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美代の迷いと蓮司の想い

なんだか、超体の密接度が高い蓮司が、さらにベットの上で美代を抱きしめようとするので、美代は、ひょいっとそこを抜け出し、サイトテーブルの上の洋服とブラをガシっと取り、一目散に寝室から逃げ出した。


美代がまたその寝室のドアのところからひょこっと顔だけ出した。


「き、着替えます。バスルームお借りします」

「シャワー浴びるか?全部あるぞ。それとも、一緒に入るか? 俺は全く問題ないが」


「!!問題アリアリです! 変態エロオヤジ!」


寝室のドアをバシッと閉めて、美代はあのバスルームへと入り込む。


「はー、可愛すぎるな。本当だな。俺はエロオヤジだな」


蓮司は美代の可愛すぎる有様を思い出して、ベットの上でふーーっと深いため息をついた。


しかし、バスルームに隠れた美代はそれどころではなかった。


ーーな、なんてハードな、いや上級者のやりとり。まるで、恋愛始めの男女じゃない。敵はやっぱりやり手だわ。どうしよう。


もう、どうにでもなれと思い、シャワーを浴びた。そして、熱いお湯を体で受け止めながら、自分のドキドキしてしまうハートにカツを入れる。


身分わきまえようよ。美代。


どうやったら、地味女の普通の女の子が、蓮司会長みたいな、まあ変態だけど、あ、えっとエロオヤジだけど、最高に魅力的な男性の横に立てるんだよ。


しかも、さっきはヤバかった。蓮司の鍛え上げられた上半身はかなり見た目にもクる。男性にあそこまで至近距離で近づかれたことのない美代は、今更になって、彼の裸を思い出し顔を赤らめた。


みんなに指を差されることは慣れている。でも、それが自分の好きな人だったら? 自分のせいで好きな人が笑われるのは耐えれない。


私は今まで自分のことは自分で決めて、今までそれを行動してきただけだ。


もし、これが、本当の恋になってしまったら・・・


考えるだけで、恐ろしい。


きっと気まぐれに過ぎないこのゲーム。


私には勝つことしか、選択の余地がない。


負けてしまったら?


そんなことを考えていたら、バスルームのドアをノックされる。ロックをしているから開かないので、心配はないが、シャワーを終わらせ、バスローブを羽織り、少しだけドアを開ける。


蓮司が何かに驚きながら、眉間にシワを寄せている。


「か、かなりくるな、お前のバスローブ姿。あ、これ、怒るなよ。前回の大晦日、女史が勝手に用意して置いたものだ。忘れているかもしれないので、もう一度言う。この部屋にお前以外の女性を連れ込んだことは一度もない。新しい下着と洋服だ。嫌だったら、今から買いに行ってもいいぞ。なにせデートだからな」


手元には梱包したままの紙袋が渡される。


「え、女史が用意してくれたんですか?あの、用意が出来過ぎていて、かなり怖いですが、まあ一応、お借りさせていただきます。ありがとうございます。洗ってお返ししますので」


美代は、返答をしながらも、蓮司の驚きの発言には、対処できない。


ーーえ、なんて言った? 私が記念すべき連れ込み一号なの?いや、たまたまでしょ、どう考えても。


「お前はすごいな」


「は? 何でですか? こんな下着やら洋服を用意している会長のほうが、まあ怖いくらいすごいですよ」


「いいんだ。そうやって自然体でいてくれ」





蓮司は、今まで付き合った女たちの事を考える。デートというものは自分的にはほとんどした覚えがない。ただ、時々、女が当たり前な要求として、物を買うことを要求するのだ。別にそれで彼女らが、自分の時間を邪魔しないことを考えると、それは対等な要求に思えた。真田に頼んで適当な物を送らせる。


だが、女達の欲求は終わらない。女の欲が恐ろしくなる。


今ならよくわかる。俺は恋していなかった。今、美代に渡した洋服と下着だって、出来れば美代にそのまま持っていてもらいたい。律儀な美代は洗って返すという。笑えるな。女物の下着と洋服、返してもらってもな、どうすればいい?とも美代には聞けない。


彼女が欲しいというものなら、金に糸目をつけずに与えてやりたい。


甘やかして、蕩けさせて、俺がいなくては生きていけぬぐらい、愛したい。


「着替えたら、出てきてくれ。朝ご飯一緒に食べよう」


危ない妄想をし続ける俺は、なるべくドアの隙間から見える美代を見ないようにして、ゆっくりとドアを閉めた。


美代が蓮司の用意しておいてくれた水色のワンピースを着て、リビングルームに出てきた。


「に、似合うな。美代はいつも水色のセーターが好きだよな。水色は好きなのか?」

「はい。好きです。スカッとした空色は大好きですから・・」

「美代。今日はその畏まった喋り方やめないか?俺はリラックスしてお前との時間を楽しみたい」


「わかりました。蓮司会長、いや、蓮司さん」


「蓮司って呼んで欲しいな。俺は」


「はー、難題ですね。まあ、でも、受けてたちましょう! 蓮司、そのまま半裸で歩くのはよしてください。デートの相手を、目の前に変態にしか見えません」


蓮司は下にカジュアルなゆったりとしたズボンしか身につけていなかった。


「ははははっ。そうだな。俺もシャワーを浴びる。今な、お前にふわふわのパンケーキを作ったぞ。あと、お前はコーヒー派か? それとも、紅茶か?」


よく見ると、キッチンテーブルの上に、出来立てのパンケーキがおいてある。上手にカットされたフルーツの盛り合わせも置いてあった。


「わあ~、美味しそう! え、そんな贅沢。どっちでも大丈夫ですよ。蓮司会長と一緒でいいです。でも、もしかして、会長自ら料理したんですか?」


「美代。敬称ついている」


「あ、ごめんなさい」


蓮司が美代の頭を胸に抱きしめる。彼のコロンか何かの匂いが美代をつつんだ。そして、優しく額にキスをする。


「な、なんで!!」

「今日は、お前が敬称や敬語使うたびに俺はお前にキスするぞ」

「ええええ、何ですか? それ?」

「緊張感ないと、すぐお前は戻って使うだろう?」

「はーー、確かにそうですね」


また今度は頬にキスされる。


「え?いまのは、セーフですよ」

「何となく距離間がある」

「え、それってかなり不公平だし、俺様ルールじゃないですか?」

「そうだ。慣れろ。じゃないとお前、俺からどんどんキスされまくられるぞ」


「わ、わかったので、やめて、く、いや、やめてね」


その言葉を聞いた蓮司は満足そうだった。



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