第六十四姉嫁 マリーシアを救え!愛と友情のデストロイ大作戦!!の巻 そのに
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マリーシアさんが俺とさきねぇの手をぎゅっと握って空いている部屋にひっぱる。
はぁ・・・なんかすげぇめんどくさそうなことに巻き込まれそうな予感。
「実は・・・逃げ出したはずの実家から『今度お前のお見合い相手がそっちいくからヨロシク!ラストチャンスだゾ☆』っていう連絡がきまして。」
「うわー、かわいそう。」
「ですよね! 望まぬ相手と結婚を強要させられる私かわいそうですよね! ムラサキさんならわかってくれると思ってました!」
感激した感じでさきねぇの手を握るマリーシアさん。
でもそのさきねぇは『ん?』みたいな顔をしとる。
「・・・ああ、まぁ、そうね。まりすけもかわいそうかもね。」
「まりすけも・・・? そのかわいそうは『無理やりお見合いさせられる私が』かわいそうなんですよね? 私とお見合いさせられる相手がかわいそうとかそういうことじゃないですよね? なんで遠い目してるんですか? ちょっとこっち向いてもらっていいですか?」
遠い目をしているさきねぇを掴み揺するマリーシアさん。
ムラサキカウンターが発動する前に止めてやるか。
「まぁまぁ。でもマリーシアさんって昔おっさんと結婚させられそうになって逃げ出したんですよね? 今回も逃げ出せばいいんじゃないですか?」
「うーん、それも考えたんですけど、私、こう見えてアルゼン気に入ってるんですよ。仕事も・・・まぁけっこう地獄みたいなとこはありますけど拾ってもらった恩もありますし。」
「じゃあ会うだけ会って断ればいいじゃないですか。」
「え、会ったらもう結婚確定じゃないですか。」
『何言ってんの?』みたいな顔をするマリーシアさん。
え、したことないからわからんけど、お見合いってそんなもんなの?
それともこの世界だけの常識なの?
「そんなもんなんですか?」
「むしろそうじゃないところがあるんですか?」
「私たちがいたところは『良い方なんですけど、私にはもったいなくってぇ』とかいっときゃ余裕で拒否OKだったわよ?」
「めっちゃいいとこじゃないですか・・・というか、ぶっちゃけお二人ってどこ生まれなんです?」
このマリーシアさんの探るような目つきですよ。
冒険者は基本過去の詮索はしない的な暗黙の了解があるらしいのだが、それでも過去を探ろうとする女、マリーシア。
だからモテないんだよ。
「えっと・・・ジャパン?」
「どこですかそれ・・・」
また適当なこと言って、みたいな目で見られる。
正直に話してるのに。解せぬ。
「まぁとにかく会ったら即結婚です。つまりお見合い相手に会わないようにしなければいけません。」
「じゃあ姿隠せばいいじゃない。」
「こっちの都合でお見合い破談にしたらけっこうヤバ気なんですよ。なのでできれば向こうの都合で会うことができなかった、という方向にもっていきたいわけです。」
なんかもう聞けば聞くほどめんどくさそうなんだけど。
安易に話を聞くべきではなかったか・・・
「そこで! お二人の出番というわけです!」
「はぁ・・・具体的には何を?」
「賊を装ってアルゼンの外でお見合い相手を襲撃してください!」
「お前それマジで言ってんの?」
「大マジです!」
お前どこのDQNだよ。
知り合いに人を襲えと頼むとか異世界人怖すぎるわ。
「ほう、襲撃とな?」
「お、食いついてきましたねムラサキさん! それでこそですよ!」
「落ち着いて。『襲撃』って言葉にちょっと目を輝かせないで。」
ほらうちのお姉さまがちょっと興味もっちゃった!
