32話
昨夜はカリンが簡単な夕食で申し訳ありませんと言いながらもそれなりの物を作ってくれました。
二人は私にだけ先に食事を出したので、ここでは三人で一緒に食べましょうと無理に誘いました。
せめて名前は敬称無しで呼んで欲しいと頼まれたのでナタリー、カリンと呼ぶことにしました。
こうしてここでの三人だけでの生活が始まったのです。
私はカリンに作ってもらった朝食を食べてから、いつも通り仕事に出掛けました。
二人には正直に話し、出来れば友達のように接して欲しいとお願いしてから仕事に向かいました。
私は店に向かいながらこれからの事について考えました。
来月には王都に行かなければならないので往復の道のりとあちらでの滞在を考えたら一月位はお店を休まなくてはいけません。
やはり事実を伝えるしか無いと思いました。
でも事実を話したらお店を辞めざるを得ません。
きっと私の事を使い難くなるわよね。やはりいつまでも隠し通せるものではないし、迷惑も掛けたくありません。お二人にはきちんと話そうと心に決めて店に向かいました。
店に着き、エプロンをしていつもと同じように働き、お昼近くに来た女将さんにお仕事が終わったら、お二人に話を聞いて欲しいのでお店が一段落して女将さんが帰る前に時間を少し下さいと頼みました。
そして一段落した後に今迄ずっと隠していて申し訳ありませんでしたと謝り、その後、全てを洗いざらい話しました。
二人は共に驚いたお顔をしています。
「何か事情はあるとは思っていたけど想像の斜め上をいくような話だね」
と言って笑って下さいました。
やはり今の忙しさの上、尚も子供が二人いる状況で一月も私が休んでしまうなんて無理なのは当たり前です。それでも私に悪そうにしながら話されました。
「済まないね。やはり新しく人を雇い入れるしかないようだね」
「どうぞ、お気になさらないでください。私は新しい方が見つかるまできちんと働かせていただきます」
私は、そう言って、その日の夕方店を後にしたのです。おふたりは本当に申し訳ないと言ってくれますが、私の方こそ申し訳ない気持ちでいっぱいでした。




