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完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   作者: ヴァンドール


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29/42

29話

 別宅へ戻った私は、扉を閉めた途端、思わず大きく息を吐いた。


「あー、びっくりしたわ。それでも、意外と冷静に話せたわ。本当に良かったわ」


 胸に手を当て、そっと撫で下ろす。


 旦那様、あの驚きようったらなかったわ。

 まさかパン屋で働いていた私が、書類上だけとはいえ、自分の妻だとは夢にも思わなかったでしょうからね。


 ともあれ、仕事を辞めろなんて言われる前に(もちろん、そのつもりは一切ありませんけれど)無事に帰ってこられたのだから、大成功と言っていいわ。

 そう思うと、ひとりでくすりと笑ってしまった。


ーーーー


 翌朝も、私はいつもどおり仕事へ向かいました。

 先日買ったばかりのワンピースを着て。


 店に入るなり、ご主人が目を細めて言ってくださる。


「すごく似合ってるよ。早く妻にも見せてあげたいくらいだ」


 ご主人のほうが嬉しそうで、なんだかこちらが照れてしまいます。


「ありがとうございます」


 そう言ってワンピースの上からエプロンをつけ、いつもの仕事に取りかかった。

 外を見ると、こんなに早い時間なのにすでにお客様が並んでいる。

 さあ、今日も一日頑張りましょう!


 しばらくすると、女将さんもいつものように店へやって来ました。

 私の姿を目にした途端、とても驚いた様子です。


「本当に似合ってるよ。せっかくだから、お化粧のひとつでもすればいいのに。アンジュちゃんなら元がいいんだから、もっとべっぴんさんになるよ」


 その言葉に、胸が温かくなるのを感じます。

 実家にいた頃、私は姉たちの影に隠れ、目立たず、忘れられた存在でした。

 けれど今はこうして私をちゃんと見て、認めてくれる人たちがいる。


 その事実が、たまらなく嬉しかったのです。

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