「まぁでもアレじゃない? 私たちならもし捕まってもみーこの名前出せばなんとかなりそうじゃない?」
「そんなところで知り合いの名前出すの嫌だよ・・・」
そりゃこの国の第四王女様の名前出せばなんとかなるかもしれんけど。
犯罪の隠蔽に名前使われたらみーこもショック受けるし、なによりうちのお祖母ちゃんが悲しむよ。
「・・・やっぱりさすがにそれはマリーシアさんの頼みでも、ちょっと。思いっきり犯罪ですし。ぶっちゃけこの部屋を出た足でそのままラムサスさんのところに報告にいこうと思ってます。」
「イツカヤルトオモッテタンデスヨネー。」
さきねぇが手で目を隠しながらボイスチェンジャー的な声をあげる。
友人Aは語る的なやつですね。上手いな。
「いやいやいやいや! 殺せとか怪我を負わせろとか、そういうんじゃないですよ? ちょこっと脅して帰ってもらうだけですよ? そうすれば賊にやられて逃げ帰るような雑魚に興味はありません!と胸を張って言えるわけです!」
「ない胸を張るわけね!」
「はぁ!? あるし! ちゃんとあるし! この豊満なボデーを見てくださいよ! 流言飛語で訴えますよ!」
マリさん大激怒。
絶壁ではないかもしれんが、でも豊満なボデーでもないよね。
「そう怒るな、平たい胸族の娘よ。」
「私これぶん殴ってもいいやつですよね?」
「いいわよ? ただし、華麗なカウンターをお見舞いするけど。」
「なんて理不尽! クソォ! この大陸に精霊王様はいないのかぁ!」
大きな胸を強調しながら勝ち誇るさきねぇと膝から崩れ落ち床を両手でドンドン叩くマリーシアさん。
ホント仲良いですねあんたら。
「とりあえず責任ある人に大丈夫かどうか確認とってこよう。」
「大丈夫ですよ?」
キョトン顔のマリーシアさん。
お前の発言が全く信用できないから確認しにいくんだよ。
というわけでラムサスさんの部屋に向かいドアのノックノック。
「すいませーん。ヒイロでーす。ラムサスさんいますかー?」
「おー、入って入ってー!」
「失礼しまーす。」
ドアを開けると机の上の書類に囲まれたラムサスさんがいた。
アルゼンみたいな田舎以上都会未満の微妙な街でもギルド長ってやっぱ大変なんだな。
俺は絶対にギルド職員にはならないと改めて誓うのだった。
「私は良い子なので失礼しませーん!」
「私もでーす!」
「クソうぜぇ・・・」
一緒に入ってきたさきねぇとマリーシアさんの姿と発言を見聞きしてうっかり本音を漏らしてしまうラムサスさんだった。
これはしょうがないね。
「はぁ・・・よく来たねヒイロくん。汚いとこで悪いね。」
「全くよ。」
「わかってるならちゃんと整理整頓したほうがいいですよ支部長。」
「・・・俺はヒイロくんに言ったんだよ。そしてお前らの発言は許可していない。一言もな。」
目が血走っているラムサスさん。
今日はいつにも増して機嫌悪いな。
「ケチくせぇ~。」
「困ったもんですよほんと。だから新職員が来ないんじゃないですか?」
「それよマリすけ。名推理じゃん冴えてるぅ!」
「いやぁ、それほどでもありますけどぉ~!」
「マジでぶっ殺してぇ・・・!」
な・ぜ・あ・お・る。
きゃぴきゃぴして煽りまくる二人に対し、ラムサスさんは殺意の波動に目覚めそうなほどの負のオーラを放つ。
「お、落ち着いてくださいラムサスさん。どうどう。」
「はぁぁぁぁぁ・・・・・・命拾いしたなお前ら。ヒイロくんがいなかったら頭と胴が離れてたぞ。【風影剣】の二つ名、なめんなよ?」
さきねぇが何か言いたげだったのでアイコンタクトで『ちょっと黙って』とメッセージを送ると『E・D・F! E・D・F!』と返ってきた。
よくわからないけどわかってくれたみたいでよかった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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