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扉を開けられたら、異次元でした

蓮司が私の肩を抱く。騒音は止まない。心配のあまり身体が震えてきた。


「ああ、美代。そんなに怖いのか?可愛すぎるな。今、ここで震えるお前を抱きしめて・・・ベットで・・あ、時間的には、いけるか? そんなヤワなドアではないしな」


「な、何ボケたこと言っているんですか?どうするんですか?誰かがこのドアを破って侵入しようとしているんですよ」


「大丈夫だ。性能的はまあ、そうだな、最低でも一週間はかかるだろうな。この屋敷ごとぶっ飛ばさない限り」


「え?一週間?」


「このドアは最新鋭の特殊合金できている。いまボルトが閉まっているから、開けてみるか? きっと心配しすぎて白髪頭になっている奴もいるかもしれないからな」


「て、荒手の強盗じゃないですか?」

「あり得んな。世界のトップの技術屋でも、ここまで騒音が中に聞こえてくるほど侵入するにはまあ、あと3日はかかるな」


「えーーー、じゃあ誰ですか?」

「見てみるか?」


そう言いながら、蓮司は自分の手をまず壁に内蔵されているタッチパネルにかざす。その後、眼球をスキャンさせパスワードを入力した。


その直後、ものすごい重厚な金属が擦れ合う音がしてきた。部屋全体に振動が伝わる。


ガチャン、ガチャン、ガチャン、ガチャン・・・


何かが開き始める音がした。


「さあ、開けてみようか」


蓮司が美代の肩を抱きながら、普通のドアを開いた。目の前の異様な光景に美代は、目を見張る。


****


美代は何か異次元の世界に迷い込んだのかと思った。


扉の外には、迷彩柄の男たちが30人ほど道狭しと並んでいた。中には違う色の戦闘服みたいなものを着ているもの達もいた。


映画の撮影現場に来てしまったのような錯覚を起こしていた。

まるで、SWATチームのような特殊捜査部隊がここに現れたような感じだ。みんな迷彩柄で顔全体が隠れるヘルメットを使用していた。唯一、映画と違うと思ったのは、誰も銃のような兵器を持っておらず、大型の機械と何台ものコンピューター、そして、何百はありそうなワイヤーと、なにか弾薬のような積み重ねたものが置いてあった。


そこにやはり防火用の紺色のジャンパースーツを着た男性が近づいてきた。美代の前に膝をつけて、手を握ってきた。


「み、美代様ーーっ。大丈夫でしたか? 嫌なこと、されませんでしたか?申し訳ありませんでした」


「え、もしかして、真田さん?どうしたの? この事態!!なんかあったの?」


「え、美代様、もしかして何も気がつかれていないんですか? しかも、お元気そうで、何も、その、なんとお聞きして良いか・・」

「あのー、扉からものすごい轟音が聞こえてきてですね、焦って蓮司、(ゴニョゴニョ)に言ったら、開けてみようかとなりまして・・」


じーーと、真田が蓮司を見つめる。


「こ、これは!蓮司様!!どういうミラクル?」

「真田。わるかったな。山川もすまなかった。俺のわがままだ。許せ。ここまで用具を揃えて、第1ドアを破るとはさすがだ」


もう一人の体格の大きい人がそのヘルメットの顔部分だけの防御カバーを開けて、顔のぞかせた。


「はーー、会長。かくれんぼだか、鬼ごっこだかわかりませんが、楽しかったです。実践の演習になりました。まだまだこちらも改善が必要ですね」


「そうだな。うーーん、そのソフトから攻める考えは悪くない」


蓮司が特殊チームのラップトップを覗きながら考えている。そして、何かを山川と部隊に指示しているようだった。


隊員達が、あー、そうなんですか?とか、え!そんな方法がっ?とか、熱心に蓮司の説明やら解説を聞いていた。


だが、そのうちに蓮司は、あっと、なにかを思い出したようだ。


「おい、お前たち、悪いがな。こんなところで、軍事会議している場合ではないんだ。それよりも、大切なことがある。俺と美代は今日はデートをする事になった」


「えええええ?デートですか?会長!!」


真田が感極まった声を発する。山川も驚いていた。


「こりゃー、坊ちゃん、金星か?」


などと話していた。


美代はなんか恥ずかしくなって顔を下に向けてしまった。


「待ってください。その、あのデートの意味わかってますか?お二人とも」


「なんだ。真田、心配か?わかっているぞ。勉強したじゃないか?」


ーーえ、どの漫画参考にしてんだ。真田が一気に困惑した表情になる。


「大丈夫だ。心配するな。美代の好きな事を考えながら、ゆっくり二人の時間を過ごすだけだ」


ーーな、なんてベストアンサー!!ああ、蓮司会長!


真田が涙目でウルウルしている間、全く素っ頓狂な美代は、蓮司になにか小声で話しかけ始めた。美代は置かれていたドアの破壊装置を観察しながら、蓮司に語りかけた。


「あのー、これって、抜き打ち検査ってヤツですか?」

「はぁ?どういう意味だ?」

「そんな隠さなくていいですよ。やっぱり大変ですね。総裁たる者、こうやって自ら指揮をとって安全性を確認したり、普段から鍛えてんですねー。いやー、感心感心」


「「「・・・・」」」


その美代の言葉が思ったより大きくて、意外と皆んなに聞こえていた。


真田、山川、そして、他の特殊部隊たちメンバーは、しれーっとした顔をしている蓮司を見つめる。美代は自分が監禁されていた事をまるでわかっていないのだ。


「ま、そんなこともあるかもなっ。山川、撤収だ、撤収。わかったな」


「かしこまりました。真田様もよろしいでしょうか?」


真田もただ頷くだけだ。ここで物事を荒立てようと思う者は誰もいなかった。だって、監禁されていた人が全くをもって、無自覚、しかもその監禁システムを感動しながら見物しているのだから。


「わかりました。特殊班、撤収します」


山川はただ、そう述べて、昨夜から真田から連絡受けてから、ずっとこの最新鋭のセキュリティードアと闘ってきた隊員達に一言最後の言葉をかけた。


「まだまだだな。俺たちは・・」

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