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47話 再びのウルの再来

 


 これ以上お父様達と会話を続けていても時間の無駄! オドオドしているお父様達を部屋に残し、私は急いで部屋を出た。


 採用されたのは騎士の事務だっけ、魔法使いじゃなくて良かった!

 いや、そうじゃなくて! アレンに事情を説明してウルの採用を取り消してもらわないと! 何で私がこんなに慌てなくちゃならないのよ! 私はもう、メルランディア子爵家とは無関係なのに――


 ふと、慌てている自分を客観的に見ることが出来て、足を止めた。


 ――そうよね、何で私がウルのために、こんなに必死にならないといけないの。ウルの不正がバレて困ることになっても、それは私には関係ない。困るのは、自分達の危機的状況を全く理解せず、呑気に考えている脳内お花畑の人達だけ。


 回れ右して、アレンの元ではなく、今日の仕事をするために、マルチダ先輩の待つ事務室に向かう。


 きっと、ウルは帝国騎士団をかき乱すだろう。


(もう落ちるところまで落ちればいい)


 それで皆さんに迷惑をかけることになるのは申し訳ないけど……私はもう赤の他人なので、許して下さい。


 ◇


 ――――そして、話は元に戻る。


 任務に向かうためにアレンと廊下を歩いている最中、前方からひらっひらのドレスを着たウルを見た瞬間、『この子、頭大丈夫?』と割と本気で思ったけど、そのまま笑顔でアレンの元に駆け寄る姿は、偶然周りにいた他の魔法使い達も滅茶苦茶引いてた。


「アレン殿下ぁ、今日の私、どうですか? すっごく可愛くないですかぁ?」


 由緒正しい帝国騎士団の魔法使いの棟に、どうしてウルの姿があるのか……しかも、この場に相応しくないひらっひらなドレス姿で! アレンに色目を使って!


「もしあれなら、今日の任務に私を連れて行ってもいいんですよ?」


 誰が連れて行くか! もうお願いだから、メルランディア子爵家に帰って! ここはパーティー会場じゃないから! ダンスのお誘いじゃないのよ!?


「……メルランディア子爵令嬢、貴女がここで働き出して数日経ちましたが、今は仕事中のはずでは?」


「私の仕事はアレン殿下を癒すことですから。ね? お姉様じゃなくて、私を一緒に連れて行って下さい」


 何言ってるのこの子? やばくない?


「残念ですが、今日の任務は俺とリネットだけで行くことになっています」


「お姉様ばっかりアレン殿下を独占してズルいです!」


 仕事なの! 一体仕事を何だと思ってるの!?

 大体、私がアレンを独占して何が悪いの? アレンは婚約者なんだから、独占してもウルには関係ないでしょ!


「メルランディア子爵令嬢、貴女が雇われているのは騎士の棟です。魔法使いの棟に気軽に足を踏み入れられては困ります。それに、場違いなドレスを着て来られても迷惑です」


「え、でも私、アレン殿下に可愛い私を見せてあげようと思って――」


「迷惑でしかありません」


 周りの魔法使いの皆を見て。

 アレンの絶対零度の冷たい笑顔に、恐怖で凍り付いてるじゃない。よくこれで何回も何回もしつこく声をかけれますね。微塵も相手にされてないのに。


「アレン、もう行きましょう」


 こんなくだらないことで任務に遅れてしまうのは馬鹿らしい。

 アレンとウルの間に割り込むように立つと、分かりやすくウルに睨まれた。言っておくけど、邪魔してるのはそっちだからね?


「俺が他の女に声をかけられて、少しは妬きますか?」


「いいえ、全く。相手がウルですから」


 おっと、ウルが目の前にいるのに思わず即答で答えてしまいました。これじゃあ、ウルを眼中に無いって言ってるようなものか。


「それは良かった。俺はリネットしか見えていないので、安心して下さい」


 アレン……ウルに見せつけるためにわざと言いましたね。

 置き去りにしたウルの表情は、私達の姿が見えなくなったらその場で地団駄を踏んでいそうなくらい、悔しそうだった。


「メルランディア子爵令嬢は相変わらずですね」


「……そうですね」


 任務先に向かうため二人で馬車に乗り込むと、アレンは苦笑いを浮かべて先程の突撃を話した。

 姉なら、『妹が失礼しました』とここで頭を下げるべきなのかもしれないけど、私はもうウルの姉じゃないので、頭は下げない。


「アレンは、ウルが事務員として入って来ることを知らなかったんですか?」


「ええ、知るタイミングはリネットとそう変わりなかったと思いますよ。魔法使いの試験は俺が担当しますが、他は管轄外なので。しかも騎士側でしたしね」


「そうなんですね」


「知っていたらどんな手を使っても止めていました」


「ですよね」


 ただ、アレンなら本気を出せばウルを追い出すことも出来るはずなのに、今のところしていない。


「今すぐに追い出して欲しいですか?」


 アレンは私の心の中が読めるみたいに、的確に考えていることを当ててくる。


「いいえ、もうこうなったら、最後まで好きにさせようと思っています」


「奇遇ですね、俺も同じ意見です」


 ウルが短期事務員として帝国騎士団に来て数日、私の予想通り、ウルはあちらこちらで問題を巻き起こしていた。放っておいても、ウルは帝国騎士団を追い出されるだろう。



 

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