表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

433/450

第433話 同じものが付いてる

見える、解る、動ける。

かつてない万能感を得ていたガルフは、キャップレッドゴブリンとの戦いを楽しんでいた。


しかし、ガルフとは反対にキャップレッドゴブリンの方は、全くもって楽しくない。

ただのレッドゴブリンではないからこそ、あまり表情にこそ出ていなくても、戦っている相手が自分との戦いを楽しんでいることが解る。


まだ……イシュドの様な「激闘は好物だぜ!!!」といったタイプの人間が楽しんでいるのであれば、また話は違ったのかもしれない。

だが、今のガルフからは……何かを試す様な、実験感覚からくる楽しさが零れていた。


キャップレッドゴブリンとの戦いをどう感じようと、それはガルフの勝手ではあるが、キャップレッドゴブリンとしては楽しいわけがない。


「…………」


絶対に潰し、殺し、その顔から……体から楽しみのオーラを無くしてやると闘志を燃やしながらも、表情はクールなまま模索。


幸いなことに、ここぞというタイミングでも人間は攻めてこない。

屈辱的ではあるが、キャップレッドゴブリンとしては考える時間があるのは有難い。


「………………」


クールな表情で懸命に大斧を振るい、斬撃を避けながら考え、考え……ついに、起死回生の一手となる案を思い付いた。


「ッ!!!!!!」


(っ、ギアが上がった!)


表情にも決意が零れ、残っている体力の全てを振り絞るかのような猛撃が始まる。

上下左右斜めから止まらない連撃が続き、さすがのガルフも見え……避け、逸らすことまでは出来るが、全力で闘気を使用しなければ、カウンターを叩き込むことは出来ない。


(下がったっ!!!???)


猛撃から一転、バックステップで後ろに下がったかと思えば、キャップレッドゴブリンは中に跳び、大斧をぶん投げた。


いくらガルフが万能感を得ているとはいえ、まだ猛撃が続くと思ってたため……反応が遅れてしまった。


受け止めるしかない。


「ぐっ!!!!!!!」


キャップレッドゴブリンは斧技のスキルだけではなく、投擲のスキルを有しているため、並みの威力ではない一撃が叩き込まれた。


だが、ガルフも瞬時に放たれた投擲の威力をヤバいと判断して全身には闘気を、受け止めるロングソードには護身剛気を纏った。


対応は間に合ったものの、重い重い衝撃がのしかかり、全身に衝撃が駆け巡る。


しかし、この攻撃により、キャップレッドゴブリンは大斧というメイン武器を失った。

身体能力が落ちたわけではないが、それでも戦闘力が下がったことに変わりはない。


ただ……嫌な予感がした。







「っ、イシュド様」


「うわっ、マジか」


離れた場所からなるべくガルフ対キャップレッドゴブリンとの戦いを注視していたリベヌとイシュド。


ガルフは、素早い判断でキャップレッドゴブリンがぶん投げた大斧による投擲を防ぐことに成功。

ただ……キャップレッドゴブリンの狙いは、投擲スキルによって強化した大斧の一撃ではない。


真の狙い、これまでのモンスター生から……人間の男に自分たちゴブリンと同じく付いていると知った。

そして、それが自分たちと同じく急所になりうることも、知っている。


キャップレッドゴブリンは大斧をぶん投げた後、両側に帯剣している短剣の一つを……ガルフのガルフに向かってぶん投げた。


大斧という武器が目前に迫ったことで、ガルフはほんの一瞬ではあったが、キャップレッドゴブリンの姿を正確には把握出来なかった。

当然、それもキャップレッドゴブリンの狙いであり、その隙に乗じて短剣に魔力を纏い、大斧をぶん投げた時と同じく投擲スキルを発動。


男の………オスの急所に向けて、渾身の投擲を放った。


それは見事に直撃。

となれば、後は残っているもう片方の短剣を抜き、男の首を搔っ捌くのみ。


(チッ!!!!! ……あん?)


あれはさすがにヤバいと判断し、イシュドは即座にその場から駆け出し、手刀で斬撃波を放つ体勢を取ったが……そこで、あることに気付いた。


(血が、流れて……ねぇな)


そう……魔力を纏った短剣がぶち当たった、ガルフのガルフから、血が流れていないのである。

闘気を纏っているとはいえ、股間という筋肉ではない……体内にしまわれていない急所を狙われてしまえば、キャップレッドゴブリンの投擲スキルの練度も考慮し……ぶっ刺すことは可能である。


だが、やはりガルフのガルフからは血が流れていない。


「ッ、ぁああ、あああああアアアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!」


「っ!!!!!????? ィ、ギ」


確かに、ガルフは前のめりに倒れていた。

キャップレッドゴブリンが、自分の策が見事にハマったと判断しても、決しておかしくなかった。


だが、ガルフは忘れていなかった。

万能感に寄っていた部分はあれど、キャップレッドゴブリンが二振りの短剣を腰に帯剣していることは、忘れていなかった。


加えて、ぶん投げられた大斧をなんとかガードした直後、急に寒感が体を襲った。


キャップレッドゴブリンなのか、それとも違うモンスターが狙っているのか解らなかった。

ただ……直ぐには判断できないからこそ、ガルフは咄嗟にロングソードだけではなく、頭部と心臓がある前と後ろ……そして、股間に護身剛気を纏った。


「はぁ、はぁ…………はぁ、はぁ」


「…………」


咄嗟の……本当にナイスな判断により、ガルフは自身のムスコを……子孫繫栄に大事な器官をなんとか守ることに成功。


流石は護身剛気!!!!!! と言いたいところだが、刺されるという状態は防ぐことに成功したが、やはり多少の衝撃は伝わってしまう。


そのため、血は流れずともその衝撃と痛みにより前のめりに倒れかけ、結果的にキャップレッドゴブリンを欺く形となり、下から闘気を纏ったロングソードで斬り上げ、そのまま心臓を裂いた。


(あ、あ、危なかった~~~~~~~~~~)


薄氷の勝利という形にはなったが、結果として万能感に酔いながらも、ガルフは自身の勝利を手繰り寄せるこが出来た。


間違いなく、ガルフが一人で捥ぎ取った勝利である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