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完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   作者: ヴァンドール


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10/42

10話

 あれからアップルパイを新商品として店頭に置いてから一月が経ちました。

 今では毎日の様に売り切れの日が続いています。

 ご主人も労働時間を延長しながら数を増やして焼いていますが、全く追いつかない状況です。

 嬉しい悲鳴ではありますが、女将さんの側に居る時間が削られてしまうのは辛いことかもしれません。

 しかしそう思いながらも、この盛況振りを誰よりも喜んでいるのは女将さん自身だというのだからそれはそれで良しとしましょう。


 女将さんが出産してから二月が経ちました。

 そろそろ体調も戻り、お店の方へも少しずつ出れる様になって来ました。

 私は最初の約束通り他の仕事を探そうと女将さんが顔を出した時にそのことを告げましたが、女将さんはご主人とも相談していて、このまま私にお店を手伝って欲しいと仰って下さいました。

 アップルパイのお陰で人を雇う余裕も出来たし、今の忙しさではとてもご主人と二人だけでは無理だと言われました。

 今は出来るだけ子供達の側に居てあげたいのでお店のピーク時だけ女将さんが、顔を出せればいいと言ってくださいました。  

 私はそれが本心からのものであると感じたのでお言葉に甘えて、お店に留まる事にしたのでした。


 私の生活は、朝起きてから仕事へ行き、夕方にはお買い物をして、別宅に戻り休みの日には、初めて此方に来た時に入った食堂へ顔を出すという繰り返しの毎日になっていました。

 それは私にとっては最高に充実した日々に感じられたのです。

 何故なら大好きなお料理の開発が、お店の新商品の手助けとなったり、多勢の方々から感謝の言葉を頂いたりと、全てにやりがいを感じられたのですから。

 そして、今までこれほど私のことを必要としてくださる方がいたでしょうか? 私はとにかくそれが一番嬉しく思えました。


 こうして私はそんな毎日を送りながら気づけば此方にお世話になって、半年が過ぎていました。

 今ではこのお店は領地ではかなりの有名店になっていました。

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