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「現在」と「未来」から飛び出る煙

 その時、赤いテーブルクロスの上に置かれた、残り二枚のカードが突然、ボムッ! という音を発したかと思うと、真ん中の『現在』の位置のカードから黄色い煙が、右端の『未来』の位置のカードからは灰色の煙が立ちこめはじめた。


 黄色の煙と、灰色の煙のそれぞれが人間の女の子のような形に変化していく。


「ちょっと、アルカナちゃん! まだ占い途中だよね? 『現在』の位置のカードの説明もしていないのに、なんか話を丸く収めようとしていない?」

 テーブルクロスの真ん中の『現在』の位置のカードから出て来た黄色い煙は、T字の形の木に右足を縛られ逆さ吊りにされた少女にその姿を変えた。

 少女は見た目、十三、四歳くらいだろうか。青いシャツのような服を着て赤いズボンを穿いている。縛られていない左足は折り曲げて右足と交差させるような格好をしており、ショートヘアーのその頭の周りから黄色く輝く光を発していた。


「まあ! 吊るされた女ちゃんじゃないの! どうして勝手にカードから出てくるのよ!」

 愛流華奈が逆さ吊りの少女の出現に驚いた様子で叫ぶ。


「キャハハハ。ワタシの出番も回って来ないまま、話が丸く収まっちゃうなんて、つまんなーい! ねえねえ、その辺にいる子たち、適当に何人かあの世に連れて行っていい?」

 テーブルクロスの右端の『未来』の位置のカードから出て来た灰色の煙は、黒い甲冑かっちゅうに身を包んだ騎士のような格好をした少女に姿を変えた。

 少女は、自身の身長よりも大きそうな鋭い鎌を片手に持っている。銀髪のツインテールで、その瞳は丸くクリッとした赤眼せきがんで、睫毛も長く、パッと見は、可愛らしい印象を感じさせる。見た目に十二歳前後だろうか。


「死神ちゃんまで! どうして勝手にカードから出て来ちゃうの!」

 愛流華奈が、またも驚いた様子で叫ぶ。


「こ、この子たちはきっと、わ、私の恋の運命を変えてくれる存在に違いありませんわ!」

 青峰貴梨花は、カードから飛び出して来た新たな二人の少女たちの出現に、目の色を変えて起き上がった。


「あなた方は、『現在』と『未来』を表すカードさんたちよね? 私と海野君との恋の運命、この先どうなるのかしら? この私に教えてくださいますこと? ねえ、お願いですわ……教えて……どうか教えてくださいませんか……」

 貴梨花が涙ながらに、新たにカードから出て来た二人の少女に懇願するのだった。


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