73話 空だけが快晴
◇
翌朝。
私は第0部隊の新しい団服に袖を通すと、鏡の前で深呼吸した。
今までの黒をまとった団服じゃなくて、第0部隊のみが許される黒と白の二色を使った団服は、幼い頃から私が憧れたそのものだった。
「今日から私も、第0部隊の一員……!」
鏡に映る自分の姿を、しばらく見つめる。
袖を通した瞬間、胸の奥がじんと熱くなって、涙が出そうなくらい嬉しかった。夢を叶えるための一歩を踏み出したと実感する。
なのに――
「……ずっと待ち望んでいたのに、ね」
鏡の中の私は、こんなにも晴れやかな日に似つかわしくないほど曇っていた。
間違いなく、アレンのせいだ。
「勝手な約束だけして、私を残して一人で行って……」
昨夜の余韻はまだ消えない。
痛みと切なさが、胸の奥に小さく残っている。まさか、こんな気持ちでこの日を迎えることになるなんて。
意識を研ぎ澄ませ、彼の魔力の気配を探る。けれど、家のどこにも感じられない。
――もう、いない。
昨夜が、最後の別れだった。
「……頑張らなきゃ。私の夢は、ここから始まるんだから」
頬を軽く叩き、背筋を伸ばしてから部屋を出る。
今、私にできるのは――夢を追い続けること。ここで立ち止まるわけにはいかない。……それしか、今の私にはできない。
気を取り直して外に出ると、快晴の空があまりにも遠くて、少しだけ憎らしかった




