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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第445話 乱入するだけ無駄

バーサーカーソウル。


それは、狂戦士が有する強化スキルであり、身体能力を大幅に向上させる代わりに……使用時間が長ければ長いほど、狂気が暴走して敵味方関係無くぶっ殺す殺戮戦士と化してしまうデメリットもある。


戦闘職に関してそれなりに知識を有している人物からすれば、そこまで珍しいスキルではない。


ただ、モンスターが持っていると、話しは別。

職業という縛りがないと考えれば、寧ろ会得しやすいと思われるかもしれないが、実際のところ……そんなことはない。


可能性がゼロとは言わないが、モンスターと戦闘する機会が多い冒険者たちであっても、バーサーカーソウルを使うモンスターは……出会ったとしても、人型がしか主に出会うことはない。


「やっぱり、お前も持ってたかッッッッ!!!!!!!!!!!」


「ジャアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!!!!!!」


ただ……本当に極稀に、人型ではなくともバーサーカーソウルのスキルを持つ個体が存在する。


イシュドはそこまでモンスターに関して詳しい知識を有していなかった。

ブラックレネークに関しては、毒液が使い方次第では薬にもなるということぐらいしか知らない。

それでも、直感で解ることがあった。


この大蛇は俺と同じく、バーサーカーソウルを持っている、と。


「おらおらおらおらおらおらおらおらッ!!!!!!!!!」


「ッ!!! っ!? ジ、ィィイイアアアアアアッ!!!!」


「っっっ!!!! ははッ!!!! そう、だ!! もって、上げてけッ!!!!!!」


人に言っても、おそらく信じられないであろうことは解っている。

それでも、イシュドは問われれば素直に答える。

俺は、あのブラックレネークがバーサーカーソウルを持っていると、解っていたと。


直感も直感ではあるが、実際にその通りとなり、戦闘は更に激化。

周囲の更地化が進み、二人の激しい戦闘音によって周囲で睡眠を取っていたモンスターたちが目を覚ます。


モンスターにも、夜中に起こされれば「何やってんだこらッ!!!!! ぐっすり寝てたのに、何してくれてんじゃおら!!!!!」という感情が湧き上がる。


全個体がそうだという訳ではないが、紅鱗の地に生息しているモンスターは荒っぽい性格の個体が多く……寝起きだろうと容赦なく襲い掛かることも珍しくない。


「「「「「っっっっっ!!!!!」」」」」


ただ……一人と一体が放つ殺気、戦意、狂気などがブレンドされた圧を受け、本能が震えた。

そして警告する。


乱入するだけ、無駄であると。


そのため、眼を覚ました全てのモンスターがその場から移動。

イシュドやブラックレネークに直接睡眠を妨害された、寝ている間に襲撃を受けたというわけでもないため、逃げるという行為に抵抗がなかった。


「ぅおりゃッッッ!!!!!!」


「っ!!!!!!」


そんな中、遂にイシュドの戦斧がブラックレネークに大ダメージと言えなくもない攻撃をヒットさせた。


狂戦士とは思えない研ぎ澄ました斬撃で鱗を剥いでいたイシュド。

当然、ブラックレネークはその箇所に人間の攻撃を受けないようにと、バーサーカーソウルを発動した状態でもなんとか頭の片隅に置きながら暴れていたが、遂にイシュドが捉えた。


傷口から狂戦士による荒々しい斬撃を叩き込まれたことで、切断とはいかなかったものの……その切傷箇所から血が噴出。


「ジャァアアアアッ!!!!!」


「はっ!!! 全然、驚かねぇ、よッ!!!!!!」


間違いなく決して小さくない切傷面から血が噴出された。

だが、次の瞬間には殆ど血が零れなくなった。


(強ぇ蛇は、そういうのが得意、だよなッ!!!!)


筋肉を圧縮させ、傷口を塞ぐ。

なんとも力技過ぎる止血方法だが、実際に先程イシュドが与えた切傷箇所からは、殆ど血が零れなくなっていた。


(んじゃあ、どこまで耐えられるかなっ!!!!!!!)


驚くべき激闘ではあるが、イシュドはそれを人間でも出来ることを知っており、蛇系のモンスターが行えることも知っていた。


なので驚きによって隙が生まれ、そこで毒液や尾撃を叩き込まれることはなく、これまでと変わらず攻めて攻めて攻めまくる。


鱗を剥いだ個所は、一か所だけではない。

筋肉の圧縮によって防がれた箇所以外にも一つ、二つ……三つ四つと、更に血飛沫が噴き出す箇所が増えていく。


「っっっっ……」


「はは、どうしたよ……さすがにその状態じゃあ、さっきまでみてぇに動けねぇか」


血が大量に零れれば、死んでしまう。

詳しい知識などなくとも、ブラックレネークはそれを本能で理解していた。


だからこそ、イシュドによって刻まれた切傷箇所を筋肉の圧縮によって止血していた。

ただ、その箇所が増えれば増えるほど……ブラックレネークは蛇としての柔軟で読み辛い動きが出来なくなってしまう。


「…………ッッッッ!!!!!!!!!!」


「へっ! そうそう、そうだよな!!!」


絶体絶命といえる戦況に追い込まれたとしても、ブラックレネークに逃走という選択肢はなかった。


そして、一部の筋肉だけを圧縮するのであれば、いっそのこと全身の筋肉を圧縮して動こうと判断。

その判断は………本当にとっさの判断ではあったが、イシュドとの戦いから逃げないのであれば、最善の判断と言えた。


(この状態での、本気の一撃をブチかましてやらあああああ!!!!!!)


全身の筋力を圧縮して動ける時間は限られている。

それでも、間違いなくブラックレネークの尾撃の威力は向上する。


その状態で宙に飛び、何度も回転しながら……尾撃、クラッシュテールを発動。


「最、高だッッッッ!!!!!!!!!!!」


クラッシュテールを放てば、今のブラックレネークが使用すれば自傷ダメージが半端ではない。

目の前の人間に勝ったとしても、その日の夜を無事に過ごせる保証はない。

だが……威力は申し分なし。


イシュドは歓喜の声を上げながら、斧技……狼牙で迎え撃った。

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