41話
その後二人でタウンハウスに戻り着替えを済ませ、ゆっくりとした時間を過ごせました。
この夜、私は初めて旦那様と閨を共にしたのです。
旦那様はとても優しく私を気遣って下さいました。
旦那様の腕の中で、こんな幸せもあることを初めて知ったのです。
この王都への旅が私にとって忘れられない旅となりました。
翌朝、いつもより遅めの朝食を済ませてから私達は王都の街へと出ることにしました。
みんなへのお土産を買いながら二人での散策を楽しみました。
何となく今迄とは違う関係性が感じられます。
それが何なのか上手く表現はできませんが、間違いなく今迄に無い深い繋がりの様なものを感じます。
旦那様の態度も自然な物に感じました。というより私に対してとても過保護になった気がします。
閨とは夫婦にとって只の身体の繋がりだけでは無く、心の繋がりも感じるのだと深く思いました。
街から戻ったあと、帰り支度を整えていると、旦那様がふいに言いました。
「領地へ戻ったら、改めて二人の結婚式を挙げようと思う」
思いもよらない言葉に、つい私は口を滑らせてしまいました。
「今更ですか?」
旦那様はひどく気まずそうに目をそらしながら
「いや、済まなかった」
と小さく呟かれました。
そんなつもりで言ったのではないのですが、少し空気がぎこちなくなってしまい、私は慌てて笑みを浮かべました。
「お気持ちだけでも嬉しいです」
すると旦那様は力強く首を振り
「いや、必ずやる。帰ったら君の新しいドレスを用意しよう」
と宣言されたのです。
私は思わず苦笑してしまいました。
「たった一度の為だけに、勿体ないです」
すると旦那様が、どこか呆れたように、けれど柔らかく笑いました。
「君は随分と合理的なんだな」
「いえ、ただ私は貧乏男爵家の四女なもので」
とつい自虐めいた言葉を漏らすと、旦那様は少しだけ目を細め、優しい眼差しで私を見つめていました。
その視線が、なぜだか胸の奥を温かく満たしていくのでした。




