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22話 懐かしの詩谷のこと

懐かしの詩谷のこと




「またね~!レオンく~ん!!」


「おじさ~ん!気を付けて~!」


「お気をつけて!皆さん!」


「おーん!あぉおーん!!」


「おーう!たぶん1週間以内に帰ってくるからなー!せんぱーい、よろしくお願いしまーす!!」


「わしにまかしとけぃ!!」


高柳運送から出発しつつ、後ろを振り返って叫ぶ。

先輩夫婦に斑鳩母娘、それに璃子ちゃんに抱っこされて大暴れしているサクラ。

・・・すまんなあ、今回はお留守番だサクラよ。

運転席の窓から手を出し、軽く振ってからアクセルを踏み込んだ。

後ろには、もはや見慣れた山中カーが続く。



山中さんとレオンくんを保護してから3日後。

俺は、詩谷市に向けて出発した。

何故3日も後かと言うと、季節が梅雨を思い出したかのように雨が続いたからだ。

ゾンビが元気になる雨の日は、不測の事態が起こるかもしれない。

新たちの大事な母親を送り届けるのに、事故でも起こしちゃ目も当てられないからな。


今回の道程としては、まずレオンくんをおっちゃんの家に連れて行く。

次に、山中さんを避難所に送り届ける。

そして最後に、秋月の避難所で花田さんに報告だ。

家のことも気になるが、それは山中さんを無事送り届けてからにしたい。


なお、今回俺は友愛に足を踏み入れるつもりはない。

宮田さんには、山中さんに手紙を渡すことで間接的に報告する。


何でかって?

山中さんを俺が保護したことがバレたら、また捜索を依頼されるかもしれないしな。

それに、新たちをやっかむようになる避難民が出るかもしれない。

・・・美玖ちゃん一家の件で俺も成長したのだ。

あまり『使える』ことを表に出すわけにはいかない。

山中さんは、自力で避難所にたどり着いたってことにしてもらう。

それがお互いのためなのだ。


「なんというか、随分久しぶりに行く気がしますね、詩谷市には」


窓から吹き込む風に目を細め、神崎さんが言う。


「俺もそうですよ・・・覚悟はしていたけど、龍宮に行ってからだいぶハードな毎日でしたもんねえ」


頭のおかしい生存者が多いわ、ゾンビはちょっぴり強いわ。

疲労の度合いが詩谷の比ではない。

温泉にでも入りたい気分だ・・・


「行方不明の自衛官に関する情報、今んとこないですねえ」


「もっと市街の中心部に向かったのでしょうね、恐らくは」


そうだよなあ。

原野に硲谷にリュウグウパーク。

正直、龍宮市の入り口もいいとこだ。

まだまだ先は長いなあ・・・

ま、一歩一歩手探りでもいいから安全に行こう。

師匠くらい強けりゃ一気に大暴れできるんだろうが、残念ながら俺はただの人間なので・・・


「どうしました?田中野さん」


「ああ、いや・・・進みが遅くて、神崎さんに迷惑かけてるなって・・・」


俺はお手伝いだが、神崎さんはお仕事。

・・・流石に申し訳ない。


「もう、田中野さん!」


いででで!?

耳が、耳が千切れちゃう!?


「まだそんなことを言ってるんですか!・・・まったく」


神崎さんが俺の耳を解放する。

おおう、耳がパージするところだった・・・


「私は、あなた以外とこの任務に就くつもりはありませんでしたから・・・単独行動なら、これほどの成果は挙げられていないでしょう」


いやあ、さすがにそれはほめ過ぎでは・・・?


「謙遜している気配がします!」


いぎいいいいい!!また耳がああ!!!!!


「まったくもう・・・もっと自分を誇ってください、田中野さん」


「・・・俺がイキり大魔王みたいになったら嫌でしょう?」


「問題ありません!自信満々な田中野さんもいいものです!たぶん!」


・・・言い切ったよ、この人。

なんというドヤ顔だ。


「・・・ドヤる神崎さんもいいものですね、甲乙つけがたい」


「わたっ!私のことはいいんです!私は!!」


おお、顔が真っ赤だ。

神崎さんこそ自己評価が低いのでは・・・?

