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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第446話 獣対獣

クラッシュテール対狼牙。


強敵の技を打ち破ったのは……狼牙を放った、イシュドであった。

全くクラッシュテールの衝撃を受けていないわけではないが、それでもブラックレネークの必殺の一撃打ち破り、尾を切断した。


切傷ではなく、切断。

となれば、まはや決着と言っても過言ではない。

しかし……イシュドの表情から緊張感や闘志は消えておらず、バーサーカーソウルもまだ発動し続けている。


「ッッッッッ!!!!!!」


「だろう、なッ!!!!!!!」


筋肉を締めることで、傷口を塞ぐことが出来る。

であれば……尻尾の切断面も圧縮し、なんとか止血することも不可能ではない。


酸性の毒液を撒き散らし、切断されてもまだ残っていると言えなくない体を振り回し、最後の最後まで……本当の意味で、その命尽きるまで暴れ回ろうとするブラックレネーク。


「おっ、らッ!!!!!!!」


「っ!!!!!!??????」


しかし、終わりというのは必ずやってくる。

酸性の毒液を躱し、懐に潜り込んだイシュドの戦斧が、ブラックレネークの頭部に叩きつけられた。


「ッ、ジャ……ァ………………」


「ふぅ~~~。最後の最後まで良い暴れっぷりだったぜ、ブラックレネーク」


最後の戦斧は真正面から叩き込まれたものの、鱗は切断され……頭部をぶった切るまでは至らなかったものの、確実に脳を切り裂いた。


(赤系のケルベロスにブレーダーグリズリーにブラックレネーク……本当に、ここは最高の場所だな)


興奮が冷めない中、イシュドはブラックレネークの解体を開始。


(毒液を使ってはいたけど……こいつの肉は食えそうだな)


普通ならブラックレネークの肉や骨、鱗に内臓などがどれほど売れるのかと考えてニヤニヤするものだが、イシュドはブラックレネークの肉の味を思い浮かべ、ニヤニヤするのだった。





「っし……んじゃ、もうちょい探索するか」


激しく、加減した状態であったとはいえ、満足のいく戦いが出来た事は間違いない。

それでも実際の戦闘時間はそこまで長くはなく、懐中時計で時間を確認するも……まだまだこっそり探索し続けても、睡眠の時間は確保できる。


(そういえば、次はバレるかもしれねぇし、もっと奥に行ってみるか)


どんどんアルバンカから離れるイシュド。

とはいえ、イシュドの脚力や体力を考えれば確かに短時間で戻れなくはない距離であり、仮に体力が尽きるような状況に陥ったとしても、魔力が残っていれば空飛ぶ魔法の絨毯で戻ることが出来る。


「……………………なんか、いるな」


約一時間程探索を続け、その間にBランクモンスターと遭遇することは敵わなかったが活きが良く……狡猾なCランクモンスターと何度も戦えた。


さて、次はもっと強いモンスターと出会えるだろうかと思っていると、何かが紅鱗の地を素早く駆ける音が聞こえた。


(随分と早くて警戒……バウンディーゴブリンとかスパイルモンキーの類じゃねぇな)


これまでの膨大な戦闘経験から、周囲を駆け回っているモンスターの姿を推察していく。


(ってなると豹か、もしくは猫か……この場所に生息してるってことは、豹系のモンスターか)


移動する際の僅かな音などから、どんどん詳細を絞っていくイシュド。

ただ……その予想は、残念ながら外れることとなった。


「おろ……まさかまさかのって感じだな」


夜の紅鱗の地を素早く駆けるモンスターの姿をようやく捉えた。

そのモンスターの姿は……体は、それなりに大きい。

しかし、その個体は豹や虎ではなく……猫であった。


「ッ!! ………………ッッッ!!!!」


「なっはっは!!!!! 良いね良いね!! 戦ろうぜッ!!!!」


イシュドが発見したモンスターは、グリードキャット。

猫のモンスターであり、ランクは……ブレーダーグリズリーやブラックレネークと同じ、B。


猫モンスターの中では本当に珍しく、ランクが高く……そのランクに見劣りしない強さを有している。


(確か、グリードキャットだよな。こいつが同じような場所を、うろちょろ、駆け回ってたって、事は……何かを探してたのか、追い詰めてた、だっけ)


既にグリードキャットとの戦闘を行い、兄であるダンテにその話をすると、グリードキャットについて詳しい内容を教えられた。


その内容に関して覚えていたイシュドは……本日三体目となるBランクモンスターとの戦闘に喜びを感じると同時に、めんどくささも感じた。


(うっわぁ~~~~、そういえばそんな性質持ってたなぁ…………あぁ~~~~、くそが。忘れたままの方が良かったぜ)


忘れたままであれば、グリードキャットに追い詰められているかもしれない者たちに気付かずとも、問題は無い。


しかし、兄から教えられた情報が頭の中に浮かんでしまい、素手で対応しているイシュドは苦虫を嚙み潰したよう顔を浮かべる。


「ゥニャオッ!!!!!」


そんな人間の表情を見て、自分に怯えている、苦手意識を感じていると思ったのか、グリードキャットは自信満々な表情を浮かべながら爪撃を叩き込もうとする。


「くらうかっ!? んにゃろ、良い頭してんじゃ、ねぇのッ!!!!」


手首の柔らかさ生かし、途中から爪撃ではなく爪撃波に変更。

小細工ではあるものの、グリードキャットとの高速戦闘となると、その小細工も手痛いと感じることになる。


(素手で戦うって、決めちゃったし……オッケーオッケー。んじゃ、こっちも獣になって、やろうじゃねぇの)


イシュドは二足歩行から、本当に獣の様に四足歩行に姿勢を変更。


「………」


その姿を見てグリードキャットは意味が解らず、思わず固まってしまった。


「いくぜぇ~~~~……ッ!!!!!!!」


数秒後、グリードキャットはイシュドの戦い方がこけおどしではないと、身をもって知ることとなった。

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