37話
7月10日より毎日6話ずつ投稿させていただいています。7月16日に完結します。
(辺境伯エリック視点)
またやってしまった。
こんな態度ばかり取っていたらいよいよ嫌われてしまうな。分かってはいるのだがな。
今日は領地に居る騎士達が鍛錬場で模擬戦をしている。その訓練の為出向くことになっている。
二時間程、訓練に参加してから彼女を迎えに行く為、教会へ向かっていると馬車の窓からあのパン屋の店主が見えた。
それも胸には産まれて間もない赤子を抱いているではないか、その上、隣には子供と手を繋いだ女性も一緒だ。見るからに仲の良い四人家族ではないか。
やつは、結婚をしているのか? 彼女はそれを知っているのか?
それとも? 頭の中が疑問符だらけだ。
いずれにせよこんな場面を彼女が見てしまったら相当、悲しむだろう。絶対見せてはいけない。
私は教会に着いたが今、彼女を迎えに行ったら先程の場面と出くわし兼ねない。少し時間が経つのを待つ事にしょう。
御者には暫く近くのベンチで休憩を取らせた。
馬車に座ったまま色々な考えが巡る。
先程の光景を彼女に見せたら諦めるかもしれないと思う気持ちも正直ある、しかし見せて悲しませたくもない。
全く人を愛するとは何と厄介なものなのか。
そんな堂々巡りな考え事をしていたら
「いつからそちらに?」
突然声をかけられた。驚きで声が裏返りそうになったが平静を装った。
教会から彼女が出てきてしまったのだ。
まだ早過ぎる、今出たら、鉢合わせしてしまうかもしれない、困った。なんとか時間を稼がなければ……