しかし、流石の俺でもこれ以上言うと藪をつついて八岐大蛇だ。

黙っていよう。


「・・・まあ、神崎さんに見捨てられないように頑張りますよ」


「じゃあ、私も田中野さんに見捨てられないように頑張ります、ふふ」


それはあり得ないと思うが・・・まあいいや。

仲良くやっていこう。

大事な仲間だもんな。


なにやら照れくさい気分を感じつつ、俺は煙草を咥えて火を点けた。




「順調、順調~」


元々田舎道だったので、何事もなく詩谷市に入れた。

恐らく俺以外この道使ってないんだろうなあ。

後ろの山中カーも問題なさそうなので、このまま一気におっちゃん宅へ向かおうか。


そんなに離れていないのに、何故か懐かしい気持ちで土手を走る。

横転した車なんかは、やはり変わりがないように見える。

この前のヤクザ以外で、普通の車が走ってるの見たことないなあ。

アホのトラックとは二度と会いたくないけど・・・会うんだろうなあ、たぶん。

たまたまかち合ってないだけかもしれんなあ。


「あ、覚えていますか田中野さん、アレ」


神崎さんが指し示す方向を見ると、なんとも無残な状況になったキャベツ畑が見える。


「ああ・・・俺のキャベツが・・・もちろん覚えてますよ」


俺のキャベツではないけども。


「初めてお会いした時もキャベツを丸かじりしていましたね、懐かしいです」


そういえばそうだったなあ。

あの時は、まさかこうして行動を共にするとは思わなかった。


「人生ってわからんもんですねえ、こんな状況にならなきゃ、神崎さんたちと会うこともなかったでしょうし・・・」


「縁は奇なり・・・ですね。私も、その場合この土地にとどまることはなかったですね・・・」


まあ、頼りになる仲間や可愛いサクラとも会えた。

よかった・・・とは言えないが、なかなかどうして人生ってのは複雑怪奇だなあ。


「・・・そういえば、今まで聞いたことがなかったですけど、神崎さんはなんでウチの流派を知ってたんです?」


〇ィキもないし、演武大会なんてのもやってないのに。


「叔父の話で知ったんです、とても強い流派だと・・・それで、いつかこの目で見たいと思っていました」


なーるほどね、花田さん経由か。


「はは、強いのは流派じゃなくて花田さんを壁にめり込ませた師匠でしょうに・・・」


「叔父が・・・壁に!?ちょちょちょちょっと田中野さん!!その話を詳しく!詳しくお願いします!!」


「危ない危ない事故る事故りますから!?」


走行中の運転手を揺らすのはご勘弁ください!!!

ほんっと武術関係だとタガが吹き飛ぶなこの人!!

っていうか花田さんそれ話してなかったのかよォ!?

・・・まあ、自分が負けた話を詳しく言いたくなかったんだろうけどさ。



「・・・あ、あの、田宮先生は本当に人間ですか?」


「・・・俺も怪しいと思ってます。ワンチャン天狗か鬼の生き残りかもしれません・・・もしくは妖怪」


師匠と花田さんの試合や、数々のエピソードを教えると神崎さんは呆気にとられた顔をしている。

目の前で見ていた俺ですら信じられんからな。

特に刀で兜を真っ二つにしたのとか。


『駄目じゃ、これほど準備に時間がかかれば実戦では使えん』


なんて不満そうに言ってたけど。

そもそも現代のどこで鎧武者と戦うシチュエーションがあるんだよ・・・

だいたい、なんでそんな技があるんだよ・・・

南雲流は戦国時代に大暴れでも・・・してたんだろうなあ・・・

師匠みたいなのがウジャウジャいたんだろうなあ。

控えめに言って地獄だそれは。


「それにしても、南雲流は警察沙汰がその・・・かなり多いですね」


「基本的に売られた喧嘩は全部格安で買うのが師匠ですし・・・」


七塚原先輩や後藤倫先輩も大暴れしてるしな。

ああ、俺や六帖先輩を少しは見習ってほしい。

いや・・・そういえば六帖先輩もあったな、警察沙汰。

うん、やっぱり血の気が多いや南雲流!


