表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/120

朝のスキャンダル

 家にやっとついた。

 ボロアパート万歳。今までの浮世離れした世界を思い出し、懐かしさと嬉しさで頭がおかしくなる。

 ついた途端、携帯電話が鳴る。出た瞬間、歩美ちゃんが大声で怒鳴っている。


 「美代! やっと繋がった。あんたどこにいたの?」


 あ、今まで海上にいた為、電波が届かなかったことを思い出した。


 「美代、もしかしてまだテレビ見てないでしょ?」

 「今、帰ってきたから、まだ見てないよ。なんか重大事件があったの?」


 きっとまた将棋ニュースだと思い、電話を片手に昨日蓮司から借りた洋服を洗おうと荷物を整理していたところだった。もちろん、蓮司はそんな事しなくていいと言ったが、無理ヤリ剥ぎ取ってきた。

 テレビも同時につけたが、これと言ってお昼のニュースで歩美が驚愕しそうなニュースはなかった。


 「今、ニュースみているけど、そんなすごいニュースやってないし、面白い番組でもやっていたの?」

 「馬鹿! 何いってんのよ。ゴシップニュースなんて昼のニュースでやらないよ。ネットニュースでもすごいって!」

 「ち、ちょっと何言ってんの?歩美」

 「あんた蓮司会長っと、どうなっているの?」

 「え?」

 身体のキスマーク、いや、虫刺されマークと呼ばしてもらおう、それが身体中にある美代はなんていいっていいかわからない。


 「わかった。ちょっと待ってて。いまリンクを送るよ。携帯で観れるでしょ?」


 しばらくかかった。歩美のリンクが徐々に画像がダウンロードされる。

 最初、自分が何を見ているかわからなかった。某有名週刊誌だった。


 『財界プリンス!白昼堂々デート! 相手が一般人の女子大生』


 な、なんですと!


 誰でしょうか、この女子大生とは!

 マズイ気がする。一応、カテゴリー的には私は女で大学生。つまり、女子大生だ。

 画面にはあの中華街、白昼堂々抱き合っている蓮司と美代がいた。美代は一般人である為、顔がグレーの帯が付いていた。

 しかも、その後仲良く中華レストランで待つ様子やら、あの有紗のコンサートの観賞に手を繋いで劇場を歩いているところまで激写されていた。

 説明文には、『あのクリスマスに恋愛報道があったばかりの財界の大物、あのプリンス、恋があの噂になった女優、有紗の舞台を二人で見学!』

 『愛の三角形か? とまで書かれているか、一応、蓮司側は、プライベートなのでお答えできないが、信頼のおける女性とまで表現していた』

 『もしかして結婚秒読みかもしれない』とまで言い切っていた。なぜなら、雑誌の記者に質問された蓮司側のコメントが『蓮司会長の今、一番大切な女性です』とまで言い切っていたからだ。


 だれ! そんな無責任なことを言う人は!

 呆れて果てて、言葉が出ない。

 あ、でも、今っていう言葉はしっくりくる。

 そういうことかも知れない。


 今の遊び相手だ。このスキャンダルでさえ、あの人には全く何処行く風みたいに、聞き流しているのだろう。

 そんな中、また電話が鳴った。歩美ちゃんだと思って電話に出た。


 「あ、歩美ちゃん、違うから! 結婚とか全く!」

 「……美代ちゃん、お久しぶり。わかる?」


 電話口に懐かしい声がする。大人の男の低音な声だった。


 「もしかして、白石さん?」

 「あー、良かった。覚えていなかったら、どうしようかと思った」

 「そんな、白石さん、いえ、白石先生に助けられていなかったら、いま私はここにいないですから」

 「良かった。あの記事読んで、びっくりしてね。どう隠してあってもなんだか君に似ていたから、もしかしてと思ってね」

 「え? 白石先生もあんなゴシップ読むんですか?」

 「まあー、ずっと気になる子に似ていたら、ドキっとするよ」


 昔からハンサムボーイで結構有名だった白石先生は、昔からちょっとキザなのだ。その笑いを取りながら言ってくるキザな言葉が、美代にとってはかなり馬鹿馬鹿しく、笑えるものだった。


 そして、美代があの暗闇から自分を救ってくれた張本人、白石 海斗だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