表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/120

添い寝の意味がわからない

 あ、あれ?

 ここは?

 微睡みの中、ゆっくりと目を開いた。豪華な船内の丸窓が目に入る。ブラインドが閉めてあるので、そんなに眩しくない。

 ほーーっ。丸窓にもブラインドって作れんだねーっと感心していると、あっとまた自分の置かれた状況を思い出した。だが、今、昨日のことより、今の状況の方が遥かに問題で、どうして良いのかわからない。


 だって、私、は、裸なんです!!

 昨日、確か私、バスローブを羽織っていた。


 し、しかも、ええええ、案の定、後ろには多分裸っぽい蓮司が寝ていた。というよりより、くっついてる! え? もしかして、知らない間に、というか、寝ている間に終わっちゃたの? 事後なのこれ? 正直、なにを一番率先して隠していいのかわからない。自分の手の感触で何かを感じる。

 あ、あれ? パンツ履いているじゃん。え? じゃーセーフなの? なんなの? 完全に混乱してモゾモゾしている美代を蓮司が感じた。


 「お、おはよう……美代」


 チュッと頭の上にキスを落とされる。


 「え、あ、おはようございます。あの、この状況……」

 「あー、やっぱり、たまんないなっ、クソ」


 首の後ろをなにか柔らかい感触が伝わる。


 「ひぃっ、なにを!」

 「がまんしろよ、美代。これくらい」


 振り向こうと思ったら、いや、まずいっ。前が隠せない!

 蓮司が美代の背中をいたずらに、指で触った。


 「ひっいぃ!か、会長!、蓮司様!あーーっ」


 蓮司が耳元で囁く。


 「昨夜は……凄かったよ。美代って意外に大胆なんだな……」


 こんなときに限って、奴の超低音バリトンボイスが利きやがる。身体が全身の低音に反応するように震えた。


 「な、なにをおっしゃっているのでしょうか?」


 ふっと笑っている蓮司を耳元で感じながら、美代は、頭の中からフル回転で記憶を取り出す。おかしい、考えてもおかしい。いつから添い寝が、その、なんだ……そういう意味になったのだろうか?もしかしたら、寝ているうちに、この野獣に襲われ、え、もしかして、私、おそっちゃった?


 「何考えている?」

 「え、あのー、蓮司会長が言った意味をですねー。思考中です」

 「美代。ほとんど裸の男女がベッドのなかで語り合うのは、なんだ?」

 「あー、そうですね。それは……」

 「それは……?」

 「……わかりました。それは、今日か明日の天気予報です!」

 「………」

 

 蓮司が深くため息をついた。

 「仕方がないな。教えてやるよ、覚悟しろ」




 30分後。




 蓮司がベッドが、立ち上がり隣の部屋のシャワールームに消えた。


 「今、俺に裸を見せたくないなら、いま浴びるしかないぞ」


 放心状態。


 その言葉の意味をかみしめていた。

 

 ヤラレた。完全にヤラレた。どう考えても勝ち目のないゲームだった。想像を絶する甘い言葉。信じられないくらいの甘いキス。たったそれだけなのに、鳥肌が全身に立ちそうだった。

 誰がこんなゲームに勝てるんだ?誰がこんな甘い、ムカつくほどカッコ良い、しかも嫌味なほど優しい男を拒めるんだろうか?


 「や、やばすぎる。支度しなければ……」


 急いでシャワールームに入り、着替える。なぜか今日用意してあった洋服は、美代が好きなタートルネックのセーターに、パンツルックだった。

 気がきくなーと、感心していたら、その意味がよくわかりました。


 「ぎゃあーーーーー!」


 バスルームの鏡を見たら、絶叫した。

 身体全体にあの虫刺されを発見したのだ。


 「な、なにが? 起こったの?」


 自分の身体のマークを見つめ続け、先ほどのベットの上で、男女が正しく行う「会話」を思い出し、また赤面した。


 でも、おかしい。


 昨日も今も、こんなところ? キスされたっけ?

 身体中の赤い点を見ながら、思い出せない位置まである虫刺されのようなものを見た美代は、また考え込んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