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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第447話 目覚めが悪いから

「はっ!!! ハッハッハッ!!!!! どうした、どうしたよ!!! もっと、獣らしく、じゃれ合おうぜッ!!!!!!!」


「っっっっっっ!!!!!!」


グリードキャットはイシュドの姿を見て、ふざけるなと叫び散らかしたい。


目の前の人間の動きを見て、どこか自分のことを馬鹿にしている様に感じる。

しかし……人間の動きは自分や自分と同種の動きをほぼ同じであり、ある種の恐ろしさすら感じる。


「ハッハーーーーーーッ!!!!!」


獣、獣、獣……まさに四足歩行の獣の如く軽やかに地を、木々を掛けて接近し、爪撃を振るっては直ぐに離れ、グリードキャットの爪撃には軽やかに身を捻って躱す。


「~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!」


「おいおい、何をそんなに、怒ってるんだ、よっ!!!!」


馬鹿にしている……そこに関しては、解らない。

ただ、他に解ることはあった。

目の前の人間は、間違いなく楽しんでいると。


グリードキャットからすれば、やはりふざけるなと叫びたい。


「ニャ゛ァアアアアアアアアッ!!!!!!!!」


本気の唸り声を上げ、先程まで探していた標的の事など忘れ、必ず目の前の人間を殺す為に全てを使う。


(そうそう、もっと俺に集中、しろ!!!)


強敵が、自分を絶対に殺すと戦意を、殺意を全開にして襲い掛かって来る。

本来であれば恐怖で体が震えるところだが、異常な狂戦士であるイシュドにとっては非常にウェルカムな変化。


そして四足歩行のまま戦い続けること約五分……ついに、イシュドは爪撃を放つグリードキャットの手を掴み、そのまま振り回した。


「ニャ゛っ!!!!!?????」


通常の猫と比べれば、十分モンスターと呼べるサイズまで成長しているグリードキャットではあるが、豹や虎などのモンスターと比べればやや小さい。


地面に叩きつけられたグリードキャットはその衝撃で背中の骨をやられ、吐血。


「ッシャ!!!!!」


「っ!!?? っ、ニャ……ァ」


全身に衝撃が渡ったことで止まった隙を突き、爪撃で喉を引き裂き、決着。


大きくとも、見た目はほぼ猫だが……そこに躊躇するイシュドではなく、終わらせるときはあっさりと終わらせた。


「っし。いやぁ~~~、久しぶりにこの戦い方したな~。あんまやってなかったからか、ちと体の節々が痛ぇかも」


明日は久しぶりに筋肉痛になるかもしれない。

なんて事を考えながら、イシュドはグリードキャットの死体を解体。

幸いにも傷付いている箇所は背骨だけで、毛皮やその他の素材も綺麗に剥ぎ取ることに成功。


「終了っと。それじゃ次の…………はぁ~~~。なんでまた思い出しちまうか」


先程まで自分と戦っていたグリードキャットは、何かを追い詰めていた可能性が高い。

既に時間を考えれば、その標的が冒険者という可能性は低いものの……絶対にあり得ないとは断言出来ない。


そのため、イシュドはめんどくさそうな顔をしながらも、気配感知のスキルを発動しながら周辺を探索し始めた。


(さすがに自分の実力に自信がある奴でも、紅鱗の地でソロ探索はしねぇだろうから、多分複数人の気配が固まってる筈だよな~~)


無意識のうちに自画自賛しながらも、イシュドはそれらしい気配を感知し、その場にダッシュ。


「っと。へいへい、人間だ人間。同じ人間だから武器をしまってくれ」


「す、すまない。って………………」


「? どうしたよ。俺の顔に何か付いてるか?」


「いや、その、すまない。随分と若く見えて」


一か所に集まっていた冒険者たちの数は三人。

全員二十台前後といったところ。

紅鱗の地を探索するのに相応しい実力はない……という訳ではないが、万全の状態でなければBランクモンスターを相手にするには厳しいといったところ。


「はは!!! 別に構わねぇよ。実際に若いだろうからな。って、そういうのは今良いんだよ。ほれ」


「っ、良いのかい」


リーダー青年は受け取ったポーションを視て、直ぐに平均以上の効果を持つ物だと把握。

相場では、自分たちの状態も含めて、ただで受け取れるような物ではない。


「良いんだよ良いんだよ。じゃなきゃわざわざグリードキャットをぶっ殺した後に探さねぇっつの」


「っ!!!!! あ、あのグリードキャットを倒した、のかい? この、真夜中の中で」


「おぅ。とりあえず遭遇したモンスターとは片っ端から戦っててな。さっきグリードキャットとも戦ってきた。ほれ、そっれっぽい傷だろ」


イシュドは軽傷だから放っておいても良いだろうと思い、頬と手の甲に薄っすらと刻まれた切傷を放置していた。


「あ、あぁ……そ、そうだな」


「てかあれだな。こんなんじゃなくて、素材を見せた方が早ぇか」


そう言うと、イシュドはアイテムバッグの中からグリードキャットの毛皮を取り出して見せた。


「っっっ……さ、触っても良いかな」


「良いぞ」


「…………………………確かに、グリードキャットの毛皮だ」


リーダーの言葉に驚きを隠せない仲間の二人。

しかし、なにはともあれ自分たちを狙い続けていたグリードキャットを目の前の青年が討伐した。


消耗している自分たちにポーションまで渡してくれた。

まずは礼を言わなければと立ち上がり、感謝の言葉を伝え、深々と頭を下げた。


「いいってことよ。俺も目覚めが悪くなるかもしれねぇって理由で助けただけだしよ」


そう言いながら、まだ……まだもう少し探索しても大丈夫だろうと思っているため、彼らから離れようとした時、三人の内女性の魔術師がよろけ、思わず地面に膝を付きそうになった。


「…………はぁ~~~~~~~」


頭をガシガシとかきながら、イシュドはこの場が紅鱗の地だと……場所的にも、あっという間にアルバンカに着ける距離ではないことなどを考えながら、よろけた女性を片腕で背負った。


「へっ?」


「ちょ、おあっ!!??」


そして豹人族の青年をもう片腕で背負い……最後はリーダーの青年の股に頭を通し、無理矢理肩車をした。


「え、えっと」


「言ったろ。死なれたら目覚めが悪いから助けたって。このまま街まで運んでやるから、舌噛まねぇように口閉じてな。んじゃ、行くぞっ!!!!!!!!!」


有無を言わせず、イシュドは本当に人間三人を背負った状態で爆走し、一旦アルバンカまで戻るのだった。

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