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45話 望まぬ来訪者

 


「だからってウルが血の繋がりのある妹には変わらんだろう。それに、多少の行き違いはあったかもしれないが、今まで家族として仲良くやってきたじゃないか」


 遂にお父様はボケたんですか? 仲良くやってきたことなんて一度もなかったでしょ。最終的に家族の縁も切ったくせに、何を今更。


「よくそんな世迷い事が言えますね。シルマニア宮での騒動はご存知でしょう?」


「それも誤解だ、後でウルに直接話を聞いたが、確かに話を誇張してしまったことは認めるが、お前に虐められていたのは間違いないと言っていたぞ」

「そうよ、ウルは貴女の所為で皆に誤解されてしまったと、泣いていたのよ」


 そんなの知りませんよ。ウルが勝手に自滅しただけなんだから。

 一足先に帰って実際に騒動を見ていないとはいえ、周りから嫌でも話は聞くでしょうに、未だにウルを信じるとか救いようがありませんね。ただ、今の私には、お父様達に信じてもらえようがもらえまいが、どうでもいいことだ。

 それよりも、どうしてわざわざ私にクリフ様との婚約解消を伝えに来たのかが気になる。


「一体、何の用があって私に会いに来たんですか?」


「ウルがクリフ様に婚約解消された責任を取りなさい」


 ――――は?

 意味が分からなさ過ぎて、一瞬思考が飛んだんだけど……何言ってるの、この人は?


「どうして私が責任を取らないといけないんですか? 私には関係ないじゃないですか」


 私が家から離れた後の、無関係になった後の事象だ。

 百歩譲ってシルマニア宮の騒動が原因だとしたらまだ言い分は分からなくないが、あの時点でクリフ様はウルを信じ切っていたし、それ以降が原因だとしたら、私は全く関係無い。


「何を言う! お前が姉としてウルを育てなかったことが原因じゃないか!」


 ――――は?

 駄目だ、さっきから宇宙人と話しているみたいで、意味が分からない。私がウルを育てなかったから、クリフ様に婚約解消された? 何で?


「クリフ様は、結婚した後ウルに家の仕事を任せようとしてたのに、ウルが何も出来ないと知って婚約を解消すると言い出したの……可哀想に、ウルはショックでずっと泣いているのよ!?」


 それこそ知らないよ!


「ウルが何も学んでこなかったことが原因でしょう。確か学校でも、病弱と嘘をついて魔法と剣技の履修を拒否したんですよね? しかも、本来五年通う必要があるのに、二年に短縮までして……貴族の娘として恥ずべきことですよ」


「まぁ、嘘だなんて! ウルは本当に体が弱かったのよ!」


 はいはい、お義母様達はそうやっていつもウルの言い分を信じて、お医者さんにお金を積んで嘘の診断書を書かせるくらい、好き勝手させましたもんね。

 お父様達の甘やかしが、あのモンスターを生み出したんですよ。


「本来なら姉であるお前が、責任を持ってウルを立派に育てなければならなかったのに、お前という奴は自分ばかり勉強して妹を放置して……これでお前が原因じゃないとは言わせないぞ!」


 私の所為じゃないわ! どう考えても勉強しなかったウルの責任だし、甘やかしまくった貴方達の責任でしょ! この人達の思考回路が理解出来なくて怖い!


「だからリネットには責任を取って、帝国騎士団の魔法使いの肩書と、アレン殿下の婚約者の座をウルに譲ってもらう」


 ――――もう帰れ! 今すぐ帰れ!


 あり得ない暴論に頭痛がする。よくそれが通ると思ったな! 通るわけないでしょ!

 そもそも魔法の一つもロクに使えないあの子に帝国騎士団の魔法使いが務まるわけないじゃない! 帝国騎士団を舐めないでよね!

 アレンの婚約者だって……アレンが認めるわけがない。彼が好きなのは、私だけ。


「安心しなさい、リネットにはまた我が家の運営を任せてやろうと考えている。娘と認めるわけにはいかないが、影武者としてで充分だろう」


 は、あ? 相変わらず、私を舐め腐ってますね。


 色々と言いたいことはある。大切な帝国騎士団魔法使いの肩書きを譲れとか、影武者になって家の運営をしろとか、それに何より――私からアレンの婚約者の座を奪うとか、絶対に許さない、認めない、渡さない。


「譲りません」


「我儘を言うんじゃない、リネット!」


「譲らないって言ってるでしょ!」


 魔法使いもアレンの婚約者も、何一つ譲らない。私から全てを奪おうとするなら、本気で許さない。


「いいから帰って来なさい! お前がいなくなってからというもの、家門の運営も上手くいかなくなって大変なんだ! それに加え、メルランディア子爵家の悪評も広がり支援も拒まれて、このままでは生まれ育ったメルランディア子爵家が落ちぶれることになるんだぞ!?」


「どうぞ勝手に落ちぶれて下さい。私はもう関係ありませんから」


 唯一血の繋がりのあるお父様。

 幼い頃、何度お父様に助けを求めたでしょう? 全て無視され、最終的には捨てられ、修道院に送られそうになった。そんなお父様を助けたいと思うほど私は聖人君子じゃないし、いつまでも親の愛を求める子供じゃないの。


「リネット! お前をそんな薄情な娘に育てた覚えはないぞ!」

「本当に可愛くない子ね、少しでもウルを見習えばいいのに」


 残念ながら、育てられた覚えもないわ。


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