大家さんまでやられていた
朝、起きたらさっぱりしている。
ああ大量の汗をかいた実感がある。
辛かった。久々に熱出したなーっと思う。
生き延びた!よかった。
あれ? わたしいつ着替えたっけ?
なんだかパジャマにすっかり着替えていた。しかも中に着ていた下着が全部新しい。ブラをとった記憶がないが、ブラもすっかり部屋の隅にキチンとたたんで置かれていた。
身の回りのなぜかなんとなく小綺麗だ。
まあともかくシャワーでも浴びようと起きてみてキッチンのほうにいったら、愕然とする。あまりにも熱が出たの視覚がおかしくなったのだろうか?
はあ?
どういうことだ?
うちの2Kのボロアパートは台所のすぐ横は出入り口だ。ちょっと接着剤が剥がれて、ささくれだっている合板で出来た安っぽい木目模様の扉があるはず・・
ガン見でそのドアを見返す。
はて・・
色が違う?っていう問題ではないな・・・
木目以前の問題だ。
高級マンションにつけるような紺色の頑丈な金属製ドアに変えてある。しかもわざわざ金縁のフレームデザインが施され、この雑然としたアパートの内装とハンパなく合わない。
なにかわたしは・・・視覚障害なのだろうか?
周りを見渡してみると、テーブルの上に鍵が置いてあった。
手紙が目につく。
『美代様へ 寝ている間にドアの鍵を交換いたしました。どうぞお納めください。』
え、鍵交換じゃないでしょ。
ドアが!! 違うんです!
大家さんの許可とったの?
なんなの???
ツッコミどころがありすぎてどうして良いかわからない。
でも、こんな暴挙に出るのは一人しか考えられない。しかも宛名が美代様だなんて。
ちょっとシャワーを浴び冷静になってからヤツに電話する。
やっぱりワンコールで出やがる。こやつ・・・
「あ、美代様。どうですか? お加減は!!!!」
「真田さん ありがとうございます。おかげさまで寝ていたらすっかり治りました。でも、真田さん、寝ている間にかなり変なことがわたしのアパートで起きているんですがご存知ないですか?」
「ああーーー。それはもしかしてあの鍵のことでしょうか?」
「いえ、あ、鍵っというより、玄関のドアのことです。」
「あーーーっ、そうでしたねーー、ドアでしたね。」
真田さん、あんた演技下手すぎ。
バレバレだよ。その受け答え。
「あの申し訳ないですけど、うちの大家さんの許可とっているんでしょうか?」
「あ、そういうことですか? まったく問題ありません。」
ーーえ、大家でもやっぱり、あの暴君大原蓮司の前ではひれ伏せるのか!!と思っていると、
「あのだいぶ前からですが、美代さんがこちらと契約になった時点から、そちらのアパート全棟、株式会社大原の所有となっています。」
「ええええ?なんですと?」
ーーーやっぱり大家さん、ひれ伏してた。思いっきり!!




