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神様は割りとミーハーだった件

ご無沙汰してます!


こんかいはちょっと短いです。

赤、白、黄、緑、紫が私の視界を埋め尽くす。

鳳凰の翼に抱かれやっと儀式が終わったのだと認識して気が抜けたのか、切りつけた手がジクジクと痛み出す。


『輝来、ジャンヌ、切った方の手を出して。』


鳳凰の女神である凰麗様がそっと顔を寄せて告げてきたので、皇子に凭れながらも手を差しだす。

うっ。手が真っ赤だ!深く切った手からは今も血が流れ出ている。視界に傷口が見えただけで更に痛みが増した気がした。


差し出した私達の手を凰麗様がゆっくりと舐め取ってゆくとみるみるうちに傷口が塞がってゆく。着物に付着した血液は消えなかったが私と皇子の右手と左手は、儀式前のまっさらな手に戻った。


『す…………ごい、傷口が、消えた………。』


『凰麗様のお力だ………。掛巻も畏き(かけまくもかしこき)鳳凰の女神(ほうおうのめがみ) 凰麗命(おうれいのみこと) 奇しき神霊に依りて現出座る尊き元津神…………』


皇子が私を支えながらも姿勢を正し頭を下げようとした所を凰麗様が羽根で止める。



『堅苦しい挨拶は止しましょう輝来。………私は、傷口を塞ぐ事は出来ても、失った血や気力、体力を戻す事は出来ないのです。貴方達はかなりの量の血を流しました。少しの間、身体がふらつくでしょうから楽な姿勢で構いません。』


優しく目を細めた凰麗様に促され輝来殿下は頭を下げ 、床に座る。私も神様のお言葉に甘えて楽な姿勢になろうと体を捩る。正直、身体に全然力が入らない。ちゃんと立って居られるか解らなかったからかなりありがたい。


「ジャンヌっ!」


自分を呼ぶ声がして振り返ると王子が此方へ駆け寄って来た。


「…………アル…!」


声が掠れてうまく返事が出来ない。

私達が座っている場所まで来た王子は凰麗様に最敬礼をする。

途端に周りの人々がざわつく。それもそうか……異国の貴人が訳のわからない儀式をして神様と言われる巨大な極才色の鳥と呼び出し、そのわけの解らない鳥に王族が最敬礼するなんて。


「ネホンの神よ、ようこそおいでくださいました。私は、ジャンヌの婚約者で、この国の第一王子 アレクサンドル・ヴィ・クロスクロウと申します。ネホン語でご挨拶出来ずに申し訳ありません。」


「まあ、丁寧にありがとう。大丈夫よ、ちゃんと貴方の言葉が解るわ。輝来の神力とジャンヌの血のおかげでこの国の言葉を話せるようになったから。此方こそ始めましてね。私は、ネホンの天空に住まい、かの国を守護するもの。皆はよく私達の事を鳳凰神・凰麗と呼んでいるわ。」


凰麗様が王子の礼に対して、目礼を返すと、いきなりクロスクロウ語で話し出したので、物凄くびっくりした。隣の輝来殿下も目を真ん丸にして驚いてる。


「輝来皇子とジャンヌの血でクロスクロウ語が話せるようになったとは…………流石は神の成せる業というところでしょうか。」


「ふふふ。血というものは素晴らしいのよ。その一滴にその人間、果てはその祖先の情報もしっかりと刻み込まれているの。仮にとはいえ私は、輝来とジャンヌの間から産まれた"子"だから"親"の情報は全て受け継ぐのよ。だからクロスクロウ語も話せるようになったし、この国の歴史や礼儀作法だって全て解るわ。………さて、この国の言葉も話せるようになったから、そろそろ本題に移りましょうか。」


クスクスと凰麗様は笑いながら大きく羽根を広げると、ふわりと飛び立ち、国王陛下の眼前に浮かんだ。

警護の兵が慌てて国王陛下の前に立とうとするが、陛下は解らないですけどなぁ手の動きだけでそれを止める。


「クロスクロウ国王よ、私はネホンを守護せしもの。皆は私の事を凰麗と呼ぶ。此度の儀式のために素晴らしい舞台作成の協力感謝する。私が今日、この時、この場所に降り立ったのは、そなた達の国を守護するものの事について話したかったからだ。」


「余は、クロスクロウ国、国王クロヴィス・ゼ・クロスクロウだ。遥か遠い東の地よりよくぞ参られた。我が国には神への信仰はほぼ無いに等しい。従ってネホンの神に対する我が国の対応は、我が国での最高賓客としての扱いにさせていただきたい。」


「ああ、それで構わぬよ。そなたたちにとっての私は、只のでかくて派手な鳥にしか見えないだろうからね」


凰麗様の言葉に陛下が否定をしようとする前に、大きく翼を広げた凰麗様はその体を翼で隠す。すると、翼の隙間から光が漏れ出す。


「…………人化術だな。」


舞台から陛下と凰麗様の方を見上げた輝来殿下がポツリと呟いた。

羽根の隙間から漏れる光が弱くなり、閉じた翼がゆっくりと開く。そこから現れたのは赤い髪が毛先に向かうと黄色いグラデーションになっている長い髪と金色の瞳、眩いばかりの美貌をもった男装の麗人だった。


『おっ、凰麗様…そのお姿は?!』


「おお輝来、気がついたか!この服はなどうやらこの国で流行している歌劇団の、アスカルという男装の麗人が着ている服を真似てみたのだ。」


成る程、良くみれば確かにアスカルの様な服だ、でもアスカルは背中に円形の羽ねは背負っていない。というより、歌劇団の男役トップスターのような出で立ちな気がする。


「……むう、だが背中の羽が邪魔だな。アスカルはこんな羽など背負っておらなんだ。これではトップスターになってしまう。しかし、人化術をやってもこの羽だけは消えぬからなあ…」


あ、心の中で思ってた疑問をご本人の口から言ってくれたわ。


「まあ、よい。これで余り人にも怯えられず話が出来るだろう。では、グロスクロウ国王と国を守る者達よ良く聞くのだ……………」


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