二人きりの密室
「なっ、何を言うんですの? わた、わた、私がわざわざ海野君の後を追ってですって……?」
貴梨花はその頬をカーッと赤く染め、動揺しだした。
「そ、そんなわけなくってよ……? わた、わた、私が海野君のことなんて心配するわけがなくってよ? わた、わた、私は、ええと、その……そ、そう、クラス委員長として、クラスの生徒の通学路上に置かれた不審なカードの取り締まりのため、こうして身を挺してカードの中に調査に来たのですわあっ!」
貴梨花はその目をキョロキョロと泳がせながら、清陀に言うのだった。
「しーっ! 青峰さんも声が大きいってばあ……」
清陀が人差し指を口に当て、貴梨花に注意する。
「ご、ごめんなさい……海野君……」
貴梨花は気まずそうに下を向いた。
「ところで……この部屋は、何の部屋なんだろう……」
清陀は自分たちの今居る部屋を見廻してみた。
部屋の入口の扉のところに二人の人間の入るスペースがかろうじてあるくらいで、部屋の中にはギッシリと物が詰まっていた。
見たところ、大きな木材を割ったような、何本もの木の棒が所狭しと並べられていた。
「ここは……物置部屋じゃないかしらね……?」
貴梨花が清陀の背中に向けて言う。
「きっとここに仕舞われている木材は暖炉にくべる薪じゃないかしらね……?」
「そっかあ。物置部屋かあ……」
清陀は納得した様子で、改めて貴梨花の方を振り向いた。
「あっ……」
ふいに自分を見つめる貴梨花の切れ長の目を見た瞬間、清陀はあることに気付くのだった。
「な、何よ? 私の顔に何か付いているのかしら?」
途中で言葉を詰まらせた清陀に、貴梨花は動揺した表情を見せる。
よ、よく考えたら僕はこんな密室で女の子と二人っきりだぞ……?
清陀がその事実に気が付いた瞬間、なぜか心臓がドキドキと高鳴り始めた。
あ、あれ……? む、胸がもの凄い速さで脈打っているぞ……
ど、どうしてだろう。ぼ、僕はこんな超意地悪委員長である青峰さんなんかにドキドキするはずなんてないのにぃ……




