もしかして君は死んでしまったの?
「あっははは。審判ちゃんこと、この大天使ガブリエル様の手にかかれば、ざっとこんなものさ!」
審判ちゃんは、誇らしげに笑みを浮かべ、そう言うのだった。
「助けてくれて、ありがとう! 審判ちゃん! それに戦車ちゃん! 力ちゃんも!」
愛流華奈はカードから出て来た三人の少女たちに礼を言うと、
「皆、カードに戻るのよ!」
と、三枚のカードを少女たちに向けて突き出した。
ボムッ、という音とともに、戦車ちゃん、力ちゃん、審判ちゃんの三人の少女たちは、黄色や水色の煙に姿を変え、カードの中へと吸い込まれていった。
「ソードのナイトよ、ヘキサグラムに戻れ!」
愛流華奈が続いてそう叫ぶ。
すると、剣士の姿のままの愛流華奈の身体から、剣を手にした騎士のカードの映像が現われ、そのヴィジョンが、愛流華奈が首に架ける六芒星のペンダントの中へと吸い込まれていった。
同時に女剣士の姿だった愛流華奈が、元通りの制服姿に戻っていく。
「ふう~っ」
愛流華奈は額の汗を手で拭いながら、溜めていた息を吐きだした。
「清陀さん、大丈夫ですか……?」
愛流華奈はそう言って清陀の方を見やり、微笑んだ。
「あ、愛流華奈ちゃん! 僕はぜんぜん大丈夫だけど、愚者ちゃんが! 愚者ちゃんが身体中傷だらけのままで、ずっと気を失っているよ!」
清陀は愛流華奈の方を一瞥すると、道路の上で倒れたままの愚者ちゃんの元に駆け寄り、喚き出した。
愚者ちゃんはその身に纏った清陀の高校の制服をボロボロにして、その顔や手足も魔人フールによって傷だらけにされていた。
「うわあーっ、愚者ちゃん、しっかり! しっかりしてくれよお……愚者ちゃん……愚者ちゃん……」
清陀が横たわる愚者ちゃんの身体を必死に揺さぶりながら、その瞳を涙で濡らし、叫び続けるのだった。
「……ねえ、愚者ちゃん……もしかして君は死んでしまったの? ねえ、愚者ちゃんってばあ……返事を、僕に返事をしてくれったらあ……」
清陀がいくら呼びかけても、愚者ちゃんのその瞳は一向に開かれず、愚者ちゃんは何らの反応も清陀に示すことは無かった。
「清陀さん……大丈夫です……愚者ちゃんは、ちょっとやそっとで死んだりするような子じゃありませんよ……きっと必ずまた可愛いらしい笑顔を私たちに見せてくれますよ……」
愛流華奈は、うちひしがれている清陀の肩に優しくそっと手を置くと、もう片方の手で、制服の内ポケットから一枚のタロット・カードを取り出した。




