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それどころじゃない二人

「あははは! あはぁ! あはぁ!」

 うっそうと木の生い茂る森の一角に甲高い笑い声が響いていた。


 月ちゃんは、地面に突き刺さったヴェロモトゥールの先端部分に必死にしがみ付いたまま、高揚した笑い声をあげ続けていた。


「きゃあああっ! 枝にスカートが! スカートが引っ掛かっていますことよおおおっ!」

 青峰貴梨花は、真っ赤なパンツをさらけ出した姿で、広葉樹の幹の下、手を伸ばしながら必死に跳びはねていた。


 貴梨花の頭上の枝には赤いチェックのスカートが引っ掛かってしまっていた。


「アルカナちゃん、大丈夫? 怪我とかない?」

 黄色いロール状の髪にクリッとした瞳の全裸姿の少女、太陽ちゃんは、地面に倒れている少女を抱き起こし、必死に呼びかけていた。


「う、う~ん……」

 抱きかかえられた愛流華奈は、その目をゆっくりと開くと、

「太陽ちゃん……助けてくれたのね。ありがとう……」

と、太陽ちゃんに微笑みかけた。


「お礼なんて言わなくていいんだい! オイラがお日様を呼び出しちまったせいで月ちゃんの三日月が落っこちまったんだからな、全部オイラのせいさ……」

 太陽ちゃんがその丸い瞳を縮ませて申し訳なさそうに愛流華奈に言う。


「まあ……太陽ちゃんはちっとも悪くないのよ。私が太陽ちゃんを呼び出しちゃったのがいけなかったのに……」

 愛流華奈が太陽ちゃんの顔を見上げてそう言ったその時、愛流華奈の視界に異様なものが映った。


「あら、あの模様は……」

 愛流華奈が空を見ると、そこには無限を表すレミニスカートの「∞」のマークが浮かび上がっていた。


「きっと魔術師ちゃんだわ……」

 愛流華奈は咄嗟にその身を起き上がらせると、

「月ちゃん! 貴梨花さん! 空のあの模様を見て!」

と空の一点を指さして叫んだ。


「あははっはぁーっ……あはぁ、あはぁ……」

 月ちゃんは地面に突き刺さるヴェロモトゥールの先端を掴み、ぶら下がったままで、愛流華奈の呼びかけに応じる気配が無かった。


「愛流華奈さん! 今はそれどころじゃなくってよ! 私のスカートが! 私のスカートがああっ!」

 青峰貴梨花は真っ赤なパンツを露わにしたまま、頭上の枝に手を伸ばしながら懸命に跳び続けていた。


「困ったわ……魔術師ちゃんがきっと、清陀さんの居場所を知らせてくれようとしているのに……」

 愛流華奈はそう言って溜め息を漏らした。


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