「後藤倫先輩が師匠の次に多かったですかね?主に痴漢関係で」


「お、お綺麗だそうですもんね・・・」


何故ちょっと緊張するのだ、神崎さん。


「それもあるし、助けに入ってボコボコにもしてましたからね・・・集団婦女暴行未遂の犯人たちを全員病院送りにしたこともあったなあ・・・」


男5人を相手に、関節を破壊して半殺しだもんなあ・・・

全員足が逆関節になってたらしい。

絶対後遺症残ったぞ、そいつら。

・・・まあ同情する気は全くないのだが。


近隣住民の通報で駆け付けた警察が、真っ先に先輩を捕まえようとしたらしいし。


「正義感の強い方なんですね!」


・・・そうかなあ。

俺は覚えている。

もろもろの事情聴取等が終わり、道場に顔を出した時に聞いたあの人の言葉を。


『多人数の屑は出来のいい木人形みたいなもの。満足』


・・・あの晴れやかな顔は決して正義の発露ではなかったと思う。

あんな顔のヒーローがいるかよ。

助けられた女性がトラウマになっていなければいいのだが。

主に先輩の暴力描写で。


おっと、考え事をしていたらそろそろおっちゃんの家だ。

みんな元気にしてるかなあ。



ハザードを点灯しながら家の前に停車。

ドアを開けて降りる。

すると、いくらもしないうちに家の中から足音が聞こえてきた。

がらりと玄関が開き、美玖ちゃんが走り出てくる。

早いなあ。

車の音、覚えてたんだろうなあ。


「やっ、美玖ちゃん」


手を上げて挨拶すると、美玖ちゃんが俺の顔を見るなりダッシュ。


「いちろーおじさぁん!!」


そのまま嬉しそうに俺に抱き着いてきた。


「おっとと、元気そうで何よりだよ」


・・・ちょっと背が伸びたんじゃないか?

