12話
その後、私はランカスターと共に別宅へ様子を見に行った。
すると驚いた事にあれほどホコリまみれの部屋がどこもかしこもすっかり綺麗になっていた。
まさか、彼女(もっとも会った事もないのだが)が一人でやったのか? 仮にも貴族の娘だぞ? だが、本当に彼女がやったのだろう、屋敷のメイド達は誰一人として関知してないのだから。
ランカスターは彼女が嫁いで来た日に一度だけ会っているが清楚な令嬢で、どう見ても貴族令嬢にしか見えないと言っているのにこんな完璧に掃除をし、おまけに料理までもをしている様子だ。
こんなにも色々な調味料が揃っている。
だが今は誰もいないようだ。
出掛けているのか? それからもう一つ気になる事がある。
確か実家は困窮していたからこそ、こんな条件の男の所に嫁いできた筈だ。
だったらこんなに長い期間の生活費はどうしていたのだ? 考えれば考える程、頭が痛くなる。
暫く待っていたが、帰って来る気配は無いので今日のところは本宅へと戻ることにした。
しかし、本当にまだここに居たとは、何と言い訳をしたらよいのか一切、言葉も見つからない。
下手な言い訳ならいっそ、本当のことを言うべきなのかもしれないと覚悟を決めた。決めたつもりが、やはりいざとなると勇気が出ない。




