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【完結】勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。  作者: 八木愛里
第三部 竜の棲む村編

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73/98

73 私を見つけて

「ロザリーを連れ去るとは、竜神さまであっても許せない!」


 ロウはそう言い放ち、彼の鋭い視線が竜神さまを射抜く。

 私が横から口を出してはいけないような気がして、オロオロとするばかりだった。

 

「ロザリーをこちらに招いたことで……心配をかけて申し訳ありませんでした」


 竜神さまはすぐに自分の非を認めて、謝罪した。

 それでもロウの怒りが収まらないのか、詳しい説明を求めて口を開けた。


「では、なぜロザリーを連れ去った?」


「彼女には、過去に命を救っていただいたことがありまして……。彼女の気配を感じて、懐かしさのあまり力を暴走させてしまいました」

 

「ロザリー、それは本当なのか?」


 ロウに確認するように聞かれて、私は「はい」と返事する。

 

「勇者パーティの時代に、倒れていた竜神さまを助けたことがあったのよ。そのときはトカゲの姿だったから、竜神さまだとは知らなかったけれど……」


「人間だけでなく、トカゲにも慈悲の心で助けるとは、さすがロザリーだな」


 ロウは一瞬、目元に笑みを滲ませたが、体の向きを変えて竜神さまには厳しい目をした。

 

「急に連れ去るのではなく、貴方から訪ねて来られても良かったのでは?」


「おっしゃる通りです。この機会を逃すと会えなくなるのではと焦り、このような事態を招きました。大変申し訳ありませんでした」


 その言葉を聞いて、ようやくロウの心が落ち着いてきたのか、水中に持ち上がって揺れていた髪の毛は下に降りていた。


「ロザリーが奇跡的に無事だったから良かったものの、このようなことは二度としないでほしい」

「わかりました」

「じゃあ、ロザリー帰ろうか。地上に戻ろう」


 すぐにでもこの場から去りたかったのか、ロウから手を差し出された。


 待って! 竜神さまから一つだけ望みを叶えてくれると言われているの!

 まだ、何を頼もうか迷っていて……。


 戸惑う私の前を遮って、竜神さまが立った。

 

「待ってください。入り口の門の破壊、調度品の破損、部屋の半壊……そのままにして帰られるつもりですか?」

 

 見に行かなくても被害状況がわかるのか、竜神さまはスラスラと言った。

 ロウは硬い表情のまま言葉を絞り出した。


「……そのつもりだが?」

「それは大目に見ていいとしましょう。私がロザリーを連れてきたのが悪かったのですから。ですが、放っておけないことがあります。ロザリーから、ロウから隠し事をされていると相談を受けました」


 その言葉に、ハッとした顔のロウと目が合う。

 

 ……言いたくて言ったわけじゃない。心の中を覗かれて、白状させられてしまったのよ!


 そう弁解したかったけれど、相談した事実は変わらない。言い訳がましくなるのが嫌だったので、このまま話を見守ることにした。


 竜神さまは続けて言う。


「そこで私から一つ試練を出しましょう。リダーナ、ロザリーを横の部屋に案内してください」


 リダーナと呼ばれた、部屋の壁際で控えていたドジョウから「お嬢さま、こちらへ」と案内された。

 その状況に慌てたロウは叫んだ。


「ロザリーを一体どうする⁉︎」


「心配いりません。隣の部屋で待ってもらうだけです」

 

 ロウに睨まれた竜神さまは「危害は一切加えないと約束します」と付け加えた。


 私はドジョウに連れられて、海藻のカーテンを抜けると広間に出た。


 そこには……。

 狐のお面を顔に付けた、ピンク髪のショートカットの集団がそこにいた。二十人以上いる。

 姿は私とほぼ同じだ。狐のお面を付ければ差がない。

 

「お嬢さまもこれをどうぞ」

 

 ドジョウから狐のお面を渡された。

 白い顔に赤い耳、三日月のような黒い目、先端が大きく釣りあがった口。

 怪しく笑う顔がどこか異様だ。竜神さまにゆかりのあるお面だろうか。


「これを被って、この集団の中に混じれってことよね……?」


 おそらくそうだと思うけれど、確認する。


「そうです」


 やっぱり。この中から私を見つけられれば、ロウの勝ちってことね。

 背格好はみんな同じ。私を見つけられるはずがない。

 無謀な勝負にロウが乗らないといいんだけど……。

 

 渋々とお面を付けて集団の間に入ると、緊張感が高まった。

 

 しばらくして、竜神さまと一緒にロウがこの部屋に入ってきた。

 

「ロザリーはお面を被ったこの集団の中にいます。気持ちが通じ合えば、探し出せるかもしれません。ロザリーを見つけたら、彼女を返します」


 無理よ! やめて!

 叫んだらルール違反になるだろうと、諦めたら……。


「ロウ! 無謀なことをしないで!」

「挑戦を受けないで!」


 横からダミーの子たちが、私と同じ声でそう言ってきた。

 声までそっくり作ってくるなんて! 彼女たちの擬態が上手すぎるわ!


 ……でも、まあ、私の心の声は伝わったわよね。

 叫ぶのはダミーに任せて、ロウには挑戦を断ってほしいと願っていたら……。


「やりたくもない挑戦だが、拒否できないのだろう? やらせてもらう」


 落ち着いた声で、ロウはそう言った。


 あああああ! ロウったら、挑発を受けてしまったわ!

 大丈夫? 私を見つけられなかったら、帰してもらえないのよ?


「では、ロザリーを見つけてもらいましょうか」

 

 竜神さまが開始を宣言した。

 お面には覗き穴がないので、暗闇の中で待っているしかなかった。

 見た目が一緒なので、区別できるはずがない。

 

 ……でも、ロウが負ける勝負に真正面から挑むかしら。

 

 そこが気になるところだ。

 何か、考えがあるのかな?

 考えがあるとしたら、どうやって私を見つけるの?

 ぐるぐると考えを巡らせていると……。


「彼女がロザリーだ」


 ザッと足音がして、私の肩が優しく叩かれた。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ローチ……台所の黒い虫みたいじゃのォ(ォィ でもって、千と千尋でもやったあれかぁ。 まぁでもロウだしなぁ……匂いとかで判別してそう(ォィ
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