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完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   作者: ヴァンドール


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36/42

36話

(辺境伯エリック視点)


 態度に出してはいけないと、頭では分かっているのに、彼女の口から店の話題が出ると胸の奥がざわつく。 


 これは嫉妬なのか、それとも焦りなのか。自分でもうまく整理がつかないまま、馬車は教会の前へと到着した。


 私は気持ちを整え、落ち着いた声を意識して彼女に話しかけた。


「今日は、この近くの鍛錬場にも顔を出す。神父様に挨拶を済ませたら、そのまま向かう。君はここでゆっくり読書を楽しんでいてくれ。帰りは迎えに来る」


 そう言って、彼女の手に焼き菓子の箱を渡した。


 すると彼女はいつもの控えめな笑顔で


「帰り道は歩き慣れていますので大丈夫です。旦那様はどうぞお気になさらず、ゆっくりしてらしてください」


 と、さらりと言われてしまった。


 その言葉に胸がひどくざわついて、つい語気が強くなってしまった。


「いや。必ず私が迎えに行く」


 自分でも驚くほど、強い声音だった。

 彼女はきょとんとした表情で私を見つめた


「それでは読書をしてますので終わりましたら声をかけてください」


そう言ってから、会釈して教会へと入っていった。


 ああ、またやってしまった。

 どうしてこう、彼女の前では自分が不器用になってしまうのだろう。


ーーーー


(アンジュ視点)


『旦那様はどうしてあのような強い口調で話されるのかしら? 私が何か気に障ることでも言ったかしら?』考えても心当たりがないので『きっと、お仕事のことで何かあったのかもしれないわ』そう思い、それ以上は考えることをやめにしました。


 私は、教会に着き、神父様に挨拶を済ませたあと、いつものように子供達のもとへ向かい、焼き菓子をみんなで分け合いました。

 小さな手で大切そうにお菓子を受け取ってくれる姿を見ると、こちらまで嬉しくなります。


 一通りお喋りをしてから、本の貯蔵室へ移り、お気に入りの本を手にします。

 ページをめくる音だけが静かに響き、心が穏やかに満たされるようです。そうして時間を忘れて読書をしていましたが、ふと顔を上げると、いつの間にか外は深い夕暮れ色に染まっていました。

 そろそろ明るさが足りなくなってきたので、私は本を閉じて外に出ることにしました。


『旦那様もそろそろ、鍛錬場から戻られるかしら?』

 そう思いながら表に出ました。


 


 

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