんか。
「・・・みんな、じゃないですよ。うちで14人保護してますから」
「ワッツ!?オオ・・・よかった、デス」
俺の話を聞くや否や、ライアンさんは嬉し泣きの表情だ。
・・・いいパパなんだろうなあ。
一刻も早く家族と再会できるように、俺も祈っておこう。
「田中野さん、どうもです。今日はよろしくお願いします」
森山さんも近付いてきた。
いつものような表情だが、少しだけ曇っている。
まあ、当たり前だよな。
俺としては、縁もゆかりもない大人が死んだと聞かされれば『ほーん』くらいの感想しか抱かないが・・・子供なら話は別だ。
死は悲劇ではあるが、その中でも子供の死はとびきりの悲劇なのである。
あと、犬猫とか。
「やあどうも・・・今日は合同で当たるんですね?」
緑色の装甲車・・・(兵員輸送車という名称だと神崎さんが前に教えてくれた)に乗り込むべく準備している人たちは、ここの避難所の現状を示すように3つの陣営で構成されている。
警察、自衛隊、そして駐留軍だ。
「ええ、どこか1つの陣営に偏ると不測の事態に対応できないということらしいです」
「臨機応変な即応部隊、ってやつですか。頼りにしてますよ?」
「いやあ・・・僕は格闘がからっきしなんで・・・」
苦笑いをしながら、森山さんが頭をかいた。
・・・そういう所は弟と一緒なのなあ。
いや待てよ、『格闘が』って言ったな?
「も、もし鷹目さんがいれば百人力なんですけどね!彼女の狙撃の腕前は凄いんですよ!とっても!」
「ヘーソウナンダー」
・・・こういう所も弟と一緒なんだなあ。
しかし鷹目さんにそんな秘密が・・・人は見かけにはよらない、というのは本当らしいな。
「今回、指揮は八尺鏡野警視が執るんです」
「ほうほう、そりゃあ安心だ・・・まあ他の2人でも安心なんですがね」
さすがに責任者が3人も出張っちゃ、ここに何かあった時に支障が出る。
あくまで彼らの仕事は避難所の防衛と運営なのだ。
今回は、銃器の回収が第一目標なんだろう。
あと車とかかな?
・・・昨日はよく見てなかったが、あの大型バスとかも修理すれば使えるかもしれんし。
「センセイ、ドーゾ。ソチラの人モ・・・」
ライアンさんに呼ばれたので、先輩と一緒に兵員輸送車に乗り込む。
どうやら3台で行くらしい。
・・・窓とかないのな、これ。
そりゃあ、戦場を走る車だからそうかあ。
でもこいつなら銃撃を喰らってもびくともしなさそうだ。
ほうほう・・・横向きに向かい合って座るのか。
映画で見たな、そう言えば。
狭い車内で窮屈そうに六尺棒を抱える先輩を見ながら、俺は煙草を・・・喚起できにくそうだからやめとこ。
特筆すべきことは何もなく、俺達は1日ぶりにふれあいセンターに到着した。
いつもとは違い、暗くふさぎ込んだライアンさんと、それと同じような雰囲気の皆さん。
会話が弾むどころか、どんどんと空気は落ち込み・・・そのまま到着したわけだ。
生存者ゼロだもんなあ・・・行きたくないよなあ。
車体後方の扉が開くと、ガソリン臭や焦げ臭さが鼻を突く。
1晩経って鎮火しているようだが、それでもこの有様である。
「即応!各自展開!」
「MOVE!MOVE!!」
おお、流石だ・・・
動きが速いなあ。
銃を手に素早く展開した人員が、駐車場で生き残っているゾンビを瞬く間に掃討していく。
「いやあ、すごいですねえ」
「・・・あの、森山さんは?」
何で俺達と一緒にいるんだ。
ライアンさんなんてすごい形相で飛び出して行ったぞ。
「ああ、僕はお2人の護衛・・・です、一応。八尺鏡野警視直々の命令でして」
ほう。
直々とは・・・かなりの有能人物ということか。
「よく話してるみたいだから丁度いいだろうってことで、へへ」
あ、そう・・・まあいいか。
当の八尺鏡野さんは遠くの方で駐車場掃討の指示を出している。
うお、駐留軍には英語で指示してるぞ・・・
さすが警視。
ハイスペックでござるなあ。
「行くか、田中野」
そう言って、先輩は歩き出した。
駐車場は皆さんに任せて、俺も軽トラを動かさないとな。
