青髪ツインテ委員長登場
「はぁはぁ……なんとかギリギリ間に合いそうだ……」
学校の校門がすぐそこまで見えてきた。
登校中、慌てていながらも清陀は頭の中で、
「どうして愛流華奈ちゃんが悲しんでいる夢を見たのかなあ……」
ということばかりを考えていた。
たしかに昨日のあの出来事は今でも信じがたい、それこそまるで夢の中のような出来事だった。
見知らぬ占い師の少女にいきなり声をかけられて、突然、胸を触らせてくれたり、タロット・カードから本物の女の子が飛び出して来たり、カードから飛び出した女の子と抱き合って空を飛んだり。
僕の人生の中でこんな経験は初めてだし、このことを誰かに話したら、きっと信じてはくれないかもしれない。カードから人が出て来たとか、女の子と空を飛んだなんて誰かに言ったら、きっと僕は頭がおかしくなったと思われるだろう。
それほど、昨日の出来事は現実離れした出来事だった。
でも、僕にはたしかにあれが現実だったと分かる。
あの愛流華奈という占い師の女の子は心から僕の人生を変えようとしてくれていたし、タロットについての知識を語るときの目の輝きはかなり真剣だった。
愚者ちゃんだってちょっといい加減な感じの女の子ではあるけど、大人になると皆、自由な子供の心を忘れちゃうって哀しんでいた時の眼差しはとても真剣だった。
あんな真剣な目をした女の子たちが僕の妄想なんて筈は無いんだ。あの出来事はたしかに現実なんだ。あの子たちにまた会いたいなあ……今日、学校が終わったら、また帰りに寄り道して、あの大通りに会いに行こう。今日はあの子たち、あの場所にいるのかなあ……
清陀が昨日の現実離れした体験のことをずっと頭の中で考えながら、教室へと到着すると、担任の森咲杏奈が、
「こらっ、海野君は完全に遅刻だなっ!」
と怒った声で清陀を迎えたのだった。
ショートの髪形が可愛らしい二十代後半くらいの女性の教師で、その真ん丸い瞳は、怒っていても怒られているんだいうことを当人に忘れさせるくらいに安心感を与える、一言で言えば癒し系のタイプの先生である。
「あ、杏奈先生、ご、ごめんなさぃ……」
清陀は背中を丸めて、か細い声で担任に謝りながら、自分の席に着こうとする。
「海野君は、これで今月五回目の遅刻だと思いまーす」
クラス委員長の青峰貴梨花が、とぼけて聞こえるような声で、それでいて、やや意地の悪いトーンで言った。
青髪ツインテールの切れ長の瞳をしたパッと見は可愛い美少女なのに、性格が悪い。それなのにクラス委員長なんかやっていて、偉そうにして、他の皆も文句が言えないんだ。この子、僕は苦手なんだよなあ……
清陀は、またクラス委員長が僕を皆の前でバカにするんだ、と嫌な気持ちになった。