子供の成長は早いからなあ。

背中に手を回し、受け止めて抱っこする。

相変わらず軽いなあ・・・肉をもっと食った方がいいな。


「・・・おかえりなさいっ!」


「はい、ただいま」


日向の向日葵のような笑顔だ。

うーん、癒されるなあ。


「うわ!事案だ!!」


続けて出てくる美沙姉。

うーん、相変わらずだなあ。


「やめなさいよ美沙姉・・・とりあえず五体満足で帰って来たよ、言われた通り」


腕を撃たれたことは永遠に黙っておこう。


「うむうむ、よろしい!美玖の抱っこを許す!」


「・・・有難き幸せにござる」


もうしてるんだけどなあ・・・


「凛おねーさんも、おかえりっ!」


「ふふ、ただいま美玖ちゃん」


微笑みながら美玖ちゃんの頭を撫でる神崎さん。


「あれ・・・お客さん?」


美玖ちゃんが、車からケージを持って降りてきた山中さんを見る。

中のレオンくんは眠っているのか静かだ。


「そうそう、お客さんだよ」


「はじめまして!桜井美玖です!」


俺に抱っこされたまま、美玖ちゃんが元気に自己紹介する。


「初めまして、山中美登里です・・・田中野さんが言ってた通り、可愛い子ねえ」


「えへへー・・・お姉さん、その籠なーに?」


照れ照れの美玖ちゃんは、山中さんのケージを見る。


「ああ、そのことについて説明するからさ。中に入れてもらっていいかな、美沙姉」


「どうぞどうぞ、何のお構いもできませんが・・・あ、私は桜井美沙、美玖の母親です」


「ご丁寧に、ありがとうございます」


うーむ、さすがに山中さんにはしっかり対応するんだなあ・・・

俺は妙な感想を抱きながら、美玖ちゃんを抱えたまま歩き出す。




「ぎゃう!」


「「「か~わ~い~い~!」」」


「きゅるるぅ!」


「「「か~わ~い~い~!!!」」」


・・・さっきからかわいいしか言ってないけど、大丈夫かあっちは。


庭先ではレオンくんが不思議そうに周囲を見回している。

美玖ちゃんに由紀子ちゃん、比奈ちゃんに美沙姉。

それに小鳥遊さんとおばちゃんの女性陣は、レオンくんの一挙手一投足に夢中だ。

・・・敦さんは狂ったように写真を撮っている。

レオンくんではなく、レオンくんをかわいいかわいいと言う美玖ちゃんの写真をだ。

うーん、いつも通り。

平和って最高だ。


・・・ま、あの分なら大丈夫だろうけど・・・レオンくん人懐っこいし。

山中さん曰く、レオンくんは珍しいほど社交的なレッサーパンダなのだそうだ。

普通はここまで人間に懐くことは稀らしい。

産まれた時に育児放棄され、人間の手で育てたらしいのでそれが原因かなあ。



俺はと言えば、茶の間でおっちゃんたちと話している。

ちょうど、龍宮に入ってからのアレコレを語り終わったところだ。


「そうかそうか、無我夫婦も元気そうで何よりだな・・・まあ、あいつがどうこうなるとは思えねえけどよ」


お茶を飲み、久しぶりに会ったおっちゃんが笑う。

俺も一口・・・・うーんうまい。

小鳥遊さんかおばちゃんが淹れたんだな、落ち着く味だ。


「そっか、おっちゃん先輩とは顔見知りだったんだね」


「むしろ田宮先生んとこの門下生はみんなそうだよ・・・逆に、おめえが知らねえことにびっくりだわ俺は」


俺就職してしばらくこっちを離れてたからなあ・・・

帰省したら道場には顔を出すようにはしてたけど。


「あ、そうそうおっちゃん、兜割すごい役に立ってるよ・・・いいものをありがとう」


「おう、バンバン使えよ。ちなみに無我の六尺棒も俺が用立てたもんだ」


・・・あの特注品、おっちゃんが関わってたのか。

頼んだら大砲くらい手に入りそうだな・・・


「それで、うちであのかわいいのを預かってほしいって?」


おっちゃんが山中さんを見る。


「は、はい!あの・・・急なお話ですが、もしよろしければ・・・私も定期的に様子を見に来ますので・・・図々しいお願いですが・・・」


山中さんは恐縮したように頭を下げる。

ここで断られたら、俺が龍宮に連れて帰るつもりだ。

山中さんにはなんとしても新たちと一緒に暮らしてほしいしな。

その場合、レオンくんは俺が定期的に連れてくる予定だが・・・


「いいぜ」


早い!判断が早い!!

頼もしすぎる!


「急に連れてきた俺が言うのもなんだけど、ほんとにいいの?おっちゃん」


「美玖のあの様子を見ちまうとなあ・・・顛末も聞いたし、問題ねえよ」


おっちゃんが孫に弱くて助かった!

美玖ちゃんに犬を探してきてやろうかなんて言ってたから、なんとなくいけるとは思ってたけど。


「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!!」


「ゾウやライオンは無理だけどよ、あれっくらいなら問題ねえさ」


涙目で頭を下げる山中さんに、おっちゃんが笑って答える。


「友愛には俺も定期的に出稽古もどきで行ってるしな、その時にでも連れてってやるよ。なんなら息子さんたちも一緒に様子を見に来たらいい」


なんて懐の深さだ・・・俺は死ぬまで頭が上がらんな。

なんとか丸く収まったな・・・なんて思っていると。

不意にとふとふと足音が。


「きゅるう」


おや、レオンくんじゃないか。


レオンくんはとふとふ小走りでこちらへ来ると、山中さんの前でおっちゃんに向けて立ち上がった。


「ぎゃぁう!」


・・・なにこれすごくかわいい。

両手を広げてしっかりと立って・・・いやちょっと待てよコレたしか威嚇のポーズじゃない?


