「4番 THE EMPEROR 『皇帝』」、「11番 JUSTICE 『正義』」、「15番 THE DEVIL 『悪魔』」
「ふーん、先生は悪魔と呼ばれているだけじゃなくて、正義でもあり、皇帝でもあるんですか……」
愛流華奈は感心するかのようにウンウンと頷いた。
「ほお、感心して聞いてくれたようだね。嬉しいよ」
柿淳大治は自分の話を聞く愛流華奈の態度に嬉しそうにニヤけた。
「はい。とっても感心いたしました……」
愛流華奈はそう言いながら、ブレザーの内ポケットからタロット・カードの束を取り出し、その束の中からサッ、と三枚のカードを引き抜いた。そして三枚のカードを机の上に並べて置き、端から順番にカードに右手を乗せていった。
「皇帝ちゃん、正義ちゃん、悪魔ちゃん、出てきて!」
愛流華奈がそう叫んだ瞬間、ボムッ! という音をたて、机の上に並べて置かれた三枚のカードから、それぞれ、オレンジ、赤、黒の三色の煙が立ちこめた。それぞれの色の煙が教室前方の教壇の脇にある空間へと集まっていった。三色の煙がそれぞれに人間の形のようなものを作っていく。
「うわあ! カードから愚者ちゃんが出て来た時と同じパターンだ! カードからまた新しい女の子が出てくるんだな? こ、今度はもしかして三人?」
清陀が机から身を乗り出すようにして、教室の前方に集まる三色の煙を凝視する。
「な、何だね? この煙はっ! き、君は一体何をしようと言うんだね? か、火事でも起こすつもりなのかっ!」
教壇に立っていた柿淳大治は、教壇のすぐ脇に三色の煙が集まってくるのを見て、ハンカチで必死に口を押えながら、喚き散らすのだった。
「朕は国家なり! アルカナよ、朕に何用か?」
オレンジの煙が頭に王冠を被った十代半ばくらいの少女に姿を変えた。銀髪の長い髪、目は鋭い切れ長で、赤い装束を身に纏っている。右手には生命の十字と呼ばれる、先端が丸い円の形をした笏を持ち、左手には地球儀を持っている。そしてその少女は羊の頭に飾られた玉座に腰かけているのだった。
「4番、THE EMPEROR.『皇帝』のカードから出てきた、皇帝ちゃんです。ちょっと気位が高いですからお気をつけて……」
愛流華奈は隣の席の清陀に、ソッと囁くようにカードから出て来た女の子の説明をした。
「私は裁判の女神。私の天秤は罪を量り、私の剣が罪を断つ!」
赤い煙は、金髪のボブの髪をして、切れ長の瞳の、赤い法衣を身に纏った十代半ばくらいの少女に姿を変えた。少女は、右手に剣を掲げ、左手には天秤を吊り下げている。
「11番、JUSTICE.『正義』のカードから出て来た、正義ちゃんです。本人はジャスティスちゃんと呼ばれたがっていますけど……」
愛流華奈が清陀に囁いた。
「ケケケケッ。オレ様をこんな昼間に呼び出して、アルカナお前、こんな昼間っから、どんな悪事を働こうって言うんだ?」
黒い煙は、頭に二本の角を生やし、鋭く尖った耳をして、口からは牙を生やした、ツーサイドアップの髪形の、釣り目の少女に姿を変えた。
少女の額の上には逆五芒星が描かれている。見た目には、十三、四歳くらいだろうか。上半身が裸で、人間の少女のような可愛らしい乳房とヘソを露出しているが、その下半身は、一見するとヒョウ柄にも見えなくもない、獣のような皮膚をしている。そして背中にはまるでコウモリのような大きな羽を生やし、お尻には先端の尖った細長い尻尾を生やしていた。右手を高く上に掲げ、左手には火のついた松明を逆さまに持っている。
「15番、THE DEVIL.『悪魔』のカードから出て来た、悪魔ちゃんです。私にかなり手を焼かせている子です……」
愛流華奈は清陀にそう囁くと、
「皇帝ちゃん、正義ちゃん、悪魔ちゃん! この先生は自分のことを皇帝で正義で悪魔だと言い張っているわ! すこし懲らしめてあげて!」
と、教壇の柿淳大治を指さし、カードから出て来た三人の少女に言った。




