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ラヴァーズの冷たい瞳

 その時、ガチャッ、と部屋のドアが開く音が聞こえた。


「あら……お目覚めでございますね、愛しのご主人様……」

 色気のある女性の声が聞こえてくる。


「「ラヴァーズちゃん!」」

 カインとアベルが二人同時に声を揃えて、部屋に入って来た人物の方を振り向いた。


「ええっ? 魔人ラヴァーズちゃん……?」

 清陀が、カインとアベルの視線の先に目を向けると、そこには桃色のセミロングの髪に、桃色の切れ長の目をした全裸姿の女性が立っていた。


 腰には黄金色の矢筒を付け、その背中には黄金色の翼を生やしている。魔人ラヴァーズはふだんであれば目隠しをしているが、今は目隠しを外していた。


「はい、魔人ラヴァーズにございますよ、愛しのご主人様。明日は、貴方と私との結婚式にございます。明日に備えて、今宵はゆっくりと、お休みになってくださいませ……」

 魔人ラヴァーズは、その桃色の瞳で清陀に優しく微笑むと、

「……では、もしも何かございましたら、そこにいるカインとアベルにご遠慮なくお申し付けくださいませ……」

と言って、軽く会釈をしてその場から立ち去ろうとした。


「ちょっと! ちょっと待ってくれよ、魔人ラヴァーズちゃん! ぼ、僕は君と結婚式なんて挙げないよおおっ! 明日も学校があるし、僕は今すぐ家に帰りたいんだよお! ねえ、ここは一体どこなんだい? 僕の家までどうやって帰ったらいいのか教えてくれよおっ!」

 清陀は魔人ラヴァーズの背中に必死に訴えかけた。


「あら? 愛しのご主人様。貴方はもう元の世界のお家には帰れませんよ。だって、ここはトート・タロットの『恋人』のカードの中の世界なのですから……」

 魔人ラヴァーズは清陀に振り向くと、桃色の切れ長の目を光らせ、ニヤリ、とその唇の口角を上げて冷たく笑った。


「はああっ? ここが、トート・タロットの『恋人』のカードの中の世界だって……?」

 清陀は驚きに目を丸くする。

「な、何を変な冗談を言っているんだよ! タロット・カードの中に僕みたいなフツーの人間が入りこんだとでも言うのかい……?」


「まあ……お忘れですか、愛しのご主人様。この私が貴方をカードの中にお連れしたことを?」

 魔人ラヴァーズは清陀にそう問いかけるが、その桃色の目は冷たい光を放ち続けていた。


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