入り口塞いでるし。
「了解です」
明らかに重くなった足を動かしつつ、俺も続く。
軽トラを移動させて玄関から入り、片っ端から窓を開けていく。
光が差し込み、内部の惨状が露になる。
・・・ま、一階のここらへんは俺たちがこさえたカスの死体しかないからな。
「うわあ・・・これ、お二人がやったんですよね?」
しっかりと拳銃を構えた森山さんが、恐る恐る聞いてくる。
「ええ、襲い掛かってきたのでやむを得ず・・・」
「そうですか・・・それは仕方ないですね」
嘘だ。
たとえ目の前で命乞いされても殺してやった。
必ず、殺してやった。
多少明るくなった廊下を歩き・・・体育館への扉へたどり着く。
あの時先輩が吹き飛ばしたので、ぽっかりと闇が口を開けている。
大きく深呼吸していると、先輩が中へ入る。
俺達も、後に続く。
むっとする血の臭い。
何とも言えない、据えたような臭い。
暗闇に浮かぶ、遺体の数々。
「・・・っ!」
森山さんが口を押さえてえずく。
昨日は頭に血が上っていて気にならなかったが、慣れていないとかなりきついだろう。
まずは視界を確保しなければならない。
それに、運び出すなら駐車場側の扉を開けておく必要がある。
壁に沿って歩き、扉を探す。
そうして見つけた扉を開くと、目に痛いほどの光が外から飛び込んできた。
駐車場の銃撃は終わったようで、扉の音に外の皆さんが振り向いた。
「った、田中野さぁん!」
間髪入れずに森山さんの悲鳴が聞こえる。
「あ、あれ!あれ!!」
急いで振り返った俺の目に、それは飛び込んで来る。
体育館の、反対側の壁。
そこに、赤黒い絵の具のような・・・いや、血で書かれた文様がある。
これに、どれほどの人間の血が使われたのか考えるだけでも血管が切れそうだ。
曼荼羅と十字架を掛け合わせたような歪な文様だった。
それが壁一面に、でかでかと書かれている。
だが、それだけではない。
「・・・んじゃねえぞ」
巨大な文様の下部分に、書いてある文章。
それを認識した瞬間、俺の脳には怒りの感情しかなかった。
「ふっざけんじゃねえぞ!!畜生がぁああ!!!!」
『哀れな魂に、祝福あれ』
「ぬううううううううううああああああああああああああああ!!!!」
先輩の声が体育館に響く。
六尺棒が宙を飛び、文様に音を立てて突き刺さった。
・・・すごい勢いだ。
毒気を抜かれた気持ちで、先輩の背中を見る。
殺気が、その大きい背中から立ち上っていた。
「ええ、度胸じゃのう・・・カバチタレが」
地の底から響くような声で、先輩が言う。
「ぶち殺しちゃる・・・おどれら、全員・・・わしがぶち殺しちゃるけぇのう・・・!!」
「・・・先輩、そこは『わしらが』でしょう?」
俺がそう言った瞬間のことだった。
外から爆音が響いた。
弾かれたように振り返ると、駐車場の入り口付近で火柱が上がっている。
爆弾・・・か?
怒号と銃声が交錯する中、爆炎の隙間から何かが見えた。
「先輩!・・・鴨がネギ背負って来ましたよォ!!」
腰の刀を確かめ、開けた扉から外へ飛び出す。
「田中野さん!?」
背後から森山さんの声が聞こえるが、気にしている暇はない。
俺は確かに見たのだ。
爆炎の中に見える・・・
『みらいの家』という文字を。
「来やがったな・・・来やがったなァ!!」
走りながら刀を抜き、肩に担ぐように保持しながら駐車場を駆ける。
「待ってろよ・・・逃げるんじゃねえぞォ!!」
体が軽い。
頭は冷えているが、腹の底が熱い。
「落とし前、付けさせてやるからなぁ!!!」
放置車両に飛び乗り、天井やボンネットを蹴り付けながら走る。
「首ィ・・・洗って、待ってろ!」
あの趣味の悪い題字のバスが見えてきた。
性根の腐った奴らの姿が見えてきた。
「南雲流ゥ!!田中野一朗太ァ!!!」
兵隊さんたちの銃撃に気を取られている奴らに、トップスピードで近付く。
「参るッ!!!!!!!!!!!」
殺気と一緒に口から熱気を吐きながら、俺は走り続けた。