「レオン!・・・違うの、いじめられてるんじゃないのよ?この人はとってもいい人なの」


山中さんは慌ててレオンくんを後ろから抱きかかえ、諭すように優しく話しかける。

なるほど、おっちゃんに山中さんがいじめられていると思ったわけか。

懐かれてるなあ、山中さん。


「きゅるぅ」


レオンくんは振り返って山中さんを見た。

『ホント?』って顔だな。


「本当よ、大丈夫、大丈夫よ」


「おう、勘違いさせてすまなかったなあ」


「・・・きゃぅ」


頭を掻きながら言うおっちゃんを見たレオンくんは、小さく一声鳴いた。

・・・賢いなこの子。

レッサーパンダってどんくらいの知能なんだろうか。

あ、とりあえず足を拭いてやろう。

かわいい足だなあ。


足を拭いてやると、レオンくんは俺にまた頭をぐりぐり押し付けて女性陣の方へ帰って行った。

後ろ姿もかわいい。


「随分懐かれてるなあ・・・あんたも、悪い人間じゃなさそうだ。遠慮なく頼りなよ」


「ありがとうございます、中村さん・・・」


ふう、これで八方丸く収まりそうだ。

一安心だなあ。



それからは他愛もない世間話を少しした。

詳しい飼い方や注意事項をおばちゃんたちに説明すると言う山中さんが、レオンくんの方へ歩いていく。

さて・・・それが終われば友愛に向けて出発だな。


「お、そうだそうだ」


不意におっちゃんが思い出したように言う。


「綾ちゃんな、この前ここに来たぞ」


「え、後藤倫先輩が?」


後藤倫綾(ごとうりん・あや)ってのが先輩の本名だ。

先輩から詩谷に行ったとは聞いていたが、こっちにも来ていたのか。


「なんでも知り合いの様子を見に来たらしいぞ、お前も探してた」


「俺ぇ?なんでまた」


「さあてなあ・・・龍宮に向かったって言ったらすぐに出てったぞ。一泊くらいしてきゃいいのによぉ」


なんでも、デカくてゴツいバイクで移動していたらしい。

そういや大型二輪持ってるって言ってたなあ、いつか。


「秋月の避難所に、知り合いを探しに行くって言ってたっけな」


おやおや、意外と近いうちに会うかもしれんなあ。

六帖先輩も元気にしているだろうか。

たしかあの人は龍宮の北の端っこあたりに住んでたな。

・・・まあ、元気だろうけどさ。

俺がこうして生きてるんだ、先輩方は余裕に決まっている。


「お前が油断してでっかい傷こさえたって教えてやったらよお、『顔面ぶん殴る』って言ってたなあ」


がはは、とおっちゃんが笑う。

・・・なんでさ!?

昔っから何考えてるかわからんな、あの人はもう・・・


「心の底から会いたくねえ・・・」


「愛されてるねえ、ボウズ」


「お手軽サンドバック程度にはね・・・」


溜息をつき、俺は煙草に・・・いやいやここは駄目だ。

子供もいるしなあ。


「わた!私がお守りしますから!」


何故だかやる気十分な神崎さんの声を聞きながら、俺はもう一度大きな溜息をついた。

いや、そんな展開はない・・・

ないと信じたい。

切実に。

俺の頬骨の平和のためにも。


「友愛から戻ったらまた泊って行けよ、美玖も喜ぶしな」


「・・・いつも悪いなあ」


「そん代わり、稽古に付き合えよ」


「・・・それは嫌だなあ」


「宿賃だ、宿賃」


三度目の溜息は、今までで一番大きなものだった。

これにて年内の投稿は終了です!

読者の皆様のお陰で、ここまで続けることができました。

来年も頑張りますので、応援よろしくお願いします!


それではよいお年を!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 後藤・倫じゃないのかーい
[一言] 来年の投稿楽しみにしてます! 良いお年を~!
[一言] 来年も楽しみにしてます。 カクヨムの方も見つけたので、読み返しときます。
感想一覧
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