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33話 クリフ様来襲②

 


「おい、もういい加減に止めとけよ!」


 サイラス先輩が至極真っ当に見える! お願いだから、今すぐその男を騎士の棟に連れ帰って、鎖を繋いで二度と魔法使いの棟に来させないようにして下さい!


「離せ! 僕はリネットが許せない! あんな可憐な妹を虐めて泣かすような最低な意地悪姉が!」


 ウルのどこが可憐なのかは全く分からないし知りたくもないけど、クリフ様が本当に私を嫌いなのは分かった。婚約者として過ごしていた時間がいかに無駄だったのかも、痛感してる。


「リネットが階段から落ちれば良かったんだ!」


 仮にも元婚約者に向かってそんなことを言うなんて、酷い人ね。


「――ここで何をしてるんですか?」


「! アレン」


 クリフ様は軽視しているようですが、事務作業は帝国騎士団の運営のためにも必要不可欠な作業なんです。だから魔法使い隊長のアレンも、こうして進捗状況の確認のために自ら足を運ばれるです。


「ア、アレン殿下」


 アレンの登場で明らかに動揺するクリフ様。

 アレンが来てくれて良かった! もう少し遅かったら、マルチダ先輩にサイラス先輩まで、クリフ様に掴みかかっていたところだった!


「アレン隊長! クリフ様が魔法使いのことを馬鹿にしました!」


 早速チクるマルチダ先輩に、クリフ様が、言うな! と睨み付けたけど、もう遅い。


「へぇ、それは面白いことを言いますね。騎士全体の総意と受け取ってよろしいんですか?」


「違います! クリフだけです! 断じて! 騎士の総意ではございません!」


 可哀想なサイラス先輩……クリフ様に巻き込まれただけなのに、必死で否定してる。

 サイラス先輩の言葉の信憑性を確認するように、こちらを見たアレンに反応し頷くと、アレンは次にクリフ様に視線を向けた。


「たかが騎士一人に魔法使い全体が喧嘩を売られるとは、俺も舐められたものですね」


「い、いえ! アレン殿下に喧嘩を売ったつもりは!」


「魔法使いの隊長は俺です。それに、俺の婚約者に酷いことを言いましたね」


 聞こえていたんですね。


「あ……それは、リネットが妹を虐めたから、つい言葉のあやで……」


 クリフ様は気付いてないけど、その言葉のあやで、マルチダ先輩とサイラス先輩にボコボコにされる寸前でしたからね。


「虐めの件は妹の妄言だとハッキリしたのを聞いていないんですか?」


 クリフ様はシルマニア宮のパーティーの時、別の任務で不在だったけど、あれだけの騒ぎ、ウルの婚約者であるクリフ様の耳に入っていないはすがない。


「それは、何かの間違いで……」


「証拠の映像も貴方にお見せするよう手配しておいたはずですか?」


 映像も見たのにまだ信じてないの? どんな思考回路でウルを信じ切ってるのよ。


「第一、それと魔法使い全体を馬鹿にするのは、また話が違います。同じ帝国騎士団で協力し合う関係である魔法使いを冒涜した罪は、重いですよ」


「……も、申し訳ありません」


 その謝罪はアレンに対するもので、私のものでも、魔法使いに対してのものでもないでしょ? 帝国騎士団魔法使いの隊長であり、第三皇子のアレンを怒らせてしまったからした、心のこもっていない形だけの謝罪。


「貴方の処遇は追って伝えますので、今すぐ、魔法使いの棟から出て行って下さい。許可が出るまで一歩たりとも立ち入ることを禁止します」


 結局、クリフ様は何がしたかったんでしょう? ウルの敵討ちのつもりだったのか知りませんが、わざわざ処罰を受けるために来るなんて、馬鹿なのでしょうか?

 自業自得なくせに、部屋を去って行く時の恨めしそうな顔の意味が分かりません。


「――騎士のクリフが本当に申し訳ありませんでした! アレン殿下、あと、リネットにマルチダも」


 クリフ様を部屋から追い出した後、サイラス先輩は深く深く私達に向かって頭を下げた。


「サイラス先輩は悪くありませんよ。それに、私のために怒ってくれましたよね? ありがとうございます」


 剣を鞘から出してクリフ様に切りかかりそうになった時は、冷や汗ものだったけど。


「そうよ、問題はクリフ様よ! 前から頭固い奴だと思ってたけど、心の中ではあんなに魔法使いを見下してたわけね。マジで許さない! 二度とパーティー組んでやらないから!」


 怒り心頭のマルチダ先輩。自分の誇る仕事である魔法使いを馬鹿にされたんだから、怒る気持ちは分かる。私も――魔法使いを冒涜した発言は、許せない。


「アレン、クリフ様と訓練する許可を下さい」


 お望み通り、ボコボコに叩きのめしてやる。


「いいんですか?」


「はい、クリフ様となら何度戦っても勝てますから」


 クリフ様は自分が負けた原因を油断と分析しているけど、実際は、クリフ様は私に殺意を持って剣を向けていたし、ある程度は本気で叩きのめそうとしていたと思う。それに、例え油断して力を出せていなかったとしても、正直、全く敵じゃなかったんですよね。あれで本気を出されたとしても、全く問題なく倒せると思う。


「アレンと戦った時の方が、大変でした」


 私が学生時代、最初の一度を除いて唯一勝てなかった相手。

 何度も何度も立ち向かったけど、アレンは涼しい顔で私を退けた。あの時の戦いに比べたら、クリフ様の相手なんてお遊びのようなものだ。




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