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美代、階段上がって、また降りた

 緊張感がやっとシャワーを浴びることで緩んできた。

 ようやくわかりました。大人のキスって、かなりやばいものだってことが……。


 何だか次のステップが恐ろしくなって、お風呂にも入っていいと言われたことを思い出す。大人のステップなど全くわからない美代は、あー、そうなんだ、お風呂に一人で入っていいということに喜んだ。誰も美代に対して、そんな長くお風呂入っちゃう人なんていませんよという人は、ただ一人、外で待っている蓮司以外はいなかった。完全にアメニティーにあったバブルバスで遊んでしまい、大騒ぎだった。


ーーおおおお~~!


 泡がどんどんとお風呂のなかで形成されていく様を見て驚いた。


ーーすっごいじゃん!


 先ほどまでの、ちょっと大人の階段を登り始めていた美代が、どう転んだか、完全に転げ落ちていた。バブルバスの泡の中に体をいれてみる。


ーーうほほほっ。いいねーー、なんだか夢の国だわ!!泡がつかめる!


 しばらくその泡まみれになって遊んでから、ハッといま自分の置かれた状況を思い出した。


ーーあ、やばい。いま、私、会長様に抱かれる予定でしたよね。


 決心したのもつかの間、あああ、なんだかまた身体にゾクゾクしたものが走る。蓮司の妖気さえも感じる笑みを思い出して、また身体が身震いする。


 完全に大人だ。会長はどう考えても初デートなどと、ふざけたことを言っているが、あちらはプロの世界の世界チャンピオンレベルだ。なんの競技だかわからないが、美代は自分は、自分は老後のおばちゃんが始めた趣味の日曜講座レベルなんです!!とまた訳のわからない例えにはまっていく。


 急いで泡をまたシャワーで身体から落とすと、これでまたパジャマを着るのもどうなんだ? と、覚悟を決めた女は思う。マッパで出るのは、そのどうも考えものだ。一応、パンツ装着の上、バスローブを羽織った。


 恐る恐るドアを開けてみる。


すると、ベットの上、パジャマのような室内着をきた蓮司が、ベットの中で寝ていた。


ーーあれ、もしかして、寝ちゃった?


 しかも、ベットルームのなかのコーナーテーブルには、夜食用なのだろうか? サンドイッチや果物、飲み物が置かれていた。


「あのーー、蓮司、、さん?」


 ちょっとおどおどしながら、ベットに近づく。

 静かに寝息を立てているようなので、他の部屋で寝ようかと着替えをもって出ようとした瞬間、急に声をかけられた。


 「美代、どこへいく……?」

 「うわぁっ、驚いた。起きていらっしゃったんですか? びっくりしましたよ」

 「ああ、ちょっと飲みすぎたかな。今日は」


 よくみると、サイドテーブルには、ウィスキーらしきものの飲みかけとボトルが置いてあった。バスローブ姿の美代を見て、蓮司は目を細める。


 「く、クるな……それ……」


 次どうしていいかわからない美代は蓮司を見つめる。そんな美代を見透かすかのように、蓮司が声をかけた。


 「美代。お腹が空いてないか? 吉澤が夜食を持ってきてくれたぞ」

 「え、本当ですか?実は、ちょーーーと、お腹空いています」


 こんな時には思ったが、やはり夜の作法の知識なんて皆無な美代は、その丸テーブルの横にちゃっかり座り、美味しそうにサンドイッチを口に含んだ。

 ベットの中から蓮司がその美代なんだかとても満足そうに、そして、愛おしそうに眺めていた。


 「美代、美味しいか?」

 「うん、美味しいです。こんなサービスすごいですね」

 「お前が良ければ、俺も嬉しい」

 「いやーー、これは特別ですよ。あ、これだけじゃないです。今日は本当に素晴らしい想い出になりました」


 まだある意味、そのデートの最後のクライマックスにいる張本人が、かなりボケたことを言い始めたので、蓮司もちょっと苦笑いをする。


 「美代、食べたら、ここにおいで……」


 蓮司が自分とは反対側のベットの上掛けを開いた。

 美代の笑み緊張が走った。とうとう大人の階段駆け上がっちゃうの?? 私?!

 その感情がありありと美代の顔に現れていた。





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