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人魚無双~幼女になって転移した先で推しの幸せのために私は生きる~  作者: 景華
第2章 そして少女は剣を取る

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本人からの脅迫状


ゴーン──ゴーン──……


1時間ごとに時を告げる学園の鐘の音が響く。


もう11時か……。

私はかれこれ1時間、()だるような暑さの中、このグローリアス学園の魔法訓練場にいる。

今日はこの魔法訓練場で、学園長の許可を得てクレアに聖魔法を教えることになっていたのだ。


私たちが日々魔物討伐に出かけているのを見て、自分も何かしたいと考えていたらしいクレアは、舞踏会が終わってから私に「聖魔法を教えて」と頼み込んできた。

先生や学園長に話すと、意外にもあっさりとOKが出たので今日この場で教えることになっていたのだけれど……。


約束の時間を1時間過ぎてもクレアがくる気配がない。

あのきちっとした性格のクレアが何の連絡もよこさないなんて、何かあったんじゃないか、そう思い始めた時──。


バチンッ!!


私の目の前にバチバチとした稲光と共に現れたのは一通の手紙。


花の模様が描かれた高級そうな手紙が、カサリと音を立てて一人でに開く。


私はそれを手に取ると、声に出して読んだ。


「パントモルツ伯爵家の令嬢、セレーネ・パントモルツは預かった。返して欲しくば、パントモルツ伯爵領の西の森にある小屋へ一人で来い」


……。

この妙に整ったお手本のような綺麗な字。

それに、手紙の転移の際に転移陣に送り込んだ魔力属性は雷属性。


……いや、本人(セレーネさん)じゃん。

────馬鹿なの!?


こんな丸わかりな自作自演に乗ると!?

私そんなにお馬鹿さんだと思われてるの!?

否定はしないけども!!

一応20歳……と言い続けて早5年ぞ!?


でも──。

私は一旦落ち着いて、冷静に考えてみる。

もしもこれが、本当だったら?


もしも本当にセレーネさんが誘拐されていて、これを書かされていたとしたら?


それに、クレアがいつまで経っても来ないことも気にかかる。


「はぁ……。まぁ、何もないに越したことはない……か」


先生は今日はグレミア公国との会談の日。

となると……。


私はポケットから色のついた正方形のメモ帳を取り出すと、丁寧に鶴を折る。

そしてそれに魔力を込めながら言葉を練り込んでいく。


「セレーネさんが誘拐されたという手紙を受け取りました。私一人で西の森の小屋へ来い、とのこと。レオンティウス様、至急パントモルツ家にセレーネさんの所在の確認をお願いします。私は先に西の森へ直接転移していきます」


これでレオンティウス様ならすぐに動いてくれるだろう。


「ぁ、追伸。関係あるかは分かりませんが、クレアも見当たりません。そちらにも人をやってくださると助かります」


私は言い終わると手のひらに乗せた折り鶴に向けて魔力を押し流す。

刹那、折り鶴は私の手のひらからふわりと浮かび上がって、淡い光を放ってからふっと消えた。


「これでよしっ。あとはレオンティウス様の判断で、先生に連絡をとってくれるでしょうっ」


THE他人まかせ!!


「それでは、西の森へ行ってみたりしましょうかねぇ」


私は腰に下げた刀に左手で触れると、セレーネさんが捕まっているであろうパントモルツ伯爵領・西の森へと転移した──。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒメちゃんも危地へと赴くのですね。とても心配ですが、何もないとそれはそれでヤバそうだと分かってもいますし、複雑な心境です。他人任せと言いつつ、突っ込んでっちゃうんですもの。偉い子ですよね、…
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