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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第449話 似てきた?

「はぁ~~~~~ぁ…………」


「……随分眠そうですわね、イシュド」


「そうか?」


イシュドは無事、夜中の内に宿へと……ベッドに戻った。

睡眠時間に関しては、普段より少ないとはいえ、体力を回復させるには十分な時間があった。


(寝たっちゃ寝たけど、普段の睡眠時間に慣れてっと、ちと眠いな)


休日ではないので、残念ながら二度寝という選択肢はなく、無理矢理体を起こして朝食を食べている。


(まさかとは思っていましたが……夜中、一人で紅鱗の地に行ったようですね)


(これ…………もしかして、あれか。夜中に一人で紅鱗の地を探索した感じかな?)


さすがレグラ家の魔術師と騎士と言うべきか、ジャレスとリベヌはイシュドが夜中の内に宿を、街を抜けて紅鱗の地を探索していたことを見抜いた。


(イシュド様……私たちを護衛として呼ばれた理由を忘れたのでしょうか? イシュド様一人ならという考えは解らなくもありませんが…………いえ、私が心配し過ぎなだけかもしれませんね)


ジャレスは「まっ、イシュド様らしいって感じだよね~~」と能天気にスルーするが、リベヌは普通に心配していた。


紅鱗の地をソロで探索していれば、イシュドを狙う輩から襲撃されてもおかしくない。


(そもそも紅鱗の地で、しかも夜となれば狙いたくとも狙えないでしょう。イシュド様は、暗闇での戦いが不得手ではありませんし)


自分が心配し過ぎなのだろうと結論付け、イシュドが夜中に宿から抜け出していたことを告げなかった。


「次は、僕もBランクモンスターと戦いたいな」


「……ガルフ。Bランクモンスターとの戦いって、クソ面倒なんだぞ」


紅鱗の地での調査を始めてから、まだ一度もBランクモンスターと戦っていないガルフ。

そんなガルフに対し、眉をへの字に曲げながらBランクモンスターと戦うめんどくささを伝えるフィリップ。


紅鱗の地に生息するBランクモンスターと戦うのは、実際のところ面倒どころの話ではない。

現役の冒険者たちであっても、それ相応の覚悟を持って臨まなければならない。


「かもしれないけど。そういう面倒を乗り越えていかなきゃ、今より強くはなれないでしょ」


「………………ガルフ、お前本当にそこそこイシュドに似てきたんじゃねぇの?」


「え、そ、そうかな」


イシュドに似てきたんじゃないか。

そう言われて、照れながら笑みを浮かべるガルフ。


(いや、なんで笑うんだよ)


(なんでそこで笑いますの?)


フィリップとしては半分呆れがあり、ミシェラにとってイシュドに似てきたという言葉は、完全に悪口である。


(ふふ、そういう反応になるでしょう)


(ガルフらしい反応だね)


しかし、反対にイブキとアドレアスはガルフがそういった表情を浮かべる理由を理解していた。


「はっはっは!!!! 解ってんじゃねぇか、ガルフ。上を目指すってのは、楽しい事ばかりじゃねぇからな」


「ふ~~~~ん……イシュドにも、そういう経験があるんだな」


「ん? ……おぅ、そうだな……………………あったと思うぜ、多分」


「いや、今の絶対に思い付かなかった間だろ」


イシュドの反応に、フィリップは思わず速攻でツッコんでしまった。


そしてツッコみの内容に関しては、ガルフも含めて同意だった。


「ほら、十五年……もう十六年か。そんだけ生きてりゃあ、昔の記憶なんてすっ飛ぶだろ」


「それぐらいの年齢の時点で、面倒と思う壁が全くなくなったって方がおかしいけどな」


実際のところ、イシュドにも面倒と思うことはあった。

それは……この世界の文字を覚えること。


覚えておいた方が良い。

前世の記憶を有しているからこそ、そこに関しては頑張った。

大変意欲はあったが、それでもイシュドにとって……楽しくない努力であった。


「しゃあねぇだろ。戦いのことに関しちゃぁ、どれも楽しくてあんまり面倒って感じる瞬間はなかったんだよ」


「…………それは解らなくもないですね~」


バーサーカーではないが、重凶戦士であるジャレスだけはその感覚が解らなくもなかった。


「戦い大好き人間にとっちゃそうかもしれけどよぉ~~~……まぁいいや。イシュドに似てきたってことは、ガルフもそっち側だろうからよ」


フィリップは諦めの表情を浮かべながら、残っている朝食を胃に流し込んでいく。


(……本当に、僕もそっち側にいけるのかな)


イシュドに似てきている。

フィリップからそう言われたことに関して、ガルフは割と本気で嬉しかった。


ただ、それでもまだまだイシュドや彼を良く知る騎士、ジャレスに少しでも追い付けているとは思えない。


(遠い存在なのは解ってる。それでも……出来る限り早く、追いつきたい)


厳しい道のりであることは、重々承知している。

それでも、ガルフにとっては既に進むと決めた道であり、今更引き返すなんてあり得ない。


(とにかく、今日の探索で遭遇出来たら、絶対に戦うっ!!!!!)


(………………どうやら、助言は必要ないようですね)


ガルフの才を、実力や想いを多少なりとも知っているリベヌは、先程までのやり取りの中で……少し、ガルフのことを心配に思っていた。


今はまだ遥か後方にいたとしても、イシュドの背を負おうとする姿勢を素晴らしい。

是非ともそのまま前に進み続けてほしい。

ただ、目指そうとする先が遠過ぎれば、途中で取れてしまうかもしれない。


まだ大丈夫だと自分を鼓舞することが出来たとしても、目指すべき先が遠過ぎれば本当に自分が成長出来ているのか解らなくなってしまう。


だが、ガルフは最初に決めた目標はそのままで、その道中で目指すべき中間地点を自分で設置出来ていた。


(彼に途中で潰れられては困りますからね)


「っ!!!???」


「? どうしましたの、ガルフ」


「な、なんでか解らないけど、背筋が急に冷たくなって」


レグラ家の女性が彼を求めているからこそ、リベヌとしてはここでガルフが潰れてしまうのだけは、絶対に避けたかった。


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