塔ちゃん顕現!
「はい。今回のスリーカード・スプレッドでは貴梨花さんとお相手の方との、お二人の関係を観ています。なので、『過去』の位置の『塔』はお二人の過去の関係そのものを表していると言えます。
お相手の方から見れば、貴梨花さんは出会いの時点で自分の存在そのものを破壊し崩壊させるような『塔』に見えた。これは『塔』のカードのネガティブな意味がそのまま出ています。
そして、貴梨花さんから見れば、そのお相手は出会いの時点でまさに運命の恋を感じさせるような『塔』に見えた。これは『塔』のカードのポジティブな意味がそのまま出ています。
このように過去においてお二人の関係が『塔』のカードであったというのは、まさに出会いの時点から既にお二人の気持ちは、すれ違っており、スタートの時点から既に破壊と崩壊に向かっている関係だ、と言うこともできるわけです」
愛流華奈はニッコリと微笑みながら貴梨花に答える。
「な、何ですって! 私とその相手とは、出会った瞬間から破壊と崩壊に向かっていく関係だと言うの!」
貴梨花はその切れ長の瞳を涙で濡らしながら喚きたてた。
「わ、私が今までの人生で唯一、運命のお相手だと感じた殿方が、出会った瞬間から崩壊している関係だったなんて……あ、あんまりだわ! 酷い……酷すぎるわ……」
貴梨花はそのままテーブルクロスに顔を突っ伏して泣き崩れた。
その時、テーブルクロスの上に置かれた『塔』のカードがビカビカッ! という轟音とともに突然に光だし、カードから黒い煙がたちこめはじめた。
黒い煙が教室の床に集まりはじめ、しだいに人の形を作っていく。
「アルカナさあ、アンタ酷すぎるねえ……その子、泣いてんじゃん?」
黒い煙が一人の少女に姿を変えた。その少女は、黒いビキニの水着姿で、見た目に十代後半くらいだろうか、女の子にしては異様に背が高く、身長は170センチ以上ありそうだ。金髪赤眼で目は切れ長、髪の毛は、カーリーヘアと言うのか、くるくるパーマのかかったようなショートヘアをしている。
「まあ! 塔ちゃんじゃないの! 呼び出してもいないのに、どうして勝手にカードから出て来ちゃったのよ!」
愛流華奈は、『塔』のカードから飛び出して来た少女の姿を見るなり、いきなり怒鳴るように言った。
「塔ちゃんって呼び方はやめてくれよな。テメエの親父を呼んでいるんじゃねえんだからさ! あたいはさ、タワーちゃんって呼ばれたいんだよね!」
塔ちゃんと呼ばれる少女は愛流華奈に反抗的な目つきでそう言うと、
「アンタ、可哀想だねえ……運命を感じた男との出会いがさ、いきなり崩壊に向かう関係だって言われちゃさ、そりゃ泣きたくもなるってもんだよな……」
と、テーブルクロスに突っ伏して泣き崩れている青峰貴梨花に同情するように声をかけた。




