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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第440話 徐々に溜まっていた

「すまない、リザードのステーキをもう二枚」


「すいませ~~~ん。エールをもう一杯くださ~い」


「オークの串焼きをもう十本お願いする」


街に戻ってきたイシュドたちは、今日も今日とて食べる。

食べて食べて飲んで食べて食べて食べまくる。


あまり食べ過ぎれば、後で腹がぐるしくなる?

そんな常識はディムナたちも理解している。

理解しているが……更に食べても、そうなるとは思えなかった。


「よく食うな、お前ら」


「……それ、あなたが言いますの?」


イシュドは本日の探索中、全く戦っていなかった訳ではない。

途中からダスティンを筆頭に、疲れているからといって休んでいられるかと、遭遇したモンスターと戦い始めたが……それまでの間、主に戦闘を担当していたのはイシュド。


そのため、イシュドがいつも通り大量の夕食を食べるのはおかしいことではないが……明らかに疲労度がダスティンたちよりも軽いにもかかわらず、食べている量は負けていなかった。


「んだよ。俺がこれだけ食うなんていつも通りだろ、デカパイ」


「…………はぁ~~~~~~。そうかもしれませんわね」


溜息を吐きながらも、食事を再開するミシェラ。

本日のMVPと言っても過言ではない彼女も野郎たちに負けず腹が減っているため、次々とテーブルの上に並ぶ料理を平らげていく。


「よく食うガキたちだな」


「つか、なんでガキがこの街に居んだ? 見た感じ、俺らと同じ冒険者じゃねぇだろ」


「王都の学園に在籍してる学生たちらしいぞ」


「けっ、坊ちゃん嬢ちゃんたちかよ。そいつらがこの地に何の用だってんだ」


酒場で夕食を食べる冒険者たちからすれば、同じ飯の場で自分たち以上に夕食を

食べているものがいれば、どうしても一度はそちらの方を気になって視線を向けてしまう。


とはいえ、今のガルフたちからすればそんな事に気にしてる余裕はなく、また明日からの調査、戦闘の為に体力を回復しなければ!!!! という一心で食べて食べて食べまくっていた。


「なんの用かは知らないけど、あいつらに関わらない方が良いらしいぞ」


「あん? んでだよ。強かろうが、学生は学生だろ」


「そうなのかもな。けど、ギルドの方から通達が来てるんだよ。今アルバンカに来てる学生には手を出すなってな」


「……チッ!!! ギルドが屈したって訳かよ」


基本的に平民出身が多い冒険者たちからすれば、特に理由がなくとも……貴族の坊ちゃん嬢ちゃんというのは、ウザい存在。


だが、彼らは冒険者ギルドに所属している冒険者。

上からの命令は絶対……という訳ではないが、破れば当然、罰は下る。


「かもしれないね。ただ、先日彼らに絡もうとした同業者が屈したらしいよ」


「雑魚い感じの奴らじゃなくて?」


「紅鱗の地でばりばり活動してる同業者が、だよ」


「………………チッ! 普通のガキじゃねぇってことか」


イシュドたちに対して不満をたらたらと零す男性冒険者は、彼らに屈した同業者と同じく、紅鱗の地でばりばり活動している。


(確かに、あのガキ共……Dランクの中でも最上位か、Cランクの下ぐらいの力は持ってるか? それに、あの三人のガキ共……………………あれ、本当に学生なのかよ)


男は、情報を伝えられれば、一旦冷静になって考えられる頭を持っていた。


そんな野郎冒険者の観察を正しく、ガルフたちの実力は既に社会に出ている冒険者たちの中でも、ようやくケツの殻が取れた冒険者たちよりは強い。


加えて、男がグループの中でも別格だと感じた三人の内……一人は、本当に学生である。


「だから、変に咬みつくのは止めといた方が良いよ」


「けっ! ギルドがそう言ってんなら、そうしとくか」


権力や上の者たちの言葉、存在に屈するのはダサい?

冒険者という職業柄、そういった考えは珍しくない。


ただ……本当に強く、もしくは長く生き残る冒険者ほど、絶対に踏み越えてはならないラインは踏み越えず、大人しく引き下がる。





(んだよ、掛かってこねぇのかよ)


イシュドの耳には、自分たちに対して不満を零す冒険者たちの会話が耳に入っていた。


学園の方からは可能であれば、なるべく問題を起こさないようにとは言われている。

ただ……冒険者と喧嘩するなとは言われていない。


屁理屈?

確かに屁理屈と思われてもおかしくないが、学生たちが依頼を受けて王都から離れれば……冒険者との間に問題を起こしてしまうのは、フラベルト学園だけではなく他の学園にとっても珍しくない出来事。


学園の上の者たちは、冒険者たちを……冒険者ギルドを嘗めている訳ではない。

ただ、問題が起こった際に現地調査を行った際、先に喧嘩を吹っ掛けた、挑発したのが学生ではない割合がそれなりにある。


そのため、フラベルト学園はイシュドだけではなく、他の学生たちに対しても、特に喧嘩をするなとは言っていない。

なので、イシュドとしては今回は喧嘩をしても構わないかと思っていた。


(この地で活動してる冒険者なら、結構楽しめそうだと思ったんだけどなぁ)


紅鱗の地で調査を行うようになってから数日間、メインで戦っているのはガルフたち。

イシュドも戦っていなくはないが、主に戦っているのはガルフたちであるため、イシュドの戦闘欲は中々満たされない。


久しぶりに満たしてくれそうな相手、ブレーダーグリズリーと遭遇できたものの……学友たちのやる気を削ぐのは、イシュドとしても思うところがあり、一先ず譲った。

結果、ミシェラたちは大勝利を収め、ブレーダーグリズリーは無事に討伐された。


そんなこんなため、イシュドは紅鱗の地に来てから……ストレスは溜まっていないが、戦闘欲がつもりにつもり始めていた。


(あっ、そういえばあの原住民の名前を聞いてなかったな………………こっちの言葉で交流出来んなら、肉体言語でも交流できるよな)


食べて食べて食べ続けていたため……ジャレスやリベヌでさえも、イシュドが浮かべた不敵な笑みに気付かなかった。

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