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美代は固まった

金縛がかかったように美代は動かなかった。


表情からも彼女が何を考えているかわからないが、きっとその可愛い瞳の奥で、何かよからぬ事と考えているのかと心配になる。


「お、お前が子リスのまま、愛されたいのなら、それでもいい。どっちでもいい」


それでも、美代はベットの中で微動たりともしないのだ。瞬きをしているのを確認しなかったら、まるで蝋人形館に置いてある人形のようだった。


ーーやっぱり早過ぎたか?でも、抑えられないじゃないか?あんな告白を聞いたんだ。しかも、あの七瀬って野郎が近くにいるし、全く気にくわない。


蓮司はどんどんと心配になる。


「あ、もしかしてパジャマの件か?悪いな。大丈夫だ。何もしてない。イヤ、着替えさせたことは確かだ。しかも、美代、お前が自分から、その、アレを取れと言ったんだぞ。あの時は・・だから、今回も、その、何だな、お前が文句を言うまえに対処した」


「・・・見たんですか?」


「え? 見たかって。あーー」


蓮司が自分の手で口元を押さえて、美代から目線を外す。頬が赤い。


「・・・見たんですね!!」


「い、いやっ、正確には見ていない。俺は片手で見なくてもブラは外せるし」


蓮司はあまりに焦り過ぎて、大きなる地雷を自ら踏んでいることに気がつかない。


「な、な!!なんて! ひどい!」


「ち、違うんだ。美代。ごめん。許してくれ」


「・・・・・」


膨れている美代を蓮司が見つめている。


「美代。ごめん、多分、俺の一目惚れなんだ。今、返事はいらない。でも、俺は本気だ。真剣に俺とのことを考えて欲しい」


美代がぱっちりと瞬きをする。


「あ、お前のことだ。仕事のことを考えているか?」


そういうと返事の代わりに美代がこくんっ頷いた。


「だ、大丈夫だ。心配するな。今まで通りにする。変更はない。それとも、変わりたいか?そういう願いがあるかもな、お前には・・」


また、ちょっと悩んだような美代は、また、こくんと頷いた。


「今は、まだダメだ。悪いがお前を他の部署には回せない。俺の補佐にしばらくいることになる。だが、仕事の内容を増やしたり、変更することは可能だ。時間があればやってみるか?もう実は相当前から、真田が用意していたんだが、4月から指導が入る予定なんだが」


美代の顔色がパァーと明るくなるが、また何かを思い出したように、その表情も消えた。


「美代。今、お前はきっと混乱しているな。それは俺も同じだが、今日だけその仕事も、俺お前の上司だということも忘れて、ただの男として付き合ってくれないか?」


改めて美代が口を開く。


「忘れて?」


「そうだ。俺もお前が俺の部下とは考えない。悪いがお前の事をリスとも考えない。ちょっとお互いの事が気になる男女が出かけるだけの話だ」


「気になる男女・・」


「そうだ。気になる男女だ。美代は、俺のことが気にならないか?」


「え、そう言われると、上司でもありますし、仕事の唯一の対象相手でもありますから・・」


「んんーーーっ。つまらない答えだが、まあしょうがない」


「なっ、人が一生懸命考えているのに、つ、つまらないとは、なんと無礼な!」


ふっふふふ。自分が美代の反応を見て、喜んでしまう。ああ、欲しい、美代。君だけだ、俺こんなに楽しくさせ、心の奥底からお前が欲しくなる。


ーー真田。お前の約束は守っているぞ。今、襲わないでデートに誘っているしな。


「無礼講だ。今日は美代は、俺に何を言ってもいい。俺も美代の本音が聞きたい!」


なぜかその言葉は、美代の所謂、イケないスイッチのボタンを押してしまった事に、このデート経験が皆無な残念イケメン王子は気がつかなかった。





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