第二十六姉嫁 ムラサキお姉ちゃん、運命に出会うの巻 そのに
何件も感想いただきました。ありがとうございます。
待っててくださる方がいる、というのはほんと嬉しいものです。
アリガトーアリガトー&アリガトー!
今章はムラサキお姉ちゃんが久しぶりの出番で張り切ってしまい、全体的にかなり暴走しておりますが、生暖かい目で見守ってくださると嬉しく思います。
「さきねぇちょっと黙って!」
「ダマルー。」
兵隊さんたちが可哀想な人を見る目で俺を見てくる。
同情するなら俺の話を聞いてくれ!
「よーし、わかりました。そこまでお疑いになるのなら、仮面を取ってみましょう。それですべてがはっきりするはずです。」
「・・・まぁ、君がそれで納得してくれるならそれでいいよ。」
なにそのすごいやっつけ感。
目に物見せてくれるわ!
「さきねぇ、仮面取るよ?」
「コノカメンハノロワレテイルノデ、シンジツノアイガナケレバハズセマセン。」
「真実の愛、生まれた瞬間から持ってるから問題ないよ。」
「シッテタ。」
俺とさきねぇが手を握り合うと、周りの兵隊さんたちはゲンナリした顔をしていた。
「いや、そういうのいいから、さっさと・・・」
さきねぇのオーガの面を取ると、うちのお姉さまのプリティーフェイスがあらわになる。
兵隊さんたち、固まっちゃったよ。
まぁそうだよね。変質者の中身が超絶美少女だったらそりゃ固まるよね。
「・・・私はいったい何を?」
「え・・・えっと、姉上は呪いで狂人と化していたのです。」
全部仮面の呪いのせいにしようとしてるよ。
仕方ないからのっかるけど。
「まぁ、なんということでしょう。悪の魔法使いマリーシアの呪いですね。迷惑を掛けましたね、弟よ。」
「姉上の為なら。」
「皆さんにもご迷惑をおかけしたようですね。申し訳ありません。」
「え!? あ、いや、そんなことはないですけれども!」
顔を赤くしてめっちゃテンパっている兵士Aさん。
「・・・自分はムラサキ様を本物だと思っていました!」
「!? お前、何を・・・!」
「自分もです!」「自分も!」「自分は呪いのせいだと最初からわかっていました!」
「お前ら!?」
兵士Aさん、仲間に裏切られるの図。
「隊長、謝るべきでは!?」
「そうだ!」「謝るべきです!」「こんなすばらしい人を疑うなんてどうかしてる!」
「え、えー・・・俺? 俺が悪いの?」
なんか兵士Aさん改め隊長Aさんがかわいそうになってきたな。
「いいえ、謝る必要などありません。人は誰もが間違えるものです。重要なのは、それからどうするか、ということ。私は何も気にしておりません。」
「「「「「おぉ・・・」」」」」
ニコッと笑うさきねぇにボーっとなる兵隊さんたち。
兵隊さんたちのさきねぇを見る目が神聖なものを見るそれになっている。
さきねぇの超魅了力、英語で言うとスーパーチャームパワーはすごいな。
具体的にいうと、ダイスを振って5以下だった場合、強制的に魅了状態に移行させるくらいすごい。
なんで英訳したのか、TRPG風で説明したのかは謎。
「では皆さん。お勤め頑張ってくださいね?」
「は、はい! ありがとうございます! おいお前ら、いくぞ!」
後ろ髪を引かれつつ、名残惜しそうな顔をしてその場を離れていく兵隊さんたち。
たまに振り返って手を振っている。
さきねぇが手を振り返すと『ウオオオ!』とか『俺に手を振ってくれたんだ!』とか『精霊様万歳!』などの声が聞こえる。
うちのお姉さまは魔性の女やでぇ。
「さきねぇおつかれー。はいこれぶどうジュース。」
「サンフランシスコ!」
「サン・・・? あぁ、サンクスの派生ね。一瞬考えちゃったよ。長くね?」
「付け加えると、サンフランシスコには『サンクス』と『シスコン』がかかってるわ。」
「ありがとうシスコンって、え、俺今バカにされた?」
「じゃあ久しぶりのありがとうさぎー。」
「かわいいなさすが俺の姉かわいい。」
両手を頭の上にやってうさみみっぽく動かすさきねぇ。
動画撮りてー。ようつべにアップすれば100万再生余裕ですね。そのうちの何割かは俺が再生してるだろうけど。
そんなやりとりをしていると、立ち去ったはずの兵隊さんたちが遠くで円陣を組んでいる。
「あの人たち、今度は何するんだろうね。」
「ラグビーじゃない?」
すると兵隊さんたち全員がこっちに向かって走ってきた。
え、ほんとにラグビー?
