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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~  作者: 溝上 良
最終章

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第91話 なん、だと……?

 










 私は愕然としていた。

 アルと出会ってから割と頻繁に愕然としている気もするけど、今回は間違いなく最高の愕然だった。


 ……なんだ、その言葉は。頭がおかしくなりそうだわ。


「えーと……。つまり、この子は聖剣ではないんですの? マスター」

「うむ。間違いなく聖剣じゃない」


 白目をむいて硬直している私を見かねたアンタレスが、代わりにアルに尋ねる。

 しかし、返ってくるのは無情な言葉である。


 私が……聖剣じゃない……?

 直後、アルの言動を思い出してハッとした私は、大きく声を張り上げた。


「じゃ、じゃあどうしてあんたは私を頑なに聖剣って言っていたの!?」

「聖剣使えないと勇者じゃないだろ」

「こ、こいつ……!」


 自分に言い聞かせるために言っていただけなの……!? このゴミ!

 私が聖剣でないと確信しつつ、自分が勇者であり続けるために聖剣だと言っていたってこと!?


 やっぱり、この世界おかしいわよ! 勇者だと認定するのが聖剣を使えるから、なんてバカみたいな判断基準にするから、アルがこんなことしたんじゃない!


「じゃ、じゃあ、私はいったい何なのよ!?」


 そう、そこが一番大切だ。

 私が聖剣ではない。となると、私は何なのか。


 アイデンティティの崩壊につながりかねない。

 私はごくりと喉を鳴らして待つと、アルはじっと私を見てから言った。


「呪剣だ」

「じゅ、呪剣!?」


 とんでもなさすぎる回答に、私は目玉が飛び出たかと思った!

 寄りにもよって呪いの剣ってどういうこと!?


「こ、こんな美女を捕まえて呪いとはどういう了見よ!!」

「事実なんだから仕方ないだろ」


 やれやれとアルは首を横に振る。

 そして、いつも手放さない武器の私を掲げてみせる。


「ほら、しつこくお前の切っ先に引っ付いている瓦礫。これもおかしいと思っていなかったのか?」

「瓦礫って……。あんたがそれで人間を潰しまくって、血を吸いまくったそれ?」


 私の視線の先には、剣の切っ先にへばりついたままの大きな瓦礫が。

 アルが選ばれたとかではなく、シンプルに腕力で引っこ抜いたということが分かる、何よりの証拠である。


 せっかく剣という武器なのに、その瓦礫で敵を潰している数の方が多かった要因。


「ああ。いいか、冷静に考えろ?」


 じっと私の目を真摯に見つめて、アルは言った。


「ただの土くれが、激しい戦闘でどうして砕けていないんだ?」

「――――――」


 た、確かに……。

 つい先ほど、闇の力を使う聖剣なんてないといわれたときと同じくらいの説得力に、私は言葉を失った。


 が、頑丈すぎる……。

 ただの土くれのくせに、確かに異様に頑丈だ。


 だって、人を全力でぶん殴っても、まったく壊れないんだもん……。


「じゃ、じゃあ、それは何なのよ!?」

「お前を封印するための魔法式が刻まれた瓦礫」

「なん、だと……?」


 大きく口を開け、それがふさがらなくなってしまう。

 ふ、封印……? 私を……?


 瓦礫に刻まれるってどういうことかと一瞬思ったが、おそらく私が地面に突き刺さっていた時、私を中心に封印の魔法式を刻まれていたのだろう。

 それを、アルが無理やりぶち抜いたので、その一部がついてきた。


 ……あれ? じゃあ、これ全部アルが悪いんじゃ……。


「私が無理やり引っこ抜いたから不完全だがな。それでも、健気に封印をし続けようと頑張っているんだ。素晴らしいな」

「えーと……つまり?」

「私の愛剣は、強力な封印を施される程度には危険な呪剣だということだ」


 私はガクリと膝から崩れ落ちる。

 私が……危険な呪いの剣、だと……?


 聖剣だと思っていたのに……。


「マスターのことを、自分を勇者だと思い込んでいるやべー奴とか言っていましたが……」


 アンタレスが近づいてきて、私の肩にポンと手をのせる。

 そして、満面の笑みを浮かべて言った。


「あなた自身も、自分を聖剣だと思い込んでいるやべー奴でしたのね!」

「――――――」


 私の心がぽっきりと折れた音がした。

 私も……アルと同類だった……?


 もうだめだ……。生きていけない……。


「さて、ということだ」


 がっくりと両手両膝を地面についてうなだれている私を放っておいて、アルがギラリとオルティメウスをにらみつける。

 普通、この場で私を慰めるところでしょ? 何してんの?


 しかも、今までオルティメウスはなぜ攻撃を仕掛けてこなかったのか。

 律儀に待ってんじゃないわよ。あんたが待っていなかったら、私はこの悍ましい現実を突きつけられることはなかったかもしれないのに。


「お前の力は確かに強力だが、この呪剣の力でぶち殺してやる」


 やっぱり、言っていることがボスキャラなのよねぇ……。


「ふん、やれるものならやって――――――」

「死ね!!」

「相変わらず人の話聞かないわね!?」


 問答無用で黒い斬撃を放つアル。

 しかし、今度の斬撃は今までのそれとは違った。


 今までのものは、まるで巨大な黒い波のような、広い範囲を飲み込むような斬撃。

 今回の黒い斬撃は、まるで出刃包丁の刃のように長方形で薄い斬撃だった。


 しかし、その分飽和的な斬撃よりも速度が出て、しかもよく切れた。


「がはっ……!?」


 不意打ちに対応はできるようになっていたが、あまりの速さにオルティメウスは対応できなかった。

 胸に一文字、傷が入る。


 そこから大量の血が噴き出した。

 深い傷だからこその出血量。明らかに致命傷だった。


 しかし、それはオルティメウスには致命的なものにはならない。


「だ、だが、また私の力で……」


 大量の出血で顔を青くしながらも、笑みを隠し切れないオルティメウス。

 だが、その直後、彼の顔は凍り付く。


「力が……!?」

「どうした? お得意のやり直しは使わないのか? 急がないと、死んでしまうぞ」


 何かを知っている……というか、実際にやってのけたアルは、これまた意地わるそうな笑みを浮かべていた。

 うん、悪人ですね、これは……。


「き、貴様! 何をした……!? 私の力が、使えない……! やり直しができない!?」


 その言葉に、私も驚かされる。

 力を封じる力……?


 ……え? そんなの、私にあったの?

 というか、神の力を封じ込めるって……結構すごくない?


「ふっ。これこそが、この呪剣の能力の一つだ」


 誇らしげに私を掲げるアル。

 にんまりとしながら言った。


「すなわち、相手の最も嫌がることを実現する力。今使ったのは、それだ」

「そんな能力ありましたの?」

「いや、知らない」

「自分のことなのに……?」


 アンタレスは呆れたような目を向けてくるが、仕方ないじゃないか。

 私、封印されていたみたいだし、ちょっと記憶に穴が開いているのよ、きっと。


 私はそっと目をそらした。


「教えよう。わが愛剣の、恐るべき呪いの力を」


 そんな中、アルはこれまた嬉しそうにネタ晴らしをしていた。

 ……恐るべきって言うな!


 私の怒気を無視しつつ、アルはその能力の名を言った。


「【忌夢顕現】」




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守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話


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