そして全力疾走をしたため荒い息を吐きながら俺たちを囲む兵隊さんたち。
「どうしました?」
「どうしましたじゃないよ! まだ本当にA級冒険者の〝絶対姉姫〟なのか確認できてないだろ! つーかそもそも〝絶対姉姫〟だからって変質者は逮捕しなきゃダメでしょ!」
隊長Aさんの言葉に顔を見合わせる俺たち姉弟。
「ごまかせなかったかー。」
「ごまかせなかったねー。」
「お前ら・・・!」
隊長さん激おこ。
「とりあえずギルドいきましょうギルド。ね。そこで本人確認しましょう。とりあえずそこから始めましょう。」
「だから噂の〝絶対姉姫〟だったとしても変質者は・・・!」
「ダメ?」
ムラサキ の うわめづかい !
「・・・・・・とりあえずギルドにいって本人確認だけはしましょう。」
たいちょうA は こんらん した !
隊長A氏を伴って冒険者ギルド・イナルファ本部に入る。
そして他の冒険者たちからめっちゃ見られてる。めっちゃ見られてる。
まぁドレス姿の美少女がいきなり自分の会社に入ってきたらそりゃ見ちゃうよね。
「すいませーん。真実の鏡借りまーす。」
「え、あ、はい。どうぞ。」
受付の人に声を掛けてから鏡の前に立つ。
俺が鏡に手をつけると、鏡に色々な文字が浮かび上がってきた。
「まずは私から。」
「・・・たしかにB級冒険者だな。ヒイロ・ウイヅキか。」
周囲の冒険者たちから『へぇ、やるじゃん』みたいな気配が伝わってくる。
「じゃあ次私ー!」
次にさきねぇが鏡に触ると、鏡の中に名前や階級が浮かび上がる。
「!? た、確かに本物のA級冒険者のムラサキ・ウイヅキのようだな・・・」
隊長A氏の言葉を聞くと、俺たちのやりとりを盗み聞きしていた周囲の冒険者たちがさきねぇに殺到する。
「うわ、ほんとだ! 一人でギガンティックゴーレム倒したとかいう〝絶対姉姫〟だよ!」
「すげー、初めて見た!」
「確かトポリスが縄張りなんじゃなかったっけ?」
「噂どおり、めっちゃかわいいなおい!」
「美人で胸大きくて強いとかずるい。反則でしょ。」
べた褒めだ。
あれ、B級冒険者もけっこうすごいはずなんだけど・・・
俺の時に誰も声を掛けてくれなかったのはなんでですかね。
「さて、本人確認もできましたし、これでめでたしめでたしですね!」
「た、たしかにそれはそうだが・・・」
隊長A氏は困り顔だ。
まぁ軽犯罪を取り締まるのはおまわりさんの仕事だけど、相手はA級冒険者だからね。
むしろペコペコしないだけ職務に忠実なことが伺えるので、俺個人としては好きですこういう人。
俺自身、真面目なだけが取りえなので共感が持てます。
「何事だ?」
「あ、副本部長!」
奥からのっそりと縦にも横にもでかいおっさんが現れた。
あれがここの副本部長か。王都にあるギルド本部の副本部長だけあって、さすがに強そう。
あと、見た目がクマっぽい。
「イナルファ王国にもキューティーベアーっているのね。」
「初対面! さきねぇ、初対面だから! 失礼でしょ! メッ! お口チャック!」
「・・・・・・ぶわっはっはっはっはっは!」
副本部長は一瞬ポカンとした表情を見せたが、直後に大爆笑する。
「さすがA級、しょっぱなから失礼なこと抜かしやがるぜ。」
「すいませんすいませんうちの姉に悪気は無いんです! ちょっと正直っていうか、思ったことが口から漏れちゃう病気っていうか!」
「ぐぁっはっはっは! かまわねぇよ。A級まで上り詰めるやつっていうのは大抵どっかイカレてるやつばっかだしな。この程度は慣れっこだ。」
やだ、外見が怖そうなだけで紳士ですよこの人。
さすが副本部長にまでなる人は一味違うなー。でもきっと変態なんだろうなこの人も。
俺の中では勝手に『地位が高い人=変態』という図式が成り立っている。
「じゃあクマさんって呼んでいい?」
「さきねぇ! ここアルゼンじゃないからね!? アルゼンじゃないどころか他国だからね!? いつもみたいな感じじゃなくて、もうちょっと落ち着こうか!?」
「おう、いいぜ。」
「ええんかーい! ええんかーーーい!!」
つっこみすぎて疲れた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